『人間の條件 完結篇 第5部死の脱出』 | 日本と芸能事が大好きな Ameyuje のブログ

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米合衆国領土グアム島と仏領ポリネシアのタヒチ島とボラボラ島しか訪れた他国無し。比較対象が少ないのに「僕に一番合うのは日本」と思う。反日国に侮辱されても毅然とした態度をとらない現在の母国には「いやんなっちゃうな~」と立腹するけど、やっぱり日本が大好き。

人間の條件 第5部死の脱出は第6部曠野の彷徨 とともに完結篇として1961年1月28日に公開。

 

DVDでは第5部と第6部は別のディスクになっていますが、映画としては5部と6部合わせて1本の映画の「完結篇」となっています。

 

 

宝石赤宝石緑宝石ブルー宝石紫

 


 ソ連国境でソ連軍の攻撃を受けた梶 (仲代達矢)の隊は、 梶と弘中伍長 (諸角啓二郎)と寺田二等兵 (川津祐介)を残して全滅しました。
 



 生き残った三人は歩き歩きつづけてやっと川が見えるところまでたどり着きます。
 そこには避難民の老師教夫婦や、慰安婦の竜子 (岸田今日子)と梅子(瞳麗子)、関東軍の部隊から落伍した匹田一等兵 (清村耕次) 達が居ました。

 


 彼らは梶の指揮に従って南を目指して歩きはじめますが、飢えと疲労から倒れていく者もいました。丘の麓に来ると、永田大尉 (須賀不二男)がの率いる一個中隊が休息していましたが、その兵隊たちは女連れの梶達を罵って食糧も与えようとしませんでした。

 

 

 ところが幸運なことに、かつて野戦病院で一緒に療養していた丹下 (内藤武敏) がその中隊にいたことから、乾麵包を手に入れることが出来ました。
 


 林のはずれに一軒の農家を見つけ、彼らは豚を煮て大休止をしますが、そんな休息の時間も束の間に奪われます。 中国人の民兵が農家を家を囲んんで、竜子は悲惨な殺され方をします。

 なんとか生き残った6人はやっとの思いで道路に出ます。
 日本人の避難民が通り過ぎて行き、中国の赤軍のトラックが通ります。
 倉庫のような建物の中には30人ほどの避難民の女性達がいました。
 叔父の家から北湖頭の自分の家へ帰るという姉弟とも一緒になります。一緒に南満州へ行こうと勧めましたが、姉弟はどうしても家へ帰るのだと言います。



 結局二人の姉弟が匹田と桐原(金子信雄)という二人の男が「途中まで送っていく」と付き添うのですが、「あの娘は適当に扱ってやったよ」と、娘を手籠めにしたことを匂わす桐原を、激怒した梶は集団から追い出すのでした。

 

宝石赤宝石緑宝石ブルー宝石紫

 

(別メモ)

『正義と希望は両立しない戦場という世界』

 

 第4部のラストで部隊が全滅した中、発狂した小野寺兵長(千秋実)を過って窒息死させてしまったものの、寺田二等兵(川津祐介)や弘中伍長(諸角啓二郎)らと共に生き残った梶は、妻 美千子の元に戻るため「自分は鬼となって何としてでも生き抜いてみせる」と言い放ち、南満への脱出行動に入ります。

 

 道路を横断するだけのためにソ連兵の見張りを刺殺し、血塗られた我が手を見る梶の姿が印象的。刺されたソ連兵にもきっと家族がいるはずなのに…という梶の自責の声が聞こえるようです。これが戦争なのでしょう。

 第5部はサブタイトルどおり、国境を越えて攻めてきたソ連軍に追われ、ひたすら妻美千子が待つ南満を目指す梶達敗残兵や民間人達の脱出行動が描かれます。
 

 歴史を顧みれば、1946年(昭和21年)までの有効期限があった「日ソ中立条約」(内容は日ソの相互不可侵や、互いが第三国との戦争時における中立等を定めた全4条と、満州国および蒙古各領土の保全と相互不可侵を謳っている)をソ連は一方的に破棄したわけですが、それは昭和20年8月初頭の事でした。

 日本人として広島(8月6日)、長崎(8月9日)への原爆投下の日と同様に忘れたくない日ですが、当時すでに南方では制空・制海権ともに失って瀕死状態にあった日本が、最後まで信じていたソビエト連邦に裏切られた日が1945年の8月8日でした。

 

 スターリン率いるソ連はシベリア鉄道その他の輸送手段をフル稼働させてソ満国境に兵士と軍備を集結させた後に日本に宣戦布告した(厳密には8月8日の深夜)わけですが、その布告もモスクワ駐在の日本大使館の全通信手段を切断した中で行われたもの(当然日本本国への通信手段も断たれていました)で、大使が日本本国にソ連参戦の連絡が取れぬうちにソ連軍は一斉に進撃を開始(9日午前零時を以って戦闘が開始)しました。


 第4部の映画の中で梶上等兵が迎え撃ったのはこの完全奇襲攻撃で国境を越えて来たソ連軍だったわけですね。千島・樺太、満州国では勇敢に戦った部隊も多かったのですが、高級参謀など一部の兵達はすばやく危険を嗅ぎ取って、民間人を非難させること無く(つまり民間人を置き去りの盾として)自分達だけ先に前線から遠く南下転進していた卑怯者が居たようです。

 ソ連軍侵入後に、満州東北地方の軍民の多くが体験した地獄は数々のドキュメンタリー、エッセイ、小説などの書籍、そしてTVドラマにもなっていますから、「人間の條件」に描かれているエピソードやそれに近いものは皆さんも既にご存知でしょうから、細かく書くのは止めます。

 梶達は逃げる途中で慰安婦も混じえた民間人達と合流します。石炭屋(上田吉二郎)、雑貨屋(坊屋三郎)など懐かしい俳優さんの中に、娘時代の中村玉緒さんが避難民少女として混じっていますが、最近のバラエティの顔からは信じられない可憐さですね。

 

 そして水・食料が殆ど得られない極限状態の人間達を写す宮島義勇のキャメラがイイです。また、この第五部に梶と死地からの脱出行を共にする慰安婦の役で、昨年12月17日に亡くなられた岸田今日子さんが出演されていますが、慰安婦の竜子を演じるお若い日のムーミン、いや、今日子さん(俳号:眠女 minjo)はセクシーで不思議な魅力がありました。

 

 また梶が病院で知り合った丹下一等兵(内藤武敏)もこの五部で梶に再会して合流するのですが、数少ない「ほっ」とするエピソードでした。

 しかし、この脱出行では梶の超人的な脚力が不自然だなぁ…と少し気になるくらいに、民間人たちが斃れていきます。とにかく民間人たちの悲惨さが強く描かれているのですね。例えばソ連軍兵士による略奪や、婦女子への強姦ばかりではなく、同じ日本人の敗残兵による略奪や暴行なども(直接的な描写は無いものの)観客にわかるように描いており、小林正樹監督の中立性がよく伝わります。

 

 今日子さん演じる慰安婦竜子は中国の民兵に惨殺され、玉緒さん演じる避難民少女は脱出行を共にしている桐原伍長(金子信雄)や匹田一等兵(清村耕次)達に騙されて暴行されてしまうとかですね。

 金子のおやっさん演じる桐原伍長は最終六部まで梶との確執が繋がっていくのですが、まぁ~!憎たらしくて、とてもイイです! やっぱりドラマでは悪役がイイと作品が一層輝きますね。金子のおやっさん、流石です!
 

 

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