私自身のギター遍歴を振り返ると、エレキギターはレスポールタイプに始まり一通りの代表機種を経て、価値観の大きな転換点になったのはSteve Klein Guitarを所有した時でした。
頭のない、テニスラケット様の奇妙な楽器は実際に所有してみると人間工学に則ったとても合理的なデザインだとわかりました。
カーボングラファイト製のネック、移調機能を持つトレモロユニットから生まれる音は唯一無二の音色と演奏性を持っていました。
前衛的な音楽表現に惹かれていた時だったので、音楽的な嗜好にもマッチしました。
同じ時期にPlayer誌やリットーミュージック社から次世代エレクトリックギターについての特集やムックが出されていたこともあり、私の興味はSteinbergerやParkerといった木製ではないエレキギターに向いていきます。
今では信じられないことですが、90年代前半にはギターメーカーを特集したテレビ番組が放送され、ビデオも発売されていました。Steinbergerについてはダブルネックと12弦以外は全てのモデルを所有していたと思います。
大学の卒業論文のテーマをエレキギターにしたため、アコースティックギターも含めてギター属の楽器については相当量の文献を読みました。作る方には興味がなかったのですが。
この時の経験があったからこそ、楽器のデザインや機能についての保守性がなくなり、後に木製エレキギターの良さもわかるようになったことは間違いありません。
初めて購入したヨーロピアンギターはフランスVigier製の金属指板を持ったフレットレスギターでした。
チャップマンスティックに取り組んでいた時期もあるので、多弦多フレットのギターに凝っていたこともあります。
(これについても私なりの答えが出たのですが、それはまた別の機会に。)
私にとって作り手やデザイナーの顔が見える楽器を持つことのよろこびは、彼らのバックグラウンドや楽器が出来上がるまでの試行錯誤を推し量れることにもあります。
逆に言えば、ただ「ハンドメイド」であることだけを謳った物には魅力を感じませんし、高級・高品質であってもプレタポルテよりもオートクチュールに魅力を感じます。
そのうちに楽器店に行っても雑誌を見ても欲しいと思うギターがなくなり、以前から興味のあったヨーロッパに行ってみることにしました。
ここから開業までの経緯はリットーミュージック刊「アコースティックギターマガジン Vol.81~一生モノのアコギを探す」でも紹介されていますので、ぜひご覧ください。