▓私の小説『仮面と生きた男』は、赤影を演じた名優/坂口祐三郎の主に人生の後半にスポットを当てた物語である。
一世風靡した『仮面の忍者』のイメージに囚われ、苦悩、葛藤しながら、私のモデルである、若き青年、江崎と友情を育んでいく物語でもある。
坂口のイメージは一般的には、赤影の正義のヒーローの爽やかな雰囲気に見えがちである。
しかし、私との二人三脚時代は、むしろ手の焼ける、へそ曲がりの感じが強かったのである。
映画化のイメージとして、私が真っ先に浮かんだのは、『椎名桔平さん』である。
▓ちなみに椎名桔平さんは7月14日に誕生日を迎えて59歳。
とても見えない若さの象徴のようである。
映画『アウトレイジ』で魅せる俳優『椎名桔平さん』の凄みを感じる表情が、坂口祐三郎、そのものに見えたからである。
不思議な事と思うのは、椎名桔平さんにお会いしてお話した時も、坂口祐三郎と話しているかのような不思議な気分になった。
『赤影』は、坂口自身が、前例の無い、仮面の忍者を、試行錯誤しながら構築していった言わば完全架空の彼自身を投影したオリジナルのキャラクターである。
実際、多くの方々に『赤影』の漫画の存在があると言う事は、あまり知られていない。
一方の坂口祐三郎の赤影は、放送当時より大きなブームとなった。
その結果として、赤影の漫画、アニメが、坂口祐三郎の赤影にぶら下がっているようにしか見えない。
小説『仮面と生きた男』は、その坂口のイメージと、私から見た彼の本来の姿、生きざまを、混ぜ合わせ、更に構築していった別物である。
その架空の主人公に、『椎名桔平さん』が、ピッタリ合うのだ。
椎名桔平さんは長く輝かしいキャリアを積み、今、更に俳優として深みを帯びて、今往年の坂口の雰囲気へと繋がっているのかもしれない。
椎名桔平さんに伝えた時も、終始笑顔で語って頂き、坂口が存在しているような、そんな不思議な気分だったのだ。