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日本の五輪と「プロ入り待望論」

日本の五輪と「プロ入り待望論」


 ロンドン五輪で日本勢が予想外の活躍を見せたせいか、一部のファンの間では、清水聡や村田諒太に対し、プロ入りを願う様な論調があるらしいが、正直、こういう論調はよくわからない。
 なぜなら、僕はアマチュアだろうが、プロだろうが、ボクシングが好きだから見ているのであり、彼らが何処で活躍するかは問題ではないし、アマで活躍したからプロで見てみたいとはならないからだ。
 勿論、現在のアマチュア界で圧倒的な強さを見せるワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の様に、プロで見てみたいと思うような選手もいる。というのも、ロマチェンコの強さは、文字通り圧倒的であり、もはやアマチュアでロマチェンコに勝てる選手はおらず、このままアマチュアでピークを過ぎていくのならば、プロの世界で強いと言われている様な選手との手合わせを見てみたいと思うからである。
 しかし、上述の日本人選手達は、ロマチェンコの域には遥かに及ばないし、仮に日本でプロ入りしたとしても、そのプロキャリアを終えるまでに、本当の意味での強豪選手と対戦する機会は、多くても2,3試合と言ったところであろう(五輪には出場できなかったが、日本のトップアマらかプロ入りした内山高志が、現時点で、世界トップレベルの強豪と一度でも対戦しただろうか)。だったら、アマチュアに留まり、アジアの大会で中央アジアの強豪選手と対戦したり、世界選手権でアジア以外の強豪選手と対戦する方が、遥かに興味をそそられるはずだ。
 おそらく、上述の様な事をいう人達は、言葉が悪いかもしれないが、亀田ファン的なにわかファンであり、大してアマチュアボクシングに対する知識もないのに、無条件でアマチュアボクシングはプロボクシングよりもつまらないと思い込んでいる様な人達なのではないだろうか。
 プロに行くかどうかは、選手個人の問題だが、純粋にボクシングが好きならば、プロ、アマの何処で活躍するかは大きな問題ではないはずだ。

五輪屈指の好カード

五輪屈指の好カード


 先月25日に開幕したロンドン五輪も、いよいよ明日が最終日となり、アマチュアボクシングも10階級で決勝戦が行われるが、そのなかでも屈指の好カードは、ロベイシー・ラミレス(キューバ)とツゥグスツォグト・ニャンバヤル(モンゴル)が激突するフライ級決勝戦ではないだろうか。
 大会前から優勝候補に推されていたラミレスは、2010年の世界ユース選手権で、清水聡が五輪アジア予選で完敗したシバ・サパ(インド)に14-1で完勝した弱冠18歳の天才少年であり、五輪1回戦では、強打の須佐勝明に対し、ゴムまりの様な柔らかい身のこなしから撓る様なパンチを的確にヒットさせ19-7の判定で下すと、準々決勝では、須佐戦とは一転、プレッシングを懸けながら、アンドリュー・シェルビー(イギリス=2011年世界選手権銀メダリ獲得)を追い詰めていき16-11の判定で下している。
 他方、ニャンバヤルは、弱冠17歳で2009年の世界選手権に出場すると、大方の予想を覆し決勝まで勝ち進み、決勝でマクウィリアムス・アロージョ(プエルトリコ=アロージョは、現在プロ入りし、12勝10KO1敗の戦績を誇っているが、唯一の1敗は岡田隆志に敗れたものである)を、その強烈なパワーとパンチ力で圧倒した末、不可解な判定負けを喫している。その後は、その時程のインパクトを国際大会で残せていないが、今五輪では、1回戦で、昨年の世界選手権で敗れた エルヴィン・マミシュツァッデ(アゼルバイジャン)に18-11の判定で雪辱すると、準決勝では優勝候補のミーシャ・アロヤン(ロシア=2009年世界選手権銅メダル獲得、2011年世界選手権金メダル獲得)に、右のパンチを何度となくカウンター気味でヒットさせる巧さを見せ判定勝ちしている。
 予想としては、フライ級離れしたパワーに巧さが加わりつつあるニャンバヤルがラミレスを押し切りそうだが、どちらが勝つにしろ、決勝戦にふさわしハイレベルな攻防が見られるはずだ。

キトロフの五輪敗退と村田

キトロフの五輪敗退と村田



 五輪ミドル級で絶対的優勝候補と目されていたイェフゲン・キトロフ(ウクライナ)が2回戦で敗退したが、今大会は、イギリス人選手への露骨な贔屓判定が多く、結果、キトロフも、その犠牲者となる形で大会から姿を消している。
 この試合は、1ラウンドこそ対戦相手のアンソニー・オゴゴ(イギリス)のペースだったが、2ランド以降、キトロフが本領を発揮しだし、得意の強打でオゴゴをたじたじにさせ2度のスタンディング・ダウンを奪うと、3ラウンドも一方的に攻め込み、明白な形で勝利を手繰りよせたかに思われたが、判定は無情にもオゴゴを支持する事となる。
 勿論、海外のボクシングファンも、この判定に対し非難の声を上げているし、キトロフ陣営も判定を不服として、AIBAに抗議しているが、判定が覆る事はなかった。
 そのオゴゴは、大会前に、何人かのエキスパートからキトロフの有力な対抗馬に推されていたが、世界選手権や欧州予選の試合を見る限り、地元選手への過大評価という印象が強かったし、本選の1回戦も、対戦相手であるジュニオル・マルティネス(ドミニカ)のスピードにほとんど対応できていなかったにもかかわらず、ラッキーな判定で勝利を拾っている。
 他方、日本メディアが言う様に、今回のキトロフの敗戦は、村田諒太には朗報だったはずだ。昨年行われた両者による世界選手権決勝での内容を見る限り、今五輪で両者が再戦しても、村田がキトロフに勝てる可能性は極めて低かったはずだし、今五輪で村田がメダルを獲得できても、キトロフがいる限り、金メダルはまず無理だったはずだ。
 いずれにしろ、村田の金メダル獲得は、キトロフへの不可解な判定で、かなり現実味を帯びてきているはずだ。