こんな映画ポスターだったかな?
「女王蜂」は私も映画館に行った覚えがあります。
ここまでの三作品は姉が観に行ったのでパンフなんかを観た覚えはうっすらあるのですが、劇場はここから観に行ったんじゃないかなぁ…と思います。多分親に内緒でこそっと観に行ったと思います。子どもだったので。(強調)
当時はカネボウ化粧品とタイアップで口紅のCMをバンバンやっていました。コピーが「口紅にミステリー」で「〜にミステリー」っていうフレーズもすごく流行りました。
映画の予告映像でも加藤武扮する等々力警部が「時計にミステリー」って言う場面があって何かにつけてミステリーミステリーくっつけていた記憶があります。
この映画は大女優の共演、そして大型新人として佐田啓二の遺児でもある中井貴恵デビュー作品となるなどいろいろと期待を持たせる宣伝文句が並びました。化粧品とのタイアップもそのひとつですね。
それでは「女王蜂」1978年2月公開
出演者のご紹介。
これまでのシリーズにも出演された女優陣のご紹介。
神尾秀子(岸惠子)
月琴の里に暮らす大道寺琴絵、智子の親子二人の家庭教師を務める。
華族。今回は金田一の依頼人ですが、わけあって表には出てきません。
銀造との間に息子(文彦)あり。困った兄(九十九龍馬)のおかげで苦労してます。
そして期待の大型新人は
中井貴一と1文字違い。当然です。二人は姉弟。4歳違いですね。
お父さんは早世された俳優の佐田啓二。岸惠子との共演で大ヒットした1953年の映画「君の名は」(句読点はつきません)で名を挙げた方です。
本名は貴惠子さんのようです。
1987年からお仕事を休まれていたのでよく知らないなって言う方も多いかもしれません。
「病院坂の首縊りの家」にも出演しています。
相関関係がややこしいので智子を軸に紹介を進めます。
智子の母、大道寺琴絵(萩尾みどり)
銀造と日下部が月琴の里に訪れた際、日下部と恋に落ちる。その後、母親から結婚を許してもらえなかった日下部と言い合う中、日下部は殺害される。
大変綺麗な女優さんですが吹き替えの仕事も多くこなされています。土曜ワイド劇場のイメージ強いんですけど。
実は東小路家の次男。兄が亡くなり後継ぎとなり、琴絵との結婚は難しくなる。
そのことを話に来たところで何者かに殺害される。
よく見る俳優さんですけど、脇役が多いですよね。この方も声優のお仕事も多いです。いい声してますもんね。リーアム・ニーソンの吹き替えもしていますよ。「バットマンビギンズ」「ダークナイトライジング」他
お父さんが千秋実さんなんですね。千秋実ってご存知ない方もいらっしゃるでしょうけど、黒澤作品なんかにも多く出てますし、ホームドラマでも時代劇でもオールマイティの名俳優です。いつも優しそうな面持ちの方です。
銀造は日下部仁志亡き後、未婚で智子を産んだ琴絵のうちに婿養子に入る。
月琴の里には住まず、京都在住。結婚したものの琴絵は手に入れられなかったっていうことですね。なんか哀れじゃ。
でも、秀子先生からも想われている。
智子に対しては育ての父だけど、気持ち悪いほど思い入れてる感じです。
智子の義理の弟大道寺文彦(高野浩之)タチの悪いいたずらをして両親に怒られ泣いてます。
高野浩之は子役から活躍していて「超人バロム・1」では主役でしたし、NHK「なぞの転校生」など当時の大ヒットドラマにも出演していました。
今回はいないかと思ったらこんなところに色情魔がいました。智子を襲おうとするゲスでげす。
「獄門島」の村長と同じく「ザ・ガードマン」の人だよ。時代劇でもよく見るお顔でしたね。
家族っぽい人は以上。次は智子の周りの男達。銀造と九十九もこっちなのかもしれません。
多門連太郎(沖雅也)唐突に智子の前に現れた。結構強引に言い寄ってくるし、不法侵入してくるし、イケメンじゃなかったらとっくに捕まえてるから。実は東小路隆子の知り合いで、隆子に智子を守るように言われている。隆子はあわよくば二人をくっつけたい。
特攻くずれで戦後やさぐれていたけれども元々はええとこのボン。気骨もあるし、体格もいいし、顔もいい。智子じゃなくても落ちますね。
演じる沖雅也はイケメン俳優で名を馳せましたが、某有名ホテルで自殺してしまいました。
ご本人も既に亡くなっています。残念です。まだまだお若かったのに。
「愛と誠」作梶原一騎 画ながやす巧
「早乙女愛よ、岩清水弘は君のためなら死ねる」
「大道寺智子よ、赤根崎嘉文は君のために死にたくない!」
中島久之は山口百恵主演赤いシリーズなどドラマ出演がとても多いです。なんどもこのシリーズの俳優陣出演ドラマで挙げた「白い巨塔」にも出演。でも私のイチオシは「愛と誠」(TVドラマ池上季実子主演)の岩清水弘なのです。
そしてそしてお待ちかねのレギュラーと準レギュラーの面々。(レギュラーじゃない人もいます)
冷泉公裕はレギュラーだった辻萬長の代わりみたいですね。
下左は山本巡査の妹役の人だけど誰だかわかりません。ご存知の方はお知らせください。沼田さんと同じ匂いがしますよね。スタッフでしょうか?
