先月末から公開されているハリウッドドラマ「ショウグン」の評判が物凄くいいようです。
 
本作は有名なハリウッド映画の脚本家ジェームズ・クラベルが書いたベストセラー小説『将軍』をドラマ化したもので、1980年にドラマ化された際には、その脚本も担当しています。私が子供の頃のことでしたが、当時も凄く話題になっており、その時は徳川家康がモデルの将軍役を三船敏郎さん、三浦按針がモデルの役をリチャード・チェンバレン、細川ガラシャがモデルのマリコ役を島田陽子さんが演じていました。私は未だにこれを見ていませんが、当時話題になりすぎて、今回の「ショーグン」のようにたくさんの映像を見てきました。現在のように動画などなかった時代に、記憶に残るほどこのドラマの映像が流れていたことがその人気を物語っています。そして、たぶん私はこの時初めて、三浦按針とヤン・ヨーステンの存在を知りました。西洋人で、武士になった人がいたんだ、と。
 

この時は、原作通りに主役は三浦按針ことブラックソーン=リチャード・チェンバレンです。私はリチャード・チェンバレンが出演していた映画「三銃士」をテレビで見て気に入って、原作の「三銃士」シリーズも全10巻探して読みました。映画がきっかけで原作を読むということがたくさんありました。

 

ジェームズ・クラベルは多くの映像化作品の脚本にかかわっており、有名なものでは日本でも大ヒットした「大脱走」「フライ」などがあります。そんな脚本家がなぜ「将軍」のような小説を書いたのかといえば、娘さんの教科書にウィリアム・アダムズのことが書かれていたことから興味をひかれたようですが、もともと第二次世界大戦でマレー半島に従軍し、日本軍の戦争捕虜になったことから、その後日本やアジアに対しての興味があったのかもしれません。本作は、『アジアン・サーガ』シリーズ小説の代表作で、他にもドラマ化されたものがあるようです。
 
『将軍』は、日本に漂着したウィリアム・アダムズ(後の三浦按針)をモデルとした主人公が、徳川家康、そして細川ガラシャを筆頭にモデルとされた歴史上の人物たちと繰り広げる歴史ドラマで、歴史上の人物をモデルとした物語であるわけですから、史実とは違いますが史実をなぞった物語です。私はこうした、ほぼ歴史上の人物と歴史をなぞる物語でありながら、モデル化して別人の名前として書くスタイルというのがわからなくて(まあパロディ化したりして似せた名前で書かれたものなどはあるけれども)、最初はわけがわからなくて、この物語に混乱したことも覚えています。つまり、吉井虎長って誰?そんな人いたっけ?まり子?戸田まり子って現代人みたいな名前の人が戦国時代にいたの?なんて最初思ったのです。多分そうしたスタイルが、歴史好きとしては気に入らなくて原作もドラマにも興味をひかれなくて見てなかったのです。このドラマのあらすじを読めば、日本人ならすぐに史実とずいぶん違うことがすぐにわかります。つまり、武士になった西洋人がいたということで、その人物が大きく歴史にかかわったということを想像して書かれたのが本書で、だからこそモデルとなった人物の名前を変えて書いたということなのでしょう。まあでも歴史小説といえば、そういうものなんですよね、考えてみたら。
 
しかし、今回のドラマ化で西洋人目線で書かれた物語であることの気づきがあると、出演者が何人かおっしゃっていたりするので、ちょっと興味がわいてきました。しかも公開後は1980年版を超えるかというような高評価です。
 
私は有料動画チャンネルはいずれも登録していないので見ていないのですが、子供のころからの真田広之ファンでもあったので、この高評価には見たくてたまらなくなっています。

 

昨年の11月から話題になり公開が待たれていましたが、最初にこの映像を見た時から、なんか良さそうだなと思っていたんですよね。だけど、あの「将軍」だぞ、とも思っていました。

 

公開されてから知りましたが、ハリウッドが描くなんちゃって日本や、日系人でもないアジア系の俳優が演じる日本人への違和感から、真田さんはタイトルロールの将軍役を引き受けるにあたって日本人キャストと日本人スタッフを入れ、セリフも日本語で行うことを条件にしていたことが話題となっています。1980年版のキャストをみると、そうしたことが当たり前に行われていたようですが、たぶんこれはほとんどが日本で撮影されていたんだろうと思います。しかし、近年日本を舞台にした映画でも海外で撮影されることから、真田さんはより一層日本人キャストとクルーにこだわったのではないかと思います。リメイクをするのにあたって、そこで1980年版に負けてしまっては意味がないからです。また、昔に比べれば、日本や日本文化へのハリウッドを含む世界の理解度が深まっていることが、より一層日本をきちんと描くことの後押しをしたのではないかとも思います。

