「なぁ、雅紀...一昨日、何があったんだよ?」
月曜日、大学から帰ってきたしょーちゃんが、夕飯を作ってる俺を背中から抱きしめて聞いてきた。
「ちょ、危ないから!包丁持ってる時はやめてって、いつも言ってるじゃん!」
振り返った俺に、ごめんごめんって、ぱっと手を離す。
一昨日って言ったら、しょーちゃんの先生のバースデーパーティーに参加した日。
「なんも、ないよ?」
女の子に負けたくなくて、頑張っちゃったけど...
あの子だって、めちゃくちゃしょーちゃんのことが好きで、負けたくないって思ってただけなのかもって思ったら、申し訳ないことしたなって、思って...
ちょっと反省してるんだよね。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してそのまま飲もうとするしょーちゃんに、コップ!って、言ったら、しょーちゃんが、うちの奥さんは厳しいわーって、ボヤいて食器棚からグラスを取り出した。
「皆がまた雅紀に会いたいんだって」
使い終わったグラスをシンクに置きながら、しょーちゃんが言う。
「え?なんで?」
「なんか、皆、お前に惚れちゃったみたい」
パタン、と冷蔵庫の扉を閉めたしょーちゃんが、腕を組んで冷蔵庫にもたれて俺を見る。
...ただ立ってるだけ、なのに。
なんでこんなかっこいいんだろ、しょーちゃんは。
「しょーちゃん、そんな所からガン見されてると、なんか、恥ずかしい...」
「早く包丁、終わんねーかなって思って待ってんの」
「包丁???」
「うん、包丁」
「もうちょっとで、終わるけど...」
切った野菜を鍋に移して、包丁を洗って...
手を拭こうとしたら、ぎゅって抱きしめられた。
「しょーちゃん?!」
「雅紀がかわいくて、すげーいい奴だって自慢したかったけど、皆に会わせたの、後悔してる」
「え?」
俺、しょーちゃんの友達に会わないほうが良かった?予想外の言葉に驚いていたら、しょーちゃんは俺の肩にこてんって、頭をのせて
「ライバル、増えすぎて、ヤダ。雅紀は俺のモンだっての」
って、呟いた。