人間の安全保障 | A MAN IN SUSTAINABLE SOCIETY

人間の安全保障

人間の安全保障 (集英社新書)/アマルティア セン
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再びアマルティア・セン氏の著書。
「貧困の克服」は講演集だったので、
こちらを先に読めば良かったかなとは思いますが、
まあ仕方ないですね。

基本的に主張は一貫していて、
「潜在能力」の維持・発展こそが大事だという主張です。

この本の中で、セン氏は、
潜在能力の考え方を軸に、
「持続可能な開発」(sustainable development)に関する考えを、
述べています。

彼の言う潜在能力というのは、
「潜在的に人に与えられている機会」のようなものです。
で、将来の世代にも、
現代の人類が持っているのと同じ潜在能力を、
与える義務が我々にはあるという主張をしています。

つまり潜在能力を世代間で公平にすること、
というわけです。


この考え方は、下記の本における、
「世代間倫理」の考え方とほぼ同じだと自分では思っています。

新・環境倫理学のすすめ (丸善ライブラリー)/加藤 尚武
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(新じゃないのもあるんですが、写真が出ないのでコッチで。)


今話題の原油で考えると、
原油そのものを少しでも残しておけばいいのではなく、
原油を少なくとも今と同じ量だけ残す、
というのが、世代間倫理の考え方です。

つまりは、今と同じだけ将来の人にもチャンスを残しておかないとダメだと。
それがまさに持続可能ってことなんじゃないの?と。
そういうことです。


これにはとても納得しています。
そして、こういう話を聞くと、
昔、ある人から教わったこういう考え方を思い出します。

「親から受けた恩は、親に返す前に、子どもに返すべし。」


理想論としては、親にも子どもにも施すべきだし、
どっちかが0でどっちかが100と現実になるわけでもないんですが、
気持ちの面で、将来の世代を優先しろということ。

まあ、自分の場合は、これを盾に、
子どもがまだいないにもかかわらず、
親に恩返しを全然していないんですが…


それはともかく。
親に全て返してしまうと、子どもとの間での相互性が失われる気がするんですよね。
もちろん、子どもへの無償の愛ってのがあるんですが、
究極的にドライに考えるなら、
親に受けた恩は親に全て返したから、
子どもには別に何かする義務はないでしょ、
と考えることができる余地が生まれてしまう。


そういう余地すら生ませず、
子どもとの相互性を維持して、
自分が子どもに施す義務を付与され続けるには、
親から受けた恩を子どもに返すって考え方は有効だと思っています。

それを繰り返すことで、依存がリレーされるような形で下に受け継がれ、
相互性が維持される。
自分が得たチャンスと同じだけのチャンスを、
将来の世代にも与えるインセンティブが生まれるんじゃないかと。
そんな風に考えています。


少なくとも、自分が上の世代から受けたものを、
できれば、それ以上のものを、
下の世代に渡していく義務が、
我々には課されている。
そう意識しながら生きていくことが、
より良い社会を作っていくんじゃないかと思います。

その実現の為には、
まず自分がそう生きていく必要があるし、
自分が出来ることからどんどん行動をしていかなくてはならない。
そんな事を改めて感じさせられました。