古典の解説書などは明治大正時代生まれの方のものを見つけられたらそれを選ぶことにしています。

 

この写真の「聖徳太子と憲法十七条」は、ずいぶん前に憲法十七条の本を本屋で探していた時にみつけて作者の解説から選んだものです。東京大学の名誉教授だった方なのですが、今、ふとこの作者の名前を検索したところ、なんと花山信勝さんとは巣鴨プリズンにていわゆるA級戦犯の教誨師だった方で驚きました。石川県の宗林寺の住職の長男として生まれ、東大在学中に21歳で住職になられた方でした。その後、英、独、仏に留学、印度仏蹟を踏査し、日大、洋大、国学院大、東京文理大、九州大、東大各講師及び教授を歴任して昭和14年東大助教授、昭和21年同教授となり、34年定年で退官。この間三十六歳で帝国学士院恩賜賞を受け、四十三歳で文学博士、日本印度学仏教学会理事、日本仏教学会理事等を兼ねてらした経歴から教誨師に選ばれたのではないでしょうか。日本人で唯一処刑に立ち会われた方で、「平和の発見」という本も出されています。たぶん住職であったことから聖徳太子の研究もされていたようで、他にも聖徳太子や仏教についての御著書がありました。

 

さて、この本ですが、「まえがき」には聖徳太子が「何れの世、何れの人か、是の法を貴ばざる」とどんな時代になっても、いかなる人間でもすべてが等しく敬わねばならぬ「法」であると示されたとあります。

 

また「十七条憲法」は、我が国初の成文憲法であり、その後の近江・大宝・養老の律令をはじめ、中世及び近世の武家諸法度に至るまで久しく影響を及ぼした極めて重要な憲法である、と書かれています。

 

さらにいえば、明治になって「大日本国憲法」を作成するにあたっては井上毅が参考にし、また「五か条の御誓文」、「教育勅語」の内容からもその影響が今でも確認できるものです。

 

先日竹田恒泰氏が出版された「日本の民主主義はなぜ世界一長く続いているのか」にも十七条憲法について言及されている箇所がありますが、日本の叡智の結晶として十七条憲法は日本がある限り、日本人が学ぶべきものとしてあるものではないかと思います。

 

十七条憲法全体に貫かれている精神は「和」の精神です。最初の第一条に始まり、「和」の言葉が出てくるのは十三条の2か所のみですが、全体を読めば「和の心」が全体を通してあることが分かります。

 

この十七条憲法ができた背景には、こうした「和」からかけ離れた時代背景があったと言う人がいますが、そうした中でこうした知恵が生まれ、それを長く伝えてきた我が国の歴史が重要だと思います。今ではきちんと教えられなくなって久しい日本ではありますが、それでも長く伝えてきたことは、教育として教えられなくなってもDNAのように残っており東日本大震災のような困難なことがことが起きた時に顕在化されるのですが、それも私達にとっては普通のことであるのに、世界中の人から奇跡としてみられるという現象が起きたことは記憶としてまだ新しいことです。

 

つまりそれほど「和の心」というのは、世界からするとまれな存在だということです。

 

しかし、そうはいっても潜在的に「和の心」があっても、通常の日本に今「和の心」はあるのだろうか?と疑問に感じています。

 

特にそれを感じることが、日本人がいくら働いても豊かになれないしくみになっていることです。それは、中間搾取の構造になっているからだと思います。

 

1か月前話題になっていたツィート。

 

ここ数年、人材派遣会社のマージン率を調べていた方のブログ↓

人材派遣業界のマージン率とそのデータ 2018年版ザ・ファイナル

 

 

そしてコンビニ店の問題も最近話題になりました。コンビニに限らず西洋型フランチャイズ店の経営は皆同じなのかもしれません。

 

しかしこれは、コンビニだけではなく例えば日本中にある学習塾の公文の先生を友人がやっていましたが、その経営には驚愕したものです。始めて数年の友人の給料は月額5万以下でした。場所が地方で生徒数が少ないこともありましたが、そのような場所でしたら地域で公文を制限すればいいと思うのですが、研修には同地域から何人も来ていて結局は生徒の奪い合いになるということでした。友人はシングルマザーで二人の子供がいましたから、アルバイトを2つや場合によって3つ掛け持ちしてやっと暮らしており、生徒が一定数に落ち着いてからも人数が少ないので結局アルバイトの掛け持ちは続けたまま今は公文を止めています。その塾の収入と、公文への支払いを初めとする経費を考えると地方で生徒のいない場所での公文経営はやらないほうがいいです。(それを調べずに始めてしまった友人ですが、後から後悔していました。)

 

上記はほんの一部ですが、こうしたことが多々今の日本に蔓延しているから、働いても働いても豊かな生活ができなくなっているのが日本の現状ではないかと思います。

 

しかしこうしたことは、人々の不満を生みますし、そうした中で「和の心」は生まれません。十七条憲法には、そうした不満や妬みなどを生まないためにも、むさぼりや欲を捨て、また功過を察して賞罰を必ず与えよ、とありますが、人間の心理まで説明されています。

 

だからこそ、「十七条憲法」を日本人全員がしっかり学ぶこと、学びなおすことで世の中が少しずつ変わっていくのではないかと考えています。

 

そして、「日本の民主主義はなぜ世界で一番が長く続いているのか」においても、「和の精神」が日本の民主主義を本物に変えてくれるだろうとまとめられています。そうした「和」を知るのに一番最適なのは十七条憲法をおいて他にないと思います。