『坂道のアポロン (2018年 日本)』監督:三木孝浩 1時間59分 | 日本と芸能事が大好きな Ameyuje のブログ

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米合衆国領土グアム島と仏領ポリネシアのタヒチ島とボラボラ島しか訪れた他国無し。比較対象が少ないのに「僕に一番合うのは日本」と思う。反日国に侮辱されても毅然とした態度をとらない現在の母国には「いやんなっちゃうな~」と立腹するけど、やっぱり日本が大好き。

 ★ セッション!SESSION!少年二人の目くばせが羨ましいぜビックリマーク

 

 

 この作品は昨年秋にネット配信で鑑賞しました。
 この映画の原作は小玉ユキ女史の連載漫画だそうで、原作をご存じの方々には「実写化された映画の方では、登場人物たちの成長過程の作り込みや描き方が少し甘い」なんてご意見もあるようですが、 映画しか見ていない私には十分満足いく作品でした。

 作者の小玉女史がインタビューに答えたところでは、ドラマの重要なシーンの舞台であるレコード屋は、小玉女史のお母さま方のおじい様が経営されていらっしゃった、レコード屋と楽器屋さんが一緒になった店舗のイメージなんだそうです。

 

 舞台が1966年、昭和40年代に入ったばかりの軍港の街 佐世保というのがまた魅力的でした。オープニングシーンで、メインテーマとなるジャズピアノの旋律とともに映る過去の景色が嬉しくてたまらない私が居ました。

 

 

 この映画が描く時代に、6歳くらいだった私は、神戸市兵庫区東出町という下町の海岸壁のほど近くに暮らしていましたので、この映画の景色から潮風の匂いの記憶が脳裏によみがえって、甘酸っぱい懐かしさに胸が締めつけられました。

 

 

 まず映画で気に入ったのは、脇役陣の渋さです。
 現実にキャリアの長いベーシストでもいらっしゃる中村梅雀さんにウッドベースをちょいと弾かせるシーンを設定するなんて、三木孝浩監督なかなか粋ですなぁ~…なんて感じたり、お母さま譲りの洒落たピアニストでもあるディーン・フジオカさんにはトランペッター役をさせるんですかぁ~?…と驚かされたり。
 


 とても、心くすぐられるキャスティングでした。
 

 ところで、MusicMiniDiscさえもご存じない現在の若者の皆さま方には、主人公たちの重要な演奏舞台となる「ムカエレコード店」が持つ「当時の輝かしさ」は想像を絶することでしょうね。

 

 

 第一「レコード盤」などという「特別な収集家しか所持しない希少品」となってしまったメディアの販売店舗なんて「シロサイなみの絶滅危惧種」ですからね、街中で見る店舗がまさに絶滅していますしね。

 

 さらに言えば、自分のお店の地下にライブスペースまで作ってしまうほどジャズに入れあげている「ムカエレコード」の店主 勉(演者:中村梅雀さん)の魂の沸騰度合いや、一般の市井人からは飛びぬけている「律子(演者:小松菜奈さん)や千太郎(演者:中川大志さん)のJazz音楽に対するハイカラさ」が実感として理解しづらいことでしょう。

 

 千太郎がアート・ブレイキーを真似てジャズドラムを叩いている、この当時、故村田英雄さん(皆さん、ご存じでしょうか? 昔の歌謡界では逸話の多い大御所で、レストランでステーキの焼き方を聞かれた際に、"レアで"とか"ミディアムで"とかじゃなくて 『ガスで焼いてくれ!』 と注文されたとか…) が歌って、当時150万枚を売り上げたという、日本歌謡史に輝く大ヒット曲「王将」がリリースされてから、まだ5年しかたっていないような時代なんですね。
 


 ちなみに1961年という年は、現在の田辺エージェンシー代表取締役社長でいらっしゃる田辺昭知さんがグループサウンズ「ザ・スパイダース」を結成した年でもあります。

 

The Spiders

後列  加藤充 大野克夫 かまやつひろし 井上孝之
中央  田辺昭知

前列  井上順      堺正章

 

 東高の学園祭シーンでは千太郎がザ・スパイダース風の(というかビートルズやモンキーズ風の)衣装を着てドラムを叩いています。

 なんにせよ、1966年ならば、日本国の市井の人々、うちの家族親族なども、まだまだ「歌謡曲・演歌」にどっぷり浸かっている時代でした。
 

 

 さらに言えば、主人公の薫(演者:知念侑李さん)が弾いた「ピアノ」は今でも高額な楽器の代表です。だからピアノに親しんでいる薫は「エエとこのボンボン」的な設定でした。 また、ピアノほどではないにせよ、街の普通の労働者にとってドラムスセットやトランペットの高価さは言わずもがなであります。

 思えば3年前に他界した私の父は、この映画の年代だと34歳、子供心に父が家で晩酌した後に安物のガットギターを取り出して古賀メロディーなどを弾きだす姿を嬉しく観ていたことなんかも…、思い出させて貰えました。

 私にとって懐かしい そんな時代風景の中を、現代の若者の代表である、知念侑李さん、中川大志さん、小松菜奈さん達が「ちゃんと生きて」くれました。

 

 

 お三方には、映画の主人公たちの生活感や暮らしの背景は「皮膚感覚としてわかりづらかっただろうなぁ」と推察するのですが、演出が良かったおかげで、当時を幼児として生きた私の心は3人の学生主人公達にちゃんと寄り添うことができました。

 手作り感満載の文化祭の舞台で、電源トラブルが発生したあと、薫(知念さん)と千太郎(中川さん)が繰り広げる「♪Moanin' 」のセッション シーンは最高 グッド! でした。

 セッションはラテン語で「座っていること」の意味を語源としているらしいですが、そこから「集う」、さらには「授業(時間)」という意味まであるそうですね。

 本作品の中で、主人公の少年二人が ジャズを通して人生の何事かを「学んだ」という意味でも 「セッション」 がキーワードの映画といえるでしょうか。

 少年二人が目で合図しあってアドリブを交わすシーンを観た私は「こんな一瞬を持てた二人」を 無茶苦茶羨ましく思ってしまいました (フィクションなのにね~ にやり)。

 今こそセッションをすべき若者の皆さん、 どうぞ この映画をご覧ください! 

※二人が演奏した 「♪Moanin' 」の本家、アート・ブレイキーのドラムです。

 

 

 

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