前回「アップグレード」につづいて、 同じリー・ワネルが監督・脚本をつとめているSFサスペンス映画「透明人間 / THE INVISIBLE MAN」 を Amazon Prime にて鑑賞。
Staff
監督 … リー・ワネル
Directed by Leigh Whannell
脚本 … リー・ワネル
Screen Play by Leigh Whannell
原作 … H・G・ウェルズ
Novel … H.G. Wells
製作 … ジェイソン・ブラム、 カイリー・デュ・フレズネ
Produced by Jason Blum, Kylie Du Fresne
音楽 … ベンジャミン・ウォルフィッシュ
Music by Benjamin Wallfisch
撮影 … ステファン・ダスキオ
director of photography、Cinematography by Stefan Duscio
編集 … アンディ・キャニー
Film Editing by Andy Canny
Cast
セシリア・カシュ … エリザベス・モス
Cecilia Kass … Elisabeth Moss
恋人エイドリアンから精神的にも肉体的にもDVと束縛を受けているヒロイン
エイドリアン・グリフィン … オリヴァー・ジャクソン=コーエン
Adrian Griffin … Oliver Jackson-Cohen
天才的な光学研究者、資産家、セシリアを束縛し続けている
エミリー・カシュ … ハリエット・ダイアー
Emily Kass … Harriet Dyer
セシリアの妹
トム・グリフィン … マイケル・ドーマン
Tom Griffin … Michael Dorman
エイドリアンの弟で弁護士
ジェイムズ・レイニア … オルディス・ホッジ
James Lanier … Aldis Hodge
セシリアの妹エミリーの恋人、娘(シドニー)がいる
シドニー・レイニア … ストーム・リード
Sydney Lanier … Storm Reid
ジェイムズの娘
映画の開始は真っ暗なベッドルームから始まります。
ヒロインのセシリアは自分の胴にまわされた恋人の手を慎重に外し、男性を起こさないように豪邸から逃げ出そうとしていました。
われわれ観客はどうして彼女が恐怖に押しつぶされそうな風情で、ベッドに眠る男性を起こさないことだけを一大事として行動しているのか? とかなり長い間不審に思いながらヒロインの行動を眺めることになります。
邸内の各所に仕掛けられている監視カメラのセッティングを解除するセシリア
ヒロインは常備薬の抗不安剤が入った瓶をバッグに入れ、彼氏の所有物らしい研究室のような部屋に入ると、邸内各所に張り巡らされた監視カメラの動作をコンピュータを使って無効にします。
さらに彼女は着替えを済ますと、荷物をまとめたバックを手に豪邸の外壁を越えて駆け出すのでした。
やっと屋敷から離れた道まで出ると、闇の中に彼女が助けを依頼していたらしい妹が運転する車が到着し、乗り込んだセシリアは彼氏を眠らせるために使った薬の瓶を落としてしまいます。 そこに、彼氏が追いかけて来て自動車の窓ガラスをたたき割り、セシリアに窓から掴みかかるのですが、辛くも妹エミリーは車を発進させて、男を振り切ることができました。
ここまでの彼氏らしき男の振舞いと、 逃げ去る姉妹に向かって闇の中で 『セシリア、 許さないぞ!』 と響く彼の声を聞くことで、 ようやく我々は 『なぜヒロインが必死の形相で男のもとからの逃亡を計っていたのか』 ということが理解できるのです。
姉のセシリアに「彼にどんなことをされたの?」と問いかける妹のエミリー
妹エミリーはセシリアを彼の目の届かない安全な場所に送り届けました。
そこは、セシリアの彼、エイドリアンに住所を知られていないエミリーの恋人である刑事のジェームズの家でした。
それでもセシリアは常に不安にさいなまれるような姿でいて、2週間も一歩も家の外に出ることもできず怯えて日々を過ごすのでした。
そんなある日、エミリーがジェームズの家にやってきます。彼女は「エイドリアンが死んだというニュースを持って来たのですが、光学分野の天才科学者だったエイドリアンの自殺を報道する記事をエミリーから見せてもらったセシリアはその場に座り込んでしまいます。
セシリアは、ジェームズの娘、シドニーの明るさに心を慰められていましたが、支配欲の強いエイドリアンから常軌を逸した束縛を受けていたセシリアは、DV男のエイドリアンの死を聞いてもなかなか緊張を解くことはできません。
妹のエミリーやジェームズにも「食べる物から、服、そして言動や思考まで彼は指図したの」…と、自分がエイドリアンからどれほど強い束縛にあっていたかを告白します。
