N:現在のドイツの音楽シーンはいかがですか?
HS:Rock am RingやWacken Open Airをはじめとする大きなイベントについて話すのであれば、もちろん、ドイツには大きなシーンがあります。人々はライブミュージックに強い関心を持っていますが、私はヨーロッパのどこにでもあった小さなクラブを見かけなくなりました。特にドイツでは。今では若いバンドにとっていい演奏会場を見つけることが難しくなっています。
明らかにシーンは細分化し、現在のバーやクラブの設備ではオーディエンスを楽しませるには不十分です。とはいえ、ドイツにはまだライブミュージックがとても盛んな地域があります。
ケルン、ハンブルグ、ライプツィッヒは素晴らしい音楽シーンが続いています。
ここブルッフザールでもなんとか地域の音楽シーンを活性化させようと努めていて、その効果が出てきています。
N:ドイツにはロックミュージックとギタービジネスの長い歴史があり、世界的にも有名な楽器メーカーがいくつも存在しています。それについてはどうお考えですか?
HS:このギターショウを準備するにあたって、ドイツのルシアーについてとドイツの楽器産業と世界的企業との関係について調べました。ドイツには大小合わせて316の弦楽器メーカーが存在しています。ギターの構造的発展はドイツで始まりました。
Höfner(ホフナー)やFramus(フラマス)は1950年代には有名なギターメーカーであり、ポール・マッカートニー、ジョン・レノン、ビル・ワイマンらはそれらの楽器を使っていました。
以来、今日に至るまでここには多くのノウハウと経験値があります。
しかし、大企業を考えるとき、めまぐるしく変化するグローバルなビジネスの世界において生き残ることは容易ではありません。
変化は早くなり、消費者は多様化・細分化しています。
私自身も楽器店を経営していますが、我々はときに「多いことは良いことだ」と考えることがあります。ドイツでは現在、300,-ユーロ以下(4万円程度。日本ではそれ以下になっていますね。)でギターが買えます。これは企業にとっては厳しい競争を意味します。
一方において、これは楽器のクオリティーにこそチャンスがあるということだとも言えます。このショウでは高い芸術性と驚異的な音を持つ楽器が集まっています。それが初心者か職業音楽家かに関わらず、様々なコンセプトを持って作られた楽器は来場者たちにインスプレーションを与えることでしょう。
私はこれまでスタンダードな物しか使ってこなかった多くの人達にこのショウのことを話し、実際にここにある楽器を弾いてもらいました。彼らはそのときに、より高品質なものや真摯に作られた楽器の良さに気づきました。
ですので、私は品質と実用性の力を強く信じています。
パーソナライズされた(個人と結びつけられた)楽器はそれ自体がプレーヤーの個性と創造力を表現し、ミュージシャンにとって新しい世界を開きます。私はドイツのカスタムギタービルダー達はグローバルなギター・ベースの世界に大きな影響を与える用になるだろうと考えていますし、それはこの業界の革新と持続性につながると思っています。
N:いくつかのドイツの小規模なギターブランドやルシアーはアメリカで成功していますが、それについてはいかがですか?
HS:私は定期的にアメリカを訪れていますが、私の意見ではアメリカの業界はセールスとマーケティングだけで動いているように思います。いくつかのドイツのブランドもこのゲームに参入し、結果はあなたも知る通りです。
この自由市場において適切な場所で正しいマネージメントができれば、ドイツのルシアーメイドのギターはギター業界を導く存在になれるかもしれませんが。
ところで、最近アメリカではギターショー自体がいくつかの楽器店をまわるツアーが行われていますが、その中にも多くのドイツ製ギターが含まれています。
(続く)