下右 おあき(坂口良子)今回も旅館の女中さんですね。前作より大分セリフが少なかったです。
紹介だけで尺がなくなった感がありますね。
ストーリーを簡単に
20年前の天城月琴の里。源頼朝の落し子の子孫と言われる大道寺家に二人の学生、日下部仁志と速水銀造が滞在しておりました。二人が帰った後、大道寺家の一人娘、琴絵の懐妊が発覚。相手である日下部仁志は一旦は指輪も渡したのに、母親に結婚を反対されて揉めることとなります。
そして日下部は殺されました。
ところがその死は大道寺家により事故を装われます。
未婚の母となった琴絵に銀造が結婚を申し込みます。
時が過ぎ、琴絵は智子が5歳の頃に亡くなりました。
大道寺智子は家庭教師の神尾秀子と月琴の里に暮らしていましたが、19歳になったら義父の銀造とその愛人の蔦代、義弟の文彦の暮らす京都に移ることが決まっていました。
銀造の元に智子が京都に移って来たら周りの男達が死ぬという内容の脅迫文が届きます。
同じ脅迫文を送られたもう一人の人物(東小路隆子)の依頼により金田一がやって来ます。
智子の求婚者は遊佐、赤根崎、駒井の三人。
まず、遊佐が殺されました。現場には智子と多門連太郎の姿が。多門連太郎もまた智子を取り巻く男の一人でした。
東小路隆子は実は日下部の母であり智子の祖母に当たる人でした。多門連太郎は隆子に差し向けられたのでした。
三人の求婚者の二番手、赤根崎は東小路の開いた野点の席で一服盛られて絶命。逃げていく多門連太郎。犯人でも、そうじゃなくても間が悪すぎる。
九十九龍馬は蔦代の兄ですが、九十九も智子を狙っていました。智子を襲おうとしたその時に殺されました。
智子を京都に来させまいとする脅迫者。脅迫者は殺人者なのか。いつも犯行現場に現れる多門連太郎ははめられてるの?犯人なの?犯人の動機は?
