先日、本屋で復刻版教科書シリーズの棚に行って見たらあったのが礼法の教科書で、パラパラめくってその内容に驚いて即買いしてきました。

 

『[復刻版]國民礼法』※礼はネに豊、旧書体が出せませんでした。

 

これを読むと、私たちが社会に出てから、こんな時はどうすればいいのか?と未だに慌ててしまうようなことにまで言及していることに驚かされます。これ1冊を持っていれば日本人として知っておくべき基本は網羅できるのです。今からでも、一家に一冊置いてほしい本です。

 

これを読んで思い出したのが、私の母校であった小学校の百年記念で出された冊子に書かれた明治時代の教科書です。当時まだ四年制だった頃、学校を卒業しても自ら学べるような国語の基本が教えられ、その教材には実社会で使用できる手紙の書き方などがありました。そうした時代を経て昭和の時代にできた教科書がこの礼法の教科書だったのかもしれません。

 

昔の日本映画などを見ると、人々が物凄く丁寧で礼儀正しいですし、幕末明治以前の来日した外国人たちが、日本人の礼儀正しさに驚いたと書かれたものがたくさんありますが、これは教育の賜物だったんですね。幕末明治以前は、武士社会であったため武士の躾を庶民も真似するところもあったかと思います。そして明治以降は、武士から学校の先生に転じることも多かった時代です。そうした人達が教育を担って試行錯誤していきついたであろう教科書に日本人として知っておくべき礼法が織り込まれたのがこの教科書だったのでしょう。

 

まだ、この時代は小学校卒業後、全員が中学に進学するのが当たり前の時代ではありませんでした。だからこそ、中学生になる前に、ここまで教える必要があったのです。そうした子供でもこの教科書をもっていれば、社会に出ても困らない基本的なことを確認できたわけです。

 

この教科書は昭和16年4月に刊行されたものだそうですから、昭和20年8月の終戦までの4年間の教科書です。この礼法は修身の授業の時に使用されたそうですが、GHQにより修身の授業がなくなったため、この礼法についても教えられることがなくなってしまい、多くの日本人は礼法を学ぶ機会をなくしてしまいました。それから80年近い年月を経ています。

 

今からでも日本人としての礼法を取り戻していきたいものです。

 

本書末尾にある説明書きより

「国民礼法」について

本書は昭和16年4月に発行された国民学校初等科教科書『国民礼法』(初等科第三年~第六学年用)を復刊したものである。当時の義務教育である国民学校初等科を卒業した児童が、社会に出て困ることのないよう「礼法」をしっかり学ぶことになっていた。(一、二年の教科書は『コドモノシツケ』)。その内容は「日常生活の心掛け」「挨拶・言葉遣い」「立ち居振る舞い」「公衆道徳」「接客・訪問」「冠婚葬祭・贈答」「手紙」など、家庭、学校、社会生活における礼法から、神社、皇室、国家に対する礼法まで、日常の様々な状況が想定されている。

『国民礼法』の授業は「修身」の時間に行われたが、終戦後、GHQの命令により「修身」が消滅し、『国民礼法』も消えることになる。その結果戦後の子供たちが礼法を学ぶ機会が失われてしまった。

『国民礼法』は武家の礼法である小笠原流小笠礼法を取り入れた正当なものであるが、それほど堅苦しいものではない事、小学生向けの比較的優しい記述であること、戦後教育が忌避してきた「皇室・神社・国旗・国歌」に対する礼法を新鮮な感覚で学べることなど、令和の時代の日本人にとっても実に有用な礼儀作法の参考書として通用するだろう。

 

目次を見ると内容がわかりやすいと思います↓

初等科第三学年
第一 学校の記念日
第二 人と行きあった時の礼
第三 お友だち
第四 おつかい
第五 きまりよく
第六 お行儀
第七 おじぎの仕方
第八 お客様のおむかい
第九  お客様のお見送り
第十  祝日
第十一 国旗
第十二 神社にたいする礼法
第十三 乗物についての心え
第十四 公衆にたいする心え
第十五 近所にたいする心え

初等科第四学年
第一 行幸・還幸・行啓・還啓
第二 皇室
第三 神社の参拝
第四 焼香と玉ぐし
第五 きりつただしい生活
第六 しせい
第七 まじめな心がけ
第八 すわり方と立ち方
第九 戸・しょうじのあけたて
第十  物の進め方・受け方
第十一 集会の心え
第十二 公衆に対する心え
第十三 お客遊び
第十四 行幸啓を拝し奉る礼法
第十五 国歌に対する礼法
第十六 言語応対の心え
第十七 手紙の書き方
第十八 家のしきたりと先祖の祭

初等科第五学年
第一 御紋章
第二 隣組
第三 乗物
第四 戸・障子・ふすま・扉の開閉
第五 外国人に対する心得
第六 集会に関する心得
第七 公衆衛生の心得
第八 貯蓄報国
第九  訪問
第十  応接
第十一 茶菓
第十二 祝賀・見舞
第十三 物の受渡し
第十四 贈物
第十五 贈物の包み方
第十六 通信

初等科第六学年
第一 礼儀作法と日常の心得
第二 服装
第三 授受・進撤
第四 敬礼
第五 日本料理の食事作法
第六 西洋料理の食卓作法
第七 招待
第八 応招
第九  祝賀・告送別・弔慰
第十  贈物
第十一 贈物の包装
第十二 贈答の心得
第十三 水引の結び方
第十四 公衆礼法
第十五 祝祭日及び家例祭忌
 

五年生の第八 貯蓄報国では、「ぜいたくは敵である」という言葉が出てきます。この言葉、戦前・戦中を象徴するような言葉のように思えるのですが、改めてみてみればこれって基本的なことなんですよね。例えば経済が冷え込んでいて節約本がたくさんある現在、この章の内容をみて違和感を感じる人はいないと思うのです。また、こうした時代を感じさせる言葉は、当時の緊急性を改めて今学び取れるという意味でもいいのではないか、と私は考えています。

 

先ごろ日本中を沸かせたワールドベースボールクラシックで、日本人の礼儀正しさや清潔さが世界中で話題になりましたし、その後アメリカに戻った大谷翔平さんがイチローさんに挨拶したその様だけでも海外では日本的だと話題になったりします。

 

 

つまるところ、結局、礼節こそが最強の武器となるということなのです。そしてだからこそ、こうしたことが戦後の日本から排除されてしまったということを物語っています。

 

そしてここ10年ぐらいの間に変に浸透してしまったお腹に手を当ててお辞儀をするお腹痛いスタイルですが、あれもこの本を知っていれば浸透できるはずがなかったはずなんです。大谷さんは上記サムネでもわかる通り、両手を下におろした日本のお辞儀をされています。お腹痛いスタイルは、いい加減止めてもらいたいものだと、改めて考えたのでした。

 

 

 

 

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