またエイドリアンは子供を欲しがっていたけれど、彼のもとから逃げ出したかったセシリアはこっそり避妊薬を服用していたことや、 それも最終的には有効な方法ではないと悟り、エイドリアンのもとから逃亡するためにエミリーに協力を求めたというこれまでのいきさつを語るのでした。
ささやかな安堵を覚えたヒロインのところへ、エイドリアンの弟で弁護士をしているトムから連絡が入ります。
トムは、エイドリアンがセシリアへ5百万ドルの遺産を残したこと告げます。 ただし、その遺産を受け取るには条件があって、 それは犯罪を犯さないという条件でした。 条件をのんで署名すれば10万ドルずつ毎月振り込まれると、セシリアそして彼女の付き添いで来たエミリーに告げるのでした。
弟のトムもちょっと気味の悪い弁護士なのだ・・・
セシリアは、面倒を見てくれていたジェームズに恩返しするため、大学進学を希望していたジェームズの娘・シドニーの為に信託預金を開設します。
そんな幸せを感じたのもつかの間、翌日からは昼夜問わず不気味な視線を感じるセシリアは恐怖の淵に沈んでいきます。
ここから映画は セシリアだけが見ている怪現象の描写が続きます。
・夜シドニーと一緒に寝ていると、掛けていたタオルケットが勝手にべッドの外へ引き出されます。
・目を覚ましたセシリアがタオルケットを引き上げようとすると、誰かが乗っているように布地の端が床に固定されて動きません。
・やがてタオルケットの上に足跡が浮かびセシリアに近づいてきます。
セシリアの叫びを聞いて部屋にやってきたジェームズに「今見た事」を説明するのですが、彼はセシリアに「落ち着くんだ」と言うばかり。
この辺り、我々観客の気持ちは、往年のテレビバラエティーのドリフターズ全員集合を見ながら『志村後ろ~オ!』と叫んでいる感じです。
で、お決まりのパターンではありますが、ヒロインのセシリアは 周囲から「おかしくなっている」 「くるっている」 というように見られる感じで描かれます。
翌日、働くために向かった就職面接の現場でセシリアはキャリアをアピールするために持って来たはずのデザイン原稿が鞄の中から消えていることに愕然とします。
オーナーの面接する その場でセシリアは昏倒してしまいます
面接の場で倒れたセシリアは病院へ搬送されて血液検査を澄ませたあと、ジェームズ宅へ戻ります。その彼女へ病院から電話連絡が入り「あなたが気絶した原因は抗不安薬の血中濃度が高かったからだ」と告げられます。
驚く彼女が洗面所に行くと、そこには彼女がエイドリアンのもとから逃げ出すときに落とした「抗不安薬」の瓶がおかれていました。 ここに至ってセシリアは「エイドリアンが生きている」ことを確信します。
セシリアはジェームズを伴ってトムを訪れ、エイドリアンに今私に対して行っている脅迫行動を止めるように主張するのでした。
薬瓶を見つけたセシリアは思い出したのです。 「自分から逃げようとしても必ず見つけ出す。直ぐ手の届く所まで近づいても、君には僕が見えない。でも、側に居ることが分かるようサインを残すよ」・・・と、かってエイドリアンがそう言っていたことを弁護士のトムに話します。
光学分野の先駆者だったエイドリアンは透明になる方法を発見したのだと続けるセシリアに対し、付き添いのジェームズも呆気にとられてしまいます。
実はエイドリアンは↑こんなインビジブル・スーツを完成させていました
あまりにもネタバレ祭りが過ぎるので ちょっとぼやかしますと、 このあと、セシリアの周りにいた数少ない協力者たちさえも つぎつぎと彼女のもとから引きはなされていきます。
・セシリアのコンピュータアドレスからエミリーのもとへ暴言・叱責のメールが届き、受け取ったエミリーは激怒します。
・落ち込むセシリアを慰めるシドニーの頬を突然何かが平手打ちします。
狂ってないのに狂ってるジャック・ニコルソンのような表情が秀逸なセシリア
セシリアが殴ったと勘違いしたシドニーが泣きだしたことから、部屋に駆けつけたジェームズまでがセシリアに家を出ていくように告げます。
父娘が部屋を出た後、 姿の見えない「悪者」がセシリアに暴力を振るいます。 このあたりの映画表現は興味深かったですが、 このあとは 見えない「悪者」にどんどん追い込まれていくセシリアが描かれ、 とうとう彼女は拘置所にて拘束されることになります。
誰一人 「エイドリアンが姿を消してわなを仕掛けている」 という彼女のことばを信じません。
透明人間と闘って必死に逃げようとするセシリアを看守たちが部屋に戻そうとします
セシリアの言葉を信じなかった看守たちも、見えない「悪者」に襲われます
セシリアの反撃で透明スーツが故障して姿を現す透明人間
セシリアが留置所に拘束されてから以降は、 見えない悪 「透明人間」 といかに彼女が闘い、最悪の状況から逆転劇を展開していくのかというところが 見どころになります。
凄く中途半端ですが、 あとは 興味を持たれた方がご覧になって結末を確かめてくださいませ。
執筆者への愛のムチを
頂けましたら幸甚です