これは公開後に、ドラマの中のシーンが話題になったもの。

 

そしてこの話を知ってから、ふと考えたのが今放映されているドラマ「大奥」の不評の件です。NHK版の漫画が原作の男女逆転版「大奥」が大好評だったからか、フジがかって人気だった「大奥」を復活させたわけですが、化粧も言葉遣いもまた衣装までもを現代風にしてしまったことや、大奥であるはずの設定からはずれたことの多さが、不評の一因とも言われています。そういうことは、予告を見ただけでも見て取れますよね。それでは、予告を見ただけでこういう歴史ものが好きな層にそっぽを向かれてしまいます。他にも要因はあるかと思いますが、時代物の基本は重要な要素だと思うのです。

 

日本で作製されるものでさえ、歴史ものには所作や殺陣の指導が不可欠であり、衣装ほかの着付けや時代考証などが重要ですから、海外作製物の場合は例えば「ラストサムライ」などは頑張って作られたけれども、それでも日本人からするとなんちゃって侍ものでそれを楽しんだみたいなところがありました。そして「47RONIN」などは、期待していたしキアヌ・リーブスのファンだったから見るつもりだったんですけれども、予告を見て見る気になれませんでした。その両方に出演してきた真田さんとしては、もともと多くの時代物に出演してきたわけですから、そうしたハリウッドを変えていきたい、という思いがより強くあって、ハリウッドで日本人俳優として実績を積んできたことと、日本での実績が結晶したのが本作なんだろうなあ、と考えています。

 

真田さんが、王道を行くことでかえって世界中の人に興味を持ってもらえると冒頭で語っている対談

 

また、日本人キャストにこだわったことで、アンナ・サワイ他の現地で活躍している日系の俳優にも陽の目があてられたわけなんだろうなあとも思います。以前から、アジア系の俳優枠は小さくて、日本人の役でもチャイナ系や韓国系の俳優に取られてしまうことが多いということは、海外に行っている俳優のインタビューによく出てきています。

 

そういえば映画化に期待していた「さゆり」のキャストを知った時唖然としたものでしたが、映画を見たら着物をガウンのように着たり、所作を頑張ったんだろうけれどもどうしても感じる違和感が半端なかったのが中華系の女優陣でした。確か主要キャストで日本人女優は桃井かおりさんしかいなかったのです。そしてやはり日本が舞台なのに、中華風になっている箇所が多かったと記憶しています。これは、ハリウッド資本へのチャイナマネーの影響の強さも影響していました。そして、最近はこのチャイナマネーとの蜜月が、サイレントインベージョンが知られることによって終わってきているタイミングであったことも、真田さんにはいいタイミングだったのかもしれません。なにしろお金で動く世界です。

 

子役は日本人でした。

 

そしてこうした真田さんの頑張りを知れば知るほどに、この時期に予告編が流れている「陰陽師0」の衣装の残念さに目がいってしまいます。これもワーナーブラザーズ製作で人気俳優を起用しており、みんな大好きな陰陽師なのに、予告編を見ただけで残念と思ってしまうのでは、期待できないのではないか、と。風景映像などのSFXにも違和感がありまくりだったので、大丈夫か?と感じている映画です。

 

 

今は世界中の情報が、瞬時に得られる時代ですから、より一層本物が求められているかと思います。だからこそ、作り手側にも本物を、あるいは本物に近いものが求められているのではないかと。世界中で大ヒットしている「ゴジラ--1.0」も、そうでしょう。

 

この「ショウグン」のおかげで、今後の日本物の作品の可能性が広がったかもしれない、と思うと真田さんには感謝しかありません。そして、タイミングが違えば「陰陽師0」ももっと日本を追求できた作品にできたのかもしれないとも考えてしまいます。予告編しか観ていなくても、観たいものと観たくないものに分かれる、そんな最初の差は大きいと思うのです。

 

そういえば「陰陽師」に真田さんでてました。面白かった。

 

 

 

 

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