大学院に進学してからの約1年半、僕は、誰にも、一言もこの気持ちを話したことがなかった。

 

 

僕は1年半、自分の気持ちを誰にも伝えることができず、毎日が苦しく、そんな日々から抜け出せずにいた。僕の心はもう壊れかけていて、自分一人の力では修復できないところまできていたのに、それに気がつかにふりをして、蓋をしていた。

なぜなら、それを認めてしまうことで「こいつはダメなやつだ」「社会不適合者だ」と思われるのが怖かったからだった。

 

修士2年の夏頃、もうこのままではダメだと思った。

幸いなことに就職先は決まっていた。

修了(卒業)するために、僕に残された時間はあと半年も残っていなかった。

 

いくら考えても自分一人では解決できない。

そう結論づけるのに、僕の場合は1年半も時間がかかってしまった。

 

僕は、教授にどうしても研究室に行けない日があることを正直に話しSOSを出した。

そして、僕は教授の勧めで大学のカウンセラーに相談することになった。

卒業までの半年間、毎週火曜日の10時にカウンセリング室に通って、約1時間の面談をしてもらった。

 

その結果、僕は最後の力を振り絞り研究を進め、今までになんとか進めてきた実験結果をまとめて修士論文を書き上げることができた。

 

カウンセリングに行きながらも、その後も何度か心が折れそうになり、研究室に行きたくなくなる日もあった。けれども、「研究室に行きたくないんです」と話しをしに行ったすぐ後に、研究室に行けるようになることもあった。

 

 

今振り返ると、すべての始まりは、教授とのコミュニケーションがうまくとれなかったことだと思う。そして、僕が自分の思いを伝える方法を知らなかったから。

 

調査の進め方が分からないということを言葉にして、調査方法を聞くことができなかったこと。

研究の方向性が見えないということを言葉にして相談できなかったこと。

自分が苦しいということを誰にも話せなかったこと。

 

 

誰だって、心が壊れたままでは、できるはずのこともうまくできなくなる。

誰だって、進むべきが道が見えない状態で、歩くのは苦しい。

そして、誰だって、その道を、たった一人で歩いているわけではないから。

 

(おわり)