お子たちよ、大志を抱け | 船頭さんの後悔日誌

船頭さんの後悔日誌

僕は、日々いろんなことを考へてゐます。その考へてゐる内容というのは、どちらかと言へば、世の中にとっておよそ役に立たぬものばかり。そんな日々の戯れを、パソコンの画面に向かひて、墨汁を含ませた筆で以て、大書してをります。

拙僧がお世話になってゐる自動車屋さん、
営業のK君はなかなかの好青年である。
出身が西日本ということもあり、
ボケに対するツッコミにも心得がある。
当地に於いては、たとえば拙僧が、
「あービックリした。灯油で乾杯するのかと思た」
などとボケてみても、
「大丈夫ですよ」
と優しく言われることが屡々あるが、
あれは本当にこたえる。
ある意味スベるより辛いかもしれない。
しかし、K君なら、
「そうそう、灯油で乾杯!って、燃えちゃうよ‼️」
程度のツッコミは返してくれるので、
拙僧としても、誠に心強い限りである。

そのK君から聞いた話なのであるが、
最近のお子たちに、
大人になったら乗りたい車
というアンケートを行った結果、
一位に輝いたのは、
トヨタのプリウスだったそうだ。

拙僧は、この話を聞いて、
なんとなく少しの悲しさと
なんとなく少しの寂しさをおぼえた。

申し上げておくが、
拙僧は決してプリウスを否定するものではない。
何度か乗せていただいたことがあるが、
とてもよくできた車だと思うし、
自分でも運転してみたいなとも思う。

しかし、しかしである。

拙僧の小学生時代、スーパーカーブームが席巻した。
フェラーリやランボルギーニなんていう名前を
多くの小学生が、知っていて、
お気に入りの車種のひとつやふたつあったものだ。
そしてそのスーパーカーに対する憧れの感情は、
大きくなったら乗りたい
という願望へと変換され、
そんな夢を抱きながら、みんな大きくなっていったものだ。
そして、成長するにつれ、
大人になるとは、ひとつずつ夢から醒めることだと
認識していったのである。

しかし、乗りたい車ナンバーワンがプリウスでは、
夢を諦めることなく、
比較的容易に実現できてしまうではないか。
果たしてそれでいいのであろうか。

船頭のカモノハシ程度の頭脳では、
それがいいことか悪いことかはわからない。
しかし、船頭の気持ちとしては、

せめてお子のうちくらいフェラーリに乗りたいと思ってもいいんぢゃないかと思う。
大人になって、本当にフェラーリに乗れる人は
ほんの一握りだ。
でもそれでいいんだ。
初めっから諦めちゃうよりずっといい。
そして、成長して現実を知って、
挫折して、諦めて、買える車に乗って、
このプロセスには、人間らしさがいっぱい詰まってゐるんだ。