会社の駐車場に車を停めて男性は歩いた。
「おはようございます。」
受付の女性が男性に挨拶をした。
「おはよう。」
いつもと同じ様に挨拶を返す男性。
男性の勤めている会社は巨大な企業でもなく本当にどこにでもある普通の会社だった。
自分のデスクの上の書類に目を通しす。
いつもと同じ作業の繰り返しだ。
「どうぞ。」
女性社員がコーヒーを持って来てくれた。
「ありがとう。頂きます。」
綺麗な笑顔でお礼を言う男性。
男性は女性社員に人気があった。
穏やかで落ち着いた雰囲気で優しい話し方。
スラリとした長身にミステリアスな瞳。
自然と女性社員の視線が男性に集まって行く。
「あつ、、、。」
コーヒーが熱くて男性は少しこぼしてしまった。
先程の女性社員が慌てて駆け寄って来た。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
心配そうにコーヒーを拭く女性社員。
「ありがとう。僕の方こそごめんね。自分が猫舌なの忘れていたよ。」
照れながら微笑む男性。
「そうだったんですか。気が付かなくてごめんなさい。」
拭いてくれたハンカチごと女性社員の手を握る男性。
「もう自分で出来るからいいよ。ありがとう。」
一瞬動きが止まる女性社員。
「あ、、、。はい、、、。」
顔を少し赤らめながら立ち去る女性社員。
男性はハンカチを握りしめて席を立った。
ピピピピ、、、、。
時計のアラームが規則正しく鳴った。
男性はベッドから手を伸ばしアラームを止める。
閑静なこの街に朝が来た。大きくもなく小さくもなくごく普通の1戸建てに男性はひとりで住んでいる。
「よく眠れたな。」
欠伸をしながら1階に向って階段を降りる。
顔を洗い着替えて自分ひとりの為に朝食を作った。
気分によって和食だったり洋食だったりする。
今日は和食だった。お味噌汁を啜りながらテレビのニュースを見ている。
「いつもと変わらない朝だ。」
10分程で朝食を食べ終えて食器を洗い出した。
きちんとシンクの水滴まで綺麗に拭いている。
鏡の前で身支度を確認をしリビングから見える庭に向って声をかけた。
「じゃあ。僕は会社に行って来るね。」
所々にポツンと石が転がっているだけの寂しい感じの庭だった。

「もう、、、。やめて、、、。」
力のない女性の声が静かに部屋に響く。
「もう、、、。」
女性は虚ろな目で目の前の男性に哀願する。
部屋の中は静まりかえり女性の声だけが聞こえる。
薄暗いその部屋はカーテンが引かれ椅子がひとつ置かれている。
椅子には男性が腰を掛けて女性を見ている。
「お願い、、、。」
女性はその場に崩れ落ちた。
男性は女性に近づき白い手袋をはめた手で女性の顔を優しく撫でた。
「嫌、、、。」
「何が嫌なんだい?僕は貴方に何もしていないだろ?」
男性は女性の目を見てゆっくりと言った。
「Z、、、、。」
女性は床に伏したまま動かなくなった。
「困ったな。僕は何もしていないのに。」
小さく溜息をつくと男性は手入れの行き届いた皮靴で女性の体を蹴った。
「また次を探さなくちゃならないね。」
綺麗な笑みを浮かべると男性は部屋を出て行った。