こちらは『男はつらいよ』の渥美清さん。


ご存知、寅さんである。




数多くの映画の中から最新映画『お帰り寅さん』に絞って語ります。


物語は是非ご覧頂いた方が良い内容。


本作は、その後の家族の人間模様に寅さんの回想がマッチして、現在と過去、そして私から感じる点では、令和と昭和を往き来する感じなのです。

渥美清さんの笑顔に魅せられ、満男の気持ちに入ってしまう。



自身の思い出のアルバムをめくる、そんな気分です。


満男は小説家になり伯父さんを想いながら日常を過ごす。

鑑賞中、泣けて来るのを越えて、放心状態になってしまう。


率直にそう言う映画なのです。


私と赤影の坂口に近いイメージを観た気分で、涙の溢れる作品です。


物語に触れませんが、幼少期から成長期に大きな影響を与える存在は、両親、親戚等、誰しも多かれ少なかれ影響を受けます。


伯父さん寅さんの存在は、そんな迷い人の時代に、『流されずに生きていこうと言う内側の存在に見えます』。


一方の坂口祐三郎の赤影は、正義の為、果敢に挑む勇者の姿を描き、私達の心に希望の灯りを照らすのです。



どちらも人間の成長に無くてはならないものであり、それは両親や周りの理解者の存在に似ているのです。



私や満男の立ち位置は、良き大人の指針を求め、努力と奮闘で、成し遂げる姿を求めていると思うのです。


劇中の渥美清さんと坂口祐三郎は、映画の時代に東映で接点があったと聞いています。


坂口の赤影が1967年に放送をスタートして、瞬く間にテレビスターにかけ上る。





放送は翌1968年に終わりますが、再放送が繰り返し流れ、カラーテレビの躍進を担う旗手になる。

そのテレビが白黒の時代に、渥美清さんは活躍します。

紆余曲折に経て、1968年に公開の映画『喜劇特急列車』で主演を務め、テレビから映画へ舵を切るのです。

しかし制作は東映。



映画の時代劇が低迷し、テレビ放送の獲得に動く東映は映画は主に任侠に絞って制作をするのです。

渥美清さんの喜劇映画はシリーズ化の途中で頓挫。

そのまま、松竹に移動するものの、テレビの『男はつらいよ』(フジテレビ)放送とスケジュールが合わず、フランキー堺さん主演の松竹映画に流れていきます。




フランキー堺さんと親交のあった坂口から当時の映画業界の話を聞いてただけに不思議な気分になるのです。

しかし、渥美さんの『男はつらいよ』はテレビ放送後、松竹の看板映画として復活して前例無き長期シリーズになっていく。



坂口と良く話した時、正直、見えない世界と良く語っていた事を覚えている。

何故なら、その坂口の赤影も放送から54年が過ぎて、Blu-rayリリース。



名作は終わらないと言う事を今更ながら感じた作品だった。