ここには何も書かれていない

ここには何も書かれていない

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かつて誰かを愛してさえいたかのような

かけがえのない思い出と

それに纏(まつ)わるメロディも全部

今更手の届かない場所へ

忘れてきてしまったようだ

人間が生まれ変わるたびに

記憶をすべて失うのなら

その事実は小説のように儚(はかな)く

すでに結末さえ用意されている

そう思えば

目の前の誰かを

もっと大切にできるのではないか

誰かが描いた架空の物語の中を

俺たちは歩いているのではないか

自分にしかできないことなんて何もないのに

誰にでもできることを誰もしてこなかった

道端に咲く花にでさえ

それぞれの名前があるように

どんな小さな命にも魂があるなら

ただそこに自覚があるかないかだけの違い

果たして

俺たちはまた出会えるだろうか

この道の行く先に

それはまるで生まれて初めての口づけのように

誰も教えてはくれなかった

そして確信に変わる

きっと今この瞬間

俺たちが主人公なんだ