■赤影公式第1話■








▓不思議な事である。



坂口祐三郎がこの世を去って今年で20年以上の時が経つのだが、まだ側で私に色々話をしている、そんな気分である。


彼が私にこう語った事がある。



『赤影から逃げられないのならトコトン赤影になってやる。』




その言葉で私と坂口の二人三脚、赤影支援会がスタートした。


30年前の事だ。







以降、坂口祐三郎を前に出すエンターテイメントビジネスの世界で奔走する。


時が流れ、私は彼の語り部として作家活動に従事している。





懐かしい彼の赤影は多くの人の心に深く刻まれ、もはやテレビドラマの領域を飛び越え各自の心の支えにもなり日常に溶け込んでいる。



坂口が今のこの世界をどう思うのか、時々考える時がある。



『赤影はもう嫌だった』

若い頃はそんなものだ。





しかし『初主演』の赤影の姿に人々は心を奪われ、世代さえ越えて支持されている。



考えれば考える程、これこそ不思議な事と思うのだ。


▓1つ確かな事がある。

当時は劇場映画が映像の柱で、多くの人々が数ある映画館に足を運び、自身のお気に入りのスターに声援を送ったと言う。


これは私の知らない時代では、あるが映画『ニューシネマパラダイス』に、描かれている。


正に銀幕のスターが闊歩する姿に人々は魅了された。


坂口祐三郎はそう言う映画全盛期の後半に現れ、経営幹部の期待を担う事になる。


しかし、当時の映画業界は新興のテレビに取って変わられ、そのライバルのテレビ業界に進出して窮地を抜けようとした。


既存のキー局が、カラーテレビ放送にテレビの値段が合わずに躊躇した一瞬をついて三洋電機のカラーテレビ予算を獲得する。


斜陽の映画業界と日の出の勢いのテレビ局が交差する奇跡の瞬間、抜擢された坂口祐三郎は映画からテレビに舵を切り、自身制作の赤い仮面を纏い、勧善懲悪の正義の使者として大活躍をして番組、作品は大成功する。


それこそが『赤影』


『坂口祐三郎である』