『定年後に「ボランティア」にはげむ「60代の男性」を見て、「オランダ人」が大爆笑した「意外なワケ」』
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NHK BSの人気番組『cool japan』の司会者として、世界を旅する演劇人として、人気脚本・演出家が世界の人々と聞いて議論した。
世界の人々が日本を体験して感じた「クール!」と「クール?」と「クレイジー!」 これを知れば、日本がもっと楽しくなる!
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*本記事は鴻上 尚史『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(講談社現代新書)の内容を一部抜粋・再編集したものです。
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* 定年後のお父さんを笑われてムッとする
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番組で「定年」を特集した時のことです。
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何人かの外国人には、「年齢によって強制的に退職するシステム」である「定年」がじつに不思議なものとして映ったようです。
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世界には定年制度がある国とない国があります。
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アメリカは、知っている人も多いと思いますが、定年はありません。
年齢による差別を避けるために、就職の時も退職の時も、年齢を理由にしてはいけないのです。
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イギリス、カナダ、オーストラリアにもありません。
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フランス、ドイツは六五歳。
ただし、平均退職年齢がドイツは六一・七歳、フランスは五九・三歳です。
つまり、定年いっぱいまで勤める前にやめる人が多いということです。
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韓国は現在五五歳ですが、二〇一六年からは六〇歳になります。
中国は男性六〇歳、女性五〇歳(幹部クラスは五五歳)。韓国や中国では、定年になるまで働くのが普通のようです。
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「年金受給年齢になると、退職する」というのが、世界的な傾向です。
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欧米はもちろんですが、韓国も中国も、定年後はゆっくりするというのが基本です。
定年がある国は定年を楽しみに待ち、定年がない国は経済的に見通しが立てば退職し、人生の後半を悠々自適に過ごす。
それが、いわば、世界の普通の風景です。
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ですが、番組で紹介した日本の定年後の様子は、世界の常識とは違っていました。
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多くの日本人は(ほとんどが男性ですが)、六〇歳で定年退職した後、次の仕事を探します。
シニア向けの職業訓練校も紹介しました。
ホテルマンやメンテナンス、接客の授業を受ける六〇歳に対して、多くの外国人は理解できないという顔をしました。
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経済的な理由で働くのなら、まだ分かるようです。
日本の年金受給年齢(満額)は六五歳ですから、六〇歳で退職してからの五年間を経済的に支えたいから働く、というのなら外国人も理解できます。
が、定年退職後に働く日本人は、経済的不安というより、「働きたいから働く」と番組で答えました。
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「働くことが生きがいだから」とか「仕事をすることが当然だから」とか「社会とつながっていたい」という理由です。
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西洋人も東洋人も、その言葉に全員、理解できないという顔をしました。
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番組では、定年後に働く人だけではなく、ボランティア活動をしているシニアも取り上げました。
定年後に、公園や駅前にある銅像を洗って回るボランティア・グループに入っている男性を紹介しました。
銅像は、鳩のフンや雨風で汚れていますから、それをひとつひとつ丁寧に洗って回る活動です。
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VTRを紹介した時、オランダ人男性が爆笑しました。
定年後に、社会奉仕という生きがいを見つけ、一生懸命に銅像を洗っている六〇代の男性の姿に大笑いしたのです。
さすがに僕はムッとしました。
正直に言うと、怒りさえ感じました。
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ここで裏話を語ると、テレビというのは、派手にしてナンボです。
クイズ番組に出れば、ディレクターから「鴻上さん、『絶対勝つぞー! ××さんなんかに負けないぞー! 』って、叫んでください」なんて言われます。
対立を煽る構図を求められるわけです。
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バラエティー番組だと、誰かのロケレポートを見た後、「まあ、こんなもんなんじゃないの」と思っていても、ディレクターから「鴻上さん、『こんなんじゃ、全然、ぬるいよ! 』と突っ込んでください」なんて普通に言われます。
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とにかく、感情が動く方法で“演じて”くださいと言われるのです。
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僕はこれが苦手です。
本当にぬるいものはぬるいと突っ込めますし、あいつだけには負けたくないと思う人がいれば、本気でそう思って言いますが、いつもいつも、そうはいきません。
内心、「いいんじゃないの」と思っていても「全然、ダメだよお!」と突っ込むことを求められるのです。
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こういう時、映画やTVドラマで描かれるディレクターは、偉そうだったり、ニヤニヤ笑って、いかにもテレビ屋というイメージで指示を出していますが、現実のディレクターさんは、じつに必死な切ない顔で迫ります。
こっちも、「聞いてあげないとなあ。
大変そうだなあ」なんて思わず同情してしまうぐらい、一心不乱の顔なのです。
