からの続きです。
前回、双子の話に脱線して、第一の殺人、“井川丑松殺し”だけしか起きてないですね。
登場人物とストーリーです
濃茶の尼(白石加代子)
田治見家にやって来た辰弥に「帰れ、お前が来ると村がまた血で汚れる。八つ墓明神様がお怒りじゃ、丑松は一番目の生贄じゃぞ、今に八人の死人が出る」と襲いかかります。
毎度の怪演ご苦労様です。「悪魔の手毬唄」咲枝「女王蜂」速水るい「病院坂の首縊りの家」宮坂すみ、準レギュラーですね。
ひで(吉田日出子)オリジナルキャラクターです
金田一が滞在することになった宿(郵便局)の局長兼宿の女将さん。
好奇心多めの宿屋の女性もよく見る顔ですよね。坂口良子、深キョンポジションですね。
徳之助(石倉三郎)山守が本職の宿の主人。ヒデの夫。オリジナルキャラクター
「大変じゃ、えらいこっちゃ、久弥さんが毒殺された」と慌てた様子で帰って来ました。
石倉三郎は2006年度版の「犬神家の一族」に鑑識課員の役で登場します。もう一作くらい出演していれば準レギュラー認定しましたけど、2006年度版「犬神家の一族」が市川崑監督の遺作です。
金田一をうっかり久弥の殺害現場である田治見家に上がらせてしまい怒られる千石巡査(うじきつよし)オリジナルキャラクター
シリーズに登場する巡査は一様にうっかり者です。
真ん中はばんどう刑事(間違ってたらごめんなさい永妻晃)右は等々力警部(加藤武)ここいら辺もオリジナルキャラクターですね。
坂東刑事と言えば獄門島の坂東刑事、辻萬長(つじかずなが)は「犬神家の一族」では井上刑事↑「悪魔の手毬唄」では野津刑事と加藤武と組んでいましたけど、今年の8月に亡くなっています。ニックネームはばんちょうさん。吹き替えもやられていました。名古屋章亡き後の2代目ポテトヘッドです。
名脇役と思います。ご冥福をお祈りします。
さて、ストーリーに戻ります
第三の殺人の被害者は濃茶の尼でした。発見者は辰弥です。夜中に怪しい行動をする大伯母逹を追って、土蔵の地下道から鍾乳洞に入った辰弥は鎧兜のミイラを発見、驚いて飛び出た出口は濃茶の尼の住まいの前だったのです。
先の二人が毒殺されたこと、濃茶の尼のそばに薬瓶や計量器が見つかったことから九野(神山繁)を疑う等々力警部。
森美也子(浅野ゆう子)は慎太郎(宅麻伸)に想いを寄せています。元々、亡くなった夫とは長く暮らしておらず、愛情も薄かったようでした。慎太郎が復員すると聞き、実家のある出雲には帰らずに村に残りました。美也子は出雲出身、これは野村版に倣っていますね。
草木染めをしている美也子に水を塗ると消えてしまうアオバナの話を聞く金田一。美也子に人間関係の確認をします。
美也子と金田一は辰弥を訪ねますが、辰弥は八つ墓村を去ろうとしていました。
辰弥は警告状のことと双子の伯母の後をついて行って見つけた地下道のミイラの話をして、地下道に金田一逹を案内します。ね、こんなところには長居は無用でしょ。怖すぎるもん。
金田一(豊川悦司)右 辰弥(高橋和也)真ん中
ミイラは正確には鎧兜を着た屍蝋でした。
そこに現れた春代からこの死体が父の要蔵であることが語られました。
*屍蝋とは腐敗しないで石鹸化してしまった死体です。すごくざっくりな説明
金田一と辰弥は26年前の事件を知ることとなります。
田治見要蔵(岸部一徳)ご乱心。
ある晩要蔵は妻のおきさを切り捨てると村人を次々と合わせて32人(8の倍数)も殺しました。女子どもも見境なく。
その後、鍾乳洞に双子のオババが匿いました。
要蔵が狂ってしまった理由についても話し出す春代(萬田久子)左から二番目
要蔵は妻子ある身でありながら、鶴子に一方的に懸想して、監禁しました。
要蔵はとても凶暴な性質で、赤ん坊の辰弥に焼け火箸を押し付けられ、自分だけではなく我が子の身の危険を感じ、鶴子は家から抜け出し、鶴子に執着している要蔵は狂人になってしまった…と辰弥の耳にはこの上なく残酷な真実が明かされたのでした。
辰弥は泊まっている部屋(かつて鶴子が監禁されていた部屋)の屏風の中に何かが隠されていると金田一を呼びます。
屏風には辰弥誕生以前の鶴子と亀井陽一なる人物のツーショットの写真が隠されていました。
ここでは原作だと辰弥が一人気付くのですが、要蔵にされた仕打ち、想い人亀井陽一との逢瀬などの様子をしたためたものが屏風の中の下貼りに貼られていて灯りをかざすと透けて読むことができたのです。後に辰弥は経師屋(表具屋)さんに頼んで中に貼ってあった母と亀井陽一の手紙を剥がしてもらうのですが、写真もここで見つけるのです。そして、写真の男亀井陽一は辰弥に瓜二つでした。そして自ら父はこの人かと気づくのですね。映画では瓜二つの描写はないです。他の作品ではあったように思いますけど。
