「なんだよ、大事だな」
部屋に入るなり、風間が笑う。
書類の束を机に載せて、風間を見る。
「急いでるから、なるべく質問は後でまとめて」
風間は頷いて、席について...
俺は1枚ずつ、書類の説明を始める。
風間の顔がだんだん険しくなっていく。
「『まさき』が行きそうな場所だけ教えてくれれば本当はいいんだけど」
そう、言った俺に、風間はゆっくりと顔を横に振って...
「誓約書、サインすれば教えてくれるんだな」
白衣の胸ポケットからペンを取り出した。
「よく読めよ。ここに書いてあることにひとつでも反したら…………病院を追い出されるだけじゃ済まない。億単位の罰金と医師免許剥奪、24時間体制で見張られ、プライバシーなど皆無になる。………確実にお前の人生が終わる」
それでも、真実を知りたいか?
「…………分かった」
風間はゆっくりと書類に目を通し、躊躇うことなく、サインした。
そして、俺と松本さんの話を最後まで、黙って聞いた。
雅紀の、マサキの行きそうな場所はどこかないか?
そう、松本さんが聞いた時、風間が頭を抱えた。
「あいつのことよく知ってるつもりだったけど…………自分でもびっくりするぐらい心当たりがないわ」
心の奥が、ぞわり、と波打った。
おーのさんと、櫻井さんと、相葉さん。
おーのさんと、相葉さん、は、たぶん、同じ...
風間が、幼なじみの相葉さんのことをよく知らないっていうのは、それと何か関係があるんだろうか...
マサキは、どこからの相葉さんの記憶を持っているんだろう...
どっちにしろ、風間からはこれ以上の話は聞けなさそうだ。
立ち上がって、研究所に戻ろうとしたところを呼び止められる。
「二宮」
「何?」
「『クローン』が雅紀を殺そうとしたんだろ?」
「…………そう、だね」
「でも、雅紀は生きてるんだろ?」
「生きてるよ」
「『クローン』は、それを知ったんだろ?」
その言葉に、息を飲む。
俺の横で、松本さんも息を飲んだ。
「雅紀、大丈夫?」
風間の言葉に弾かれるように、松本さんが病室を飛び出した。