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でも、本心から離れたことは言いたくないので、だんだんと、そういう番組に出るのは嫌だなあと思うようになります。
つまりは、「?でムッとしたくない。
?で怒りたくない。
?で興奮したくない」ということです。
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で、なにが言いたいかというと、番組『cool japan』の司会を始めて九年、僕は何回も、「本気で興奮して」「本気で怒って」「本気でムッとした」ことがありました。
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テレビに出て、こんなに本気で感情を動かしたことはない、というぐらい本気になるのです。
自分で自分に驚きました。
自分の中に流れる「日本人」という血でしょうか。
海外で外国人俳優を演出して芝居をしたり、世界を三〇ヵ国ぐらい旅していたり、自分では平均的日本人よりはコスモポリタン(と、自分で言うのもなんだか恥ずかしいですが)だと思っているのに、思わず興奮してしまうのです。
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自分で軽口として「ほんとに日本人は精神的に自立してないんだよなあ」と言ってるうちは平気なのですが、外国人から「日本人はほんとに精神的に自立してないですよね」と面と向かって言われると、「ほお、じゃあ、君たちは本当に自立していると言えるのかね」とムッとする感覚と同じです。
同じことでも、自分から言うのと人から言われるのでは、ずいぶん、印象が違うのです。
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で、定年退職したお父さんが、必死で公園の銅像を洗っている姿に大爆笑したオランダ人男性を見た時も、僕は本気でムッとしました。
思わず、「なにがそんなにおかしいの?」と語気荒く訊きました。
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オランダ人男性は笑った後、「だって、社会とつきあう前に、自分の家庭とつきあうべきでしょう。
社会から必要とされる人間になる前に、家族から必要とされる人間にならないと」とあっけらかんと言いました。
その瞬間、僕とスタジオの日本人男性スタッフ、そしてテレビの前の多くのお父さんが「アイタタタッ」と呻いたでしょう(はい、僕は呻きました)。
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外国人たちは口々に「自分や家族のために、定年後は時間を使うべきだ」と強く言いました。
「人生を楽しむのが苦手なんじゃないの?」とまで言ったマレーシア人もいました。
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「家族や友達と過ごすことに楽しみを見いださないとつまらないと思う」とイギリス人が言い、アメリカ人とフランス人と中国人が強くうなづきました。
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「なぜ家族に求められる人間じゃなくて、他人に求められる人間になろうとするの?」と、スペイン人もまったく理解できない顔で言いました。
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スタジオにいた僕も男性スタッフも、この時だけは、しみじみと考えてしまいました。
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日本の「定年」の風景は、退職当日の花束贈呈や会社を離れる淋しさやその後の生きがいの喪失や再就職探しなど、どれも外国人にはじつに不思議に映ったようでした。
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さらに連載記事<日本の「アイスコーヒー」、じつは「外国人」には「衝撃的」だった…!  その「意外なワケ」>では、「アイスコーヒー」が外国人に与えた衝撃について、詳しく解説しています。
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(現代ビジネス)
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『社会とつきあう前に、自分の家庭とつきあうべきでしょう。
社会から必要とされる人間になる前に、家族から必要とされる人間にならないと』
まさにその通り。
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追伸:
庭を散策して、西と東のビオトープ(メダカ・ミナミヌマエビ・タニシ・カワニナ)の水面の落ち葉をトングで挟んで庭に撒いた。
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元錦鯉(ヒメダカ・ヌマエビ)に水足しをした。
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水車池(マゴイ・ワキン・フナ・ウグイ・カワムツ・オイカワ・タナゴ・モツゴ・ドジョウ・メダカ・ザリガニ・カニ・エビ)に水を足した。
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追伸2:
今日、風呂に入りながら聴いたアルバムは、
「ティナ・ターナー クイーン・オブ・ロックンロール(2023)」DISC3(4~6)
1939年生まれテネシー州出身のロック・シンガー。
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追伸3:
2007年米映画「ゴーストライダー」をまたまた…観た。
<17歳の天才ライダーのジョニー(マット・ロング)は父(ブレット・カレン)がガンに冒されていることを知り、父の病を治すため悪魔メフィスト(ピーター・フォンダ)に魂を売り渡す。
だが契約した後に父は事故死してしまう。
それから13年後。
スタントショーで人気を博すジョニーの元にメフィストが訪れ、人間界に姿を現した魔界の反逆者ブラックハート(ウェス・ベントリー)を捕らえるよう命じる。
そして魔界の力を授かったジョニーは、全身が地獄の炎に包まれた“ゴーストライダー”(ニコラス・ケイジ)へと生まれ変わる。>
1964年生まれカリフォルニア州出身の俳優ニコラス・ケイジ主演のアメコミ映画だね。
1974年生まれフロリダ州出身出身の俳優エヴァ・メンデスも出ている。
1978年生まれアーカンソー州出身の俳優ウェス・ベントリーも出ている。
1944年生まれカリフォルニア州出身の俳優サム・エリオットも出ている。
1940年生まれニューヨーク州出身の俳優ピーター・フォンダも出ている。
監督は、「デアデビル」「ラブ・ギャランティード」などのマーク・スティーブン・ジョンソン。
マーベル・コミックの人気キャラクターを映画化。
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追伸4:

妻とガストに行った。

鉄板ハンバーグ本気盛りと富士山盛ミートソーススパゲティなどなど食べた。
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