20年前の事件、智子の父を殺したのは母の琴絵なのか。
金田一がいなかったらきっと真相は明るみにされなかったに違いありません。
父親のしかも義理の父親の偏愛が気になります。はっきり言ってキモい。若作りが無理すぎる。市川崑監督はいつも誰かに若作りさせるよねー。
ラストはめでたしってわけにはいきませんが、神尾先生の健気さにじーん。
金田一もつらい立場に置かれたけれど周囲に理解者がいて良かったです。
原作をせっかく読んだのに、全然比べていなかったので、最後に少しだけ。
以下カッコ内は映画での名前です。
原作では日下部の父、つまり智子の祖父は衣笠氏で東小路隆子は苗字も性別も違います。九十九は蔦代と兄妹ではありません。蔦代の兄は伊波良平、欣造(銀造)の執事です。映画では登場しません。
原作では序盤にヒントが出揃います。
月琴の里は伊豆の月琴島という離小島。
智子は18歳の誕生日を迎えたら東京の父親、欣造(銀造)のところに移ることになっていました。これまで大道寺家で智子を育てたのは祖母の槙でした。ですよねー。保護者が不在なら養父が離れて暮らす意味がわかりません。映画にはここは無理を感じました。
大道寺家が島の名家であることと、頼朝の後裔と言われていること、唐の間の事件=日下部の殺人は原作と映画は同じです。
九十九龍馬は島の大道寺家に次ぐ名家であり、琴絵に失恋し島を出ました。実は日下部亡き後、婿の座を狙ったものの欣造(銀造)に奪われたわけです。
此度は智子のお迎えの任に就きました。
金田一も加納弁護士より依頼を受け、同じ任に就いたのです。
加納弁護士が金田一に頼んだのには脅迫状のことがあったからです。欣造(銀造)に来たものと同じもう1通がある人物の元に届きました。やはりこの受取人についても日下部青年の身元についても伏せられました。
しかし、智子の実父が日下部であること、欣造(銀造)が智子を私生児とさせないために妊娠中の琴絵と結婚したことなどを聞きます。
この時に日下部から父への手紙に蝙蝠の話が書いてあると聞きますが詳細はわからぬまま。
加納弁護士は日下部青年死亡の際、身分を隠すことにばかり気を削ぎ、死亡原因は追及しませんでした。
九十九と金田一は島まで迎えに参じ、19年前の事件のことも聞きます。
日下部達哉(仁志)は妊娠の知らせを聞き一人月琴島にやってきて二日ほど逗留、その際に蝙蝠の写真のことを神尾秀子に語っていました。
その後すぐに死亡。
第一の殺人の舞台は修禅寺のホテル松籟荘で役者が全員揃います。このホテルは月琴島から出てきた智子達と大道寺欣造(銀造)との合流地点です。島へのお迎えは金田一と九十九のみ。映画との決定的な違いは、ここに智子の祖父である衣笠氏(東小路隆子)が現れること。そして映画ではヒントをくれただけの嵐三朝が姫野東作と名を変えて登場。元々嵐三朝は芸名かもしれないですよね。姫野は「蝙蝠を見つけた」と遊佐に話します。これをたまたま神尾秀子が聞いていましたが、姫野と遊佐は殺されてしまいます。
第二の殺人舞台は歌舞伎座。映画では野点でした。三宅(赤根崎)がチョコレートに入った青酸カリで殺されます。ここにも金田一、衣笠老人、多門連太郎と役者は勢揃い。
そして第三の殺人舞台となるのは映画同様、九十九の道場。場所は青梅です。東京の大道寺家は経堂。結構遠い。
唐の間で種明かしとなり、犯人が劇的な終わりを迎えるのは同じなのですが、遺書を読むのは金田一ただ一人。映画では遺された人たち皆が真相を知ることとなるのですが。金田一は依頼人代理である加納弁護士にだけ真相を話します。
ラストは智子がお祖父さんの存在を知ることとなります。花婿候補も一人に絞られてよかったよかった。他のやつみんなゲス過ぎたからね。
シリーズには珍しくラブ要素満載。たくさんの男達を虜にして我を失わせてしまう智子は女王蜂というよりかぐや姫のようです。
原作では時計台の殺人事件で、偶然起きたことが犯人にアリバイを与えることとなり、早くから真犯人に気づいていた金田一に事件解明を遅らせることになってしまいました。金田一には、まぁありがちです。
原作は映画と違い、動機に衣笠家への恨みなどはありません。
男性が女性に抱く欲望の大きさが想像を超えます。いくら綺麗だからって、ねぇ?
美しく生まれついていない人には全然想像できませんね。笑うしかない。
どちらも楽しめます。
やはり小説の方が話にボリュームがあるので、より楽しめるとは思います。
お父さんの大道寺欣造(銀造)は小説の方が気持ち悪くないです。
そして九十九は小説の方がなお気持ち悪いやつでした。
映画だけを鑑賞した方やこれから鑑賞するつもりの皆様、是非原作の小説もお読みください。登場人物も増えてますし、トリックや細かい心情描写も面白いです。
そして、映画の方はお馴染みの喜劇役者の面々やベテラン俳優の方々の名演技により、笑える場面もあって小説にはないおかしさも加わります。
遺書を読むシーンは涙を誘います。
次はこのシリーズ最終回「病院坂の首縊りの家」です!よろしく!