[no side]
「あ~、美味かった!」
大盛りのカレーをあっという間にペロリと平らげ、大田は満足そうに自分の腹をさすった。
「美味しいですよねー!
なんたって、マスターのカフェはここら辺じゃ有名で絶品だもんねぇ?」
「ふふ…、知ってる」
「……?」
2人に同意を求める相川の得意げな自慢に、大田は可笑しそうに笑った。
「大田さん、ここのまかない食べたことあるんですか?
忙しそうだったし、ファンも多かったから…」
「カレーとスープだけどね」
「そうなんだぁ…。…あっ!!」
相川は身を乗り出して、
「じゃ今度来たら、サンドイッチがオススメですよ!!
トロトロチーズとハムと野菜のハーミングが絶妙で…」
「正和。ハーミングじゃなくて、ハーモニーな」
「…え?ハーモニー?ハーミング…。んん??」
「あっははは!!わかった、サンドイッチね」
大田は楽しくて仕方がなかった。
幽閉されていた地獄を抜け出して、カフェで皆で笑っている奇跡を。
今でも夢を見てるんじゃないかと錯覚するほどだった。
「俺、仕事の時間だからそろそろ行くね」
たわいない話が続く頃、相川が立ち上がった。
「俺も時間なんで失礼します…」
ほとんど会話に交わらなかった松田も席を立つ。
気づけば、1時10分前だ。
「あ~、もうこんな時間か」
「大田さん、じゃあ、また機会があったらカフェで。
ライブ楽しみに待ってますね」
「うん。…あ、2人とも何の仕事してんだ?」
大田が会計に向かおうとする2人を引き止める。
「ん?俺は近くの動物園で、毎日動物と奮闘してます。
たまーにテレビで取り上げられる有名な動物園なんだけど…、知ってるかな?」
「動物園かぁ…、俺、テレビはあんま観ないし知らねぇな…」
「じゃあ、お暇な時にぜひ来てくださいよ!」
「わかった。ライヴ終わったら行くよ」
「待ってます!」
「松田さんは?」
話を振られた松田が我に返った顔をする。
「あ…、俺はホストやってます」
「ホスト!?そんじゃ、店には遊びに行けねぇなぁ…」
「よかったら、ホスト希望者としてお待ちしてますよ」
「いや…、俺にホストは向いてないな…。
それに働くあては一応あるし」
大田がそう言って、苦笑いを浮かべた。
「松田はお店のNo.1ホストなんですよ。
いけすかない奴ですよね~」
「いや…、そんな」
「ほぉ~!No.1なんてカッコイイじゃん!
今度、こっそり仕事ぶり覗きに行くわ」
「はい、ぜひ」
「うん。引き止めて悪かったな」
「は~い、ありがとうございました~」
「また」
「仕事頑張って~」
「また明日」
退場した2人の空いた席を大田が座る。
新聞を読んでいる桜と向かい合わせになった。
To be continue…
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