ronin様のBLOG
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で紹介されていた 「ヤクザと家族 The Family」を今日の朝、やっと観ることができた。
スタッフ
監督 … 藤井道人
脚本 … 藤井道人
製作 … 佐藤順子、角田道明、岡本圭三
主題歌 … millenium parade 「FAMILIA」
キャスト
山本賢治 … 綾野剛(十代終わりに父を亡くし天涯孤独になった男)
細野竜太 … 市原隼人(賢治の仲間、のちに堅気になる)
大原幸平 … 二ノ宮隆太郎(賢治の仲間、ヒットマンの銃撃で命を落とす)
柴咲博 … 舘ひろし(柴咲組組長。自分の命を助けた賢治を息子の様に扱う)
工藤由香 … 尾野真千子(キャバクラで学費を稼ぐ女性。賢治が見初める)
木村愛子 … 寺島しのぶ(殺害された元柴咲組若頭の女房)
木村翼 … 磯村勇斗(愛子の一人息子、賢治に憧れ慕っている)
中村努 … 北村有起哉(柴咲組の若頭。真面目だが不器用)
竹田誠 … 菅田俊(柴咲の部下)
豊島徹也 … 康すおん(柴咲の部下)
加藤雅敏 … 豊原功補(侠葉会の若頭 )
川山礼二 … 駿河太郎(侠葉会若頭加藤の補佐)
大迫和彦 … 岩松了(裏で加藤たちとつながっている刑事)
冒頭、たった一人の肉親だった父の葬儀に向かう主人公 賢治の姿がとても印象的だった。
人生に疲れたのか、覚せい剤に手を出した父親は、薬物の過剰摂取で命を落としてしまった。
そんなこともあって、不良ながらも覚せい剤を憎む賢治は、覚せい剤の売人を襲撃し、ブツと売上金を奪って逃げるのでした。
ブツは海に投げ捨て、金だけを持って「馴染みの木村愛子の店」にやって来て「焼肉」を食べ始める賢治と仲間の竜太、幸平でした。
すると、その店の中に愛子の亡くなった亭主の親分だった柴咲組長が組員と一緒に入ってきて食事を始めます。 愛子の亭主は抗争の犠牲で命を落としており、柴咲組長は元の親として愛子の暮らしぶりを気にかけているのでした。
☆この店内に柴咲組の面々が入ってきてからというもの、彼らをにらみ続ける賢治の姿が印象的です。
ヤクの売人を襲った際の賢治のしざまによって、彼が天涯孤独の身に降りかかる「ある種の恐怖」を、「男一匹、俺は山本賢治だ」と強烈な自尊心に身を浸すことで 踏ん張って耐えていることを想像させますが、それにしても尖がりすぎてます。 思い切り尖がった綾野剛の顔がいいです。
さらに店内に柴咲組長の命を狙うヒットマンたちが入ってくるのですが、危機一髪の柴咲の命を賢治が救うことになってしまいます。 翌日 賢治は柴咲組の中村によって柴咲組の事務所に連れていかれ、彼の天涯孤独の身の上を知った組長から「うちで働かないか」と誘われ、親分の名刺を渡されるのでした。
この名刺を受け取った事と、そのすぐあとに起こる「覚せい剤の売人を襲った事への報復(拉致と暴行)」事件から、 天涯孤独の賢治の人生が 血のつながらない「家族」の中に流れ込んでいきます。
仲間の幸平たちから侠葉会が襲撃してくるとの連絡を受ける賢治
追っ手を振り切って街中を駆ける賢治。綾野剛の脚力は流石です!
路地を抜けて助かるか?と思ったところをヤクザの車で跳ね飛ばされる賢治
賢治、竜太、幸平の3人は結局 侠葉会の若頭の加藤や補佐の川山に拉致され、半死半生の目に会わされます。 海に投げ捨てた覚せい剤の代金代わりに臓器を頂くと、 香港マフィアの船に乗せられる直前、偶然ポケットに入っていた「柴咲組長の名刺」が3人の命を助け、傷だらけの賢治は柴咲組事務所に送り返されることになります。
「賢坊」と、どこまでも穏やかに語り掛けてくる柴咲組長
自衛の為に尖がっていた賢治の張りつめた心が解きほぐされたときの泣き姿が印象的
賢治が柴咲組長に「親」となってもらうための 盃事のシーンはささやかでしたが、昔の東映やくざ映画のかずあるシーンを思い出しました。 現在のようなコンプライアンスがどうたらこうたら言われる時代には通用しないのでしょうが、 「芸能」などは「もともとやくざな商売」なのです。 ラジオやテレビなどが現れるまで、 演芸や相撲などの興行というものは、土地・土地の親分さんの庇護がなければ成り立たないものでしたし、稼業として興行主の役目を果たしていた親分さんもいました。
ですから、東映ヤクザ映画の全盛期には、 賭場でのしきたりや、ボンの扱い方、親子のかための盃事や、襲名儀式の運び方などを俳優たちに指導するために、本職のやくざさんがスタジオにはいっていたそうですね。
そんなことを舘ひろしさんの親と 綾野剛さんの子の「一家」の儀式を観て思い出しました。
ヤクザとしての貫禄をつけていく賢治でしたが、 シマを巡る争いから柴咲組長の乗る自動車がヒットマンにより襲撃され、巻き添えを受けて賢治の古い仲間だった幸平が命を落とします。
仲間の仇を取るため、そして柴咲組を守るために賢治は侠葉会の川山を殺害し、15年の刑を受けて刑務所に入ります。
もっとも、川山に最初にドスを当てたのは賢治の兄貴分、柴咲組若頭の中村でしたが、「組を守るには兄貴でないと」と、賢治が同じドスで川山にとどめを刺して中村を逃がしたんですね。
このシーンなんかは、北島サブちゃんの歌で1965年にリリースされた「兄弟仁義」の歌詞を思い出しました。
♪ 俺の目を見ろ なんにも言うな 男同士の腹の内
ひとりくらいは こういう馬鹿が 居なきゃぁ 世間の目は醒めぬ ♪
(兄弟仁義はサブちゃんも出演した東映やくざ映画にもなっています。映画も唄も大変にヒットしましたが、そんな歌だからさすがに当時でもNHK紅白歌合戦で歌われることはありませんでした)
さて、川山を殺害した直後に訪ねたホステスの由香のアパートで過ごした一夜が、賢治がずっと持つことのできなかった家族の種を植えることになり、それが最終章の現在につながってきます。
出所後、役所で働く由香の前に現れた賢治は自分の娘の存在を知ることに
組から除籍してもらい、家族を持つささやかな幸せを手に入れかけた賢治でしたが
愛子の息子 翼は父親を殺したのが加藤だと気づきます
翼には自分の様に手を汚させまいとする賢治。
賢治が翼を抱きしめる その手の雰囲気が、 柴咲組長が賢治を抱いた手と似ているように感じました。
映画の中では ホント いろいろ起こるのですが、 ラストで 賢治の娘と翼が出会うことになります。全く血のつながりは無いのに、 兄と妹が出会ったように感じました。
レビューにも 作品紹介にもなって居なくて すみません。
ただ、そんな文章になっていることが、 私がこの映画を好きになってしまった証です。



