和銅三年(710年)に都が大和平野北端の平城京に遷されてから三年後、古事記の成った翌年にあたる和銅六年五月二日(713年)、一つの詔が下された。

 

機内七道諸国、郡郷の名に好字を著(つ)けよ。其の郡内に生ずる所の銀銅彩色草木禽獣魚虫等の物、具(つぶさ)に色目を録(しる)し、及(また)土地沃瑃、山川原野の名号の所由、又古老相伝ふる旧聞異事、史籍に載せて言上せよ。

(『続日本紀』原文は漢文)

 

これが世にいわれる『風土記』撰進の詔であり、この詔を承(う)けてさっそく各国毎に『風土記』の編纂が行われたことと思われる。ところが不幸なことに、それらの『風土記』のうち今日にまでその姿を留め得たものは、わずかに五カ国にすぎない。ここに採り上げた『常陸国風土記』は、その五カ国のうちの一つである。

 

以上、は講談社学術文庫の『常陸国風土記』のまえがきの前半部分です。

 

 

本日は旧暦の五月二日となりますので、1314年前のこの時期に風土記撰進の詔は下されたわけです。元明天皇の時代の詔です。

 

この風土記のうち、現存するものは『出雲国風土記』がほぼ完全なもの、『播磨国風土記』『肥前国風土記』『常陸国風土記』『豊後国風土記』が一部欠落した状態なもので残されています。またそれ以外の国の風土記も一部が、後世の書物に引用されて残されているものもあります。

 

出雲とは現在の島根のエリア、播磨とは現在の兵庫エリア、肥前とは現在の佐賀・長崎エリア、常陸とは現在の茨城エリア、そして豊後とは現在の大分エリアです。

 

 

 

 

播磨国風土記に記された日本酒の起源↓

 

 

私が挑戦した風土記は未だに常陸国風土記だけなのですが、あいもかわらず読み終わっておりません。以前は、神社検定で次に取り上げる『神話のおへそ』テキストは『風土記』だと思っていたので、ここ何年も新しく取り上げるテキストがなく、意欲もなくなったように思える神社検定にがっかりしています。神社検定のテキストは国史を知るうえで凄くわかりやすいテキストで気に入っていたからです。実は神社検定のテキストはとてもおいしいテキストのシリーズです。

 

きっと新しいテキストを作るにはその分お金もかかるだろうし、神社検定も最近頭打ちのようなので新しいテキストを作れないのかもしれない・・・とは察しているのですけれども。

 

ところでなぜ風土記のうち『常陸国風土記』に挑戦したのかといえば、それはもちろん私が下野国エリア出身だからです。つまり風土記の中で一番近いエリアが常陸の国となります。残念なことに失われた風土記の中にも下野国の名は見当たりません。いずれにしても、上記にあるように、残されている風土記の大部分が西の方面ですから、やはり最初にトライするのは常陸国となるのが自然な流れとなります。

 

またこの本を購入した当時、漫画の『ノラガミ』を読んでいたのもあります。この主人公は夜卜神であり、それと似た名前の夜刀神が登場する神話が常陸国風土記でした。ただし、漫画の夜卜神は、名前は似ていても全く違う神様です。なぜ違う神様なのかはネタバレとなるのでここには書きませんが、この名前の設定などもとても面白い漫画です。

 

ノラガミ最終刊↓

 

 

この風土記には、記紀神話などと違うことなどが書かれており、同時期に編纂された古事記や日本書紀等のように明確な政治的意図をもって編纂されていない分、生きた神話や伝説、また習俗・社会などが残されており貴重な資料であるといわれています。そうした中には、例えば記紀では天皇になっていない人物が天皇と記されていたりすることがあげられ、常陸国風土記では日本武尊が天皇として書かれています。

 

生きた資料であるというのであれば、それが真実なのかもしれない、と思いますよね。そして、そうしたものがそのまま遺されている、つまり焚書坑儒ではありませんが、消されていないというのは、日本の歴史のいい面である、ということが理解しやすいのもこうした古典のいいところです。

 

なぜ、神社検定でとりあげないのか、本当に不思議です。

 

それにしても、なぜ下野国の風土記はなかったのか。というのも、歴史を良く知ると、上野国、下野国、あるいは武蔵野国などは縄文時代からの遺跡など古いものが多いエリアだとわかってきます。ところが、そのいずれの国の風土記も最初からないのです。つまり、それはやはり古い国であるからこそ、あえてそうした物を出さなかった、ということも考えられるのかもしれない、と漠然と考えてます(研究者ではないのでいい加減なものです・・・)。

 

『縄文神社』という本がありますが、これは縄文時代からある神社、まあ当時は神社という名前などなかったわけですが、その当時から祈られていた場としての神社を埼玉、東京、千葉、神奈川で取材した本で、とても面白い本です。私が子供の頃、歴史が関西に集中していてずるい、などと歴史を知らずに思っていたことを考えると、実は日本中にこうした遺跡などがあるわけですから、本当に日本という国は古い国であるということがこうした神社に行くだけでも実感できます。だからこそ、こうした本も登場するわけですから。筆者が埼玉出身なのでこうした取材先になったようで、続編(昨年12月発売)も関東甲信編となっています。

 

 

 

こうしたことを知れば知るほど、日本全国、隅々まで凄い国!と思ってどんどん地方も活性化させていく活力になるのではないか?と思います。つまり、経済などだけでなく歴史の面からも地方を活性化させることが経済などでの活性化にもつながるのではないか、と。

 

そしてこれがまさしく常陸国出身の三浦春馬さんがめざした『日本製』の精神ではないかとも考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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