助けられていると日々思う。
こうやって救われる思いになるのは、どうしたってこのメンバーだから、なんだよな。
「サンキューな」
この一言で全てを理解してくれるだろう。
「翔さんの為ならなんでもしますよ、俺は」
周りから見れば何かしらの打ち合わせの耳打ちに見えただろう。俺らにしか聞こえない声は、俺らにしかわからなくていい。
そう思うのは、今までもこの先も、きっとずっとなんだろうな。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。本日は私事でお集まりいただきありがとうございます。先程相葉からもありましたように、賛否ある事は承知で、それでもこの人だと言う強い想いがお互いにあり結婚に至りました。ご報告が遅れましたこと、お詫び申し上げます」
結局俺も謝ってんじゃん、と心の中で笑う。表情を作ることには慣れているから大丈夫だと思う。さっきは泣きそうでやばかったけど。
それにしても、発表に驚く報道陣を前に何と気持ちの良いことか。今から俺のスマホも雅紀のスマホもやばいくらいに鳴るだろう。事務所の電話もそうだし、智くん、ニノ、潤のだってそう。
それなのに気持ちはめちゃくちゃに晴れやかだ。多少の申し訳なさはあるけれど、三人の表情も俺たちと同じくらいに明るい。だから後悔は無い、しない。
質疑応答の時間は思っていたよりも短いものだった。異例中の異例だと言ってもいいアイドルの同性同士の結婚は、報告だけでも精一杯の誠意だと受け取って貰えたんだろう。
なんて、ここに来るまで何も知らされてなかった俺が言うのもおかしな話なんだろうけど。
全てが終わって、三人にも事務所の人間にもお礼を言って会場での現地解散にした。ニノと智くんはオフの日に二人でここまで来てくれたらしくて「またね」とニノの運転で帰っていった。松潤は事務所の人たちとこらから打ち合わせがあるからと会社へ戻るようだった。
「やっと静かになったな」
怒涛だった。会見が終わっても帰らずに俺たちに取材をと粘る報道陣の全てがいなくなるまで動くことが出来ずに、結局最後は俺たちとお世話になりっぱなしのプランナーだけが残った。潤が乗った車に俺たち全員が乗ったと思い込んでくれたことはある意味で助かった。
深く深くその人にも礼を言って、帰る姿を見送ってから二人で雅紀の車に乗り込んだ。
「怒ってる?」
「怒ってる」
「ごめん」
大型犬が小型犬のように小さくなる。そんな感じ。だから怒っていると答えた俺の顔は半分以上笑っている。
「はは!ウソウソ。驚きはしたけど怒ってねぇよ」
だって結果として今、とても晴れやかな気持ちだから。ただ、今晩のニュース番組を見る勇気は正直現時点では無いけれど。
「ほんと?怒ってない?」
「無いよ。俺が雅紀に怒ることなんて無いだろ?」
ほんとにそう。どうしてなのかな。考えても答えが出たことはないから、だから考えても仕方ないんだけど。
「いきなりだったことと黙ってたことはごめん。だけどオレね、やっぱりしょーちゃんとは堂々と一緒にいたくて、だから」
この会見の事も相談できなくてごめんと、また謝る。話を聞けば、俺に拒否されたとしても雅紀はどうしてもやりたかったんだって。
「別に拒否んねぇのに」
だって雅紀が本気で決めた事なら大丈夫。本気なら否定なんてしない、絶対。それにもし、万が一、堕ちるなら一緒に。
そんな事は雅紀を好きになった時から決めていた。
「だけどさ、もしさ、これで干されたら……困るよね?」
「別にいいよ。雅紀と一緒なら別に困らない。それならそれで馬鹿みたいに人前でイチャイチャしてやるよ」
「ふふ」
「俺は本気。マジでお前がいてくれたらなんだって出来るからさ」
だから、この先もずっと一緒に。
この手を離すこと無く、隣で、共に。
本気でそう思う。
「オレも」
俺の言葉に嬉しそうにそう言った雅紀の右肩に手を掛ける。
それから俺からキスをした。
雅紀の家でした初めてのキスと違うのは、今はもう真正面から堂々とできることなんだよな、と思いながら。