そこへ小梅が攫われたと息も切れ切れに倒れ込んできた小竹さん
金田一は洞窟で殺されている小梅さんを発見。もうこれで四人も殺されています。さすが最低防御率保持者と名高い金田一。
小梅殺害現場の近くには行方不明だった九野医師の死体が隠されていました。死後2日は経っている様子の死体。順番は違うようですが五人の遺体が見つかっています。犯人の見当も外れて悲嘆する警部(加藤武)
26年前、要蔵に親や身内を殺された村人は祟りはごめんと辰弥を追い出そうとします。
金田一は屏風の写真のことを調べるために何代か前に郵便局を継いでいた仙波ちゅうべいを訪ねます。
ちゅうべいは故人となり、息子の清十郎(西村雅彦)オリジナルキャラクターが応対します。
親子共に記憶力には自信があると清十郎。鶴子が出した戦地の陽一宛の差し戻った手紙を発見。
亀井陽一の正体も判明します。
ここの次第は原作では先程記した通りです。従ってここの場面は原作にはない話なんですよね。市川監督のシリーズ独特の金田一の出張探偵活動です。
原作は辰弥の一人称で書き進められます。金田一は辰弥と親しい間柄ではないので、金田一がどこまで推理しているか、捜査が進んでいるか、全くわからない状態で最後まで進むのです。
田治見家では小梅を亡くし、取り乱す小竹。小竹は匿った要蔵を持て余し殺害したことを告白し、その昔、初代庄左衛門が八人の落武者殺しを差配した為に祟られたと話し出します。
戦国時代のこと、毛利元就に降伏した尼子義久、この降伏をよしと出来なかった若武者の一行が落ち延びて来て、村に定住しました。暫くは平和に村人とも付き合っていたものの、村人達は八人の尼子の落武者を騙し討ちにしてしまいました。落武者は黄金を持っており、欲に目が眩んだ村人は八人を殺し黄金三千両(言い伝えによる)を奪うことにしたのでした。(結局隠し場所がわからなかったようです)
百姓とはいえ戦乱の世でした。農具を凶器に変えることが出来たわけです。その先導をしたのが庄左衛門(岸部一徳)↑だったのです。サリー…
それ以降、村では不吉なことが続き、庄左衛門は発狂して七人の村人を殺害後、八人目に自らの首を落としました。
それ以来田治見家当主は100年ごとに物狂いになったそうな。要蔵は400年目の当主じゃった。by小竹
小竹は土蔵で殺されてしまい、これで六人。そこへ駆けつけた春代も犯人に襲われます。首を絞める犯人の指を思い切り噛み、瀕死の春代。息も絶え絶えの春代を発見して介抱しようとする辰弥。春代は今際の際に犯人の指に千切れるほど噛み付いた、血の繋がらない辰弥のことが好きだったと告げました。「好きやった」ってリカさんも言ってたなぁ。切ない言葉や。
七人もの人が殺されて「地獄、地獄だよと」嘆く等々力警部。既にいとぐちを見つけていることを語る金田一に驚きます。
『犯人について重大なことを教える よろい武者の下にこい 人に知らせると八つ墓村の惨劇が広がるだろう』
辰弥に届いた呼び出し状。 「女王蜂」のセルフオマージュでしょうか。まぁ、よくある場面ですね。八人目の被害者に選ばれた辰弥ですね。
先に届いた辰弥への警告状の秘密も暴く金田一。あの辰弥に来るなって書いたやつですね。
犯人は八人目にするべく辰弥を呼び出しましたが、呼び出しに応じたのは金田一でした。
犯人との対決です。金田一は犯人の動機を言い当て、犯人を動揺させます。逃げる犯人の前に立ちはだかる警部達。
犯人から全ての動機が語られるのです。
ちょっとばかし動機が弱い気がしますが、そこは落武者の祟りが手伝ってくれます。
「犬神家の一族」の松子も佐兵衛翁に操られていた節がありましたね。
「女王蜂」の銀蔵、神尾先生「悪魔の手毬唄」リカさんを思い起こす恋情の深さ。
科白の中にはこれまでのシリーズ作品を彷彿とさせるものが何箇所も出て来ました。
特に印象的だったのは辰弥の科白。
「忘れられない人だ」勿論金田一に対する言葉です。
「あの人のこと忘れられない」「犬神家の一族」で猿蔵(寺田稔)が言った科白。表情まで同じですね。
全体に恋情が前に出て、野村作品の狂気よりソフトな気がします。
原作でも動機は同じなのですが、犯人の強かさ、行動力に説得力が増し増し。
言い足すと恋模様は原作の方が濃い。恋が濃い。しつこい。
落武者のインパクトも野村作品の方が濃い。夏八木勲の生首は忘れようにも忘れられません。
一方、こちらでは今井雅之が「祟ってやる」と言い残し首を落とされました。
新旧金田一対決part2
走る金田一
走る豊悦。下駄でここまでの全力疾走は無理だから多分スニーカーとか地下足袋だと思う。効果音は下駄の音です。