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たなつもの百(もも)の木草(きぐさ)もあまてらす
日(ひ)の大神(おおかみ)のめぐみ得えてこそ



朝よひに物(もの)くふごとに豊受(とようけ)の
神のめぐみを思へ世の人



先日の石上神宮の正式参拝後の頂き物の長寿箸の裏に書かれていました。竹田研究会でお食事する時に、竹田氏が歌われていたので、どんな歌かずっと知りたかったのですが、やっと分かりました。



この二首は本居宣長作の食物への感謝の歌で、以前は食前食後に唱えたものだそうです。検索してみたら、今は神道の世界でしか唱えられていないようです。惜しいですよね。



これらは「玉鉾百首」という「道」に関した本居宣長の歌集に載っていたもの。この「道」とは、古道すなわち、日本古来からの当然の考えをさしています。日本人が生活のなかで当たり前に振る舞うことが宣長の考える道で、日本人としてどのようにあるべきかをよく表した歌集に載っていたものなのです。



かつてはこの「玉鉾百首」はよく読まれたもので、その解説も沢山あり、最初のものは宣長存命中から書かれていたんだとか。そしてこれは明治時代にも教材として使われていたそうです。



さて「たなつもの」とは、棚に盛った食物とか、田根(種)つ物、すなわち五穀を指すもの。百の木草は色々な生き物を指すのです。これらのものは、太陽の恵みがないと成長できません。日の大神こと天照大御神は、日本の古代からのありがたさの表れなんです。


また豊受の神とは食事を司る神で、伊勢にお鎮まりになった天照大御神(内宮)の食事の神として迎えられて後鎮座されたのが外宮です。「うけ」「うか」とは、食物を指した言葉です。稲荷神社の御祭神は「宇迦之御魂」で、この宇迦も食物のことなんですね。


生活が大地に根付き太陽の恵みを仰ぐことから深い信仰が始まったといいます。世界各地の古代信仰がそうですね。神話から続く世が続く唯一の国、日本で、食事前の「いただきます」と食後の「ごちそうさま」が自然への感謝の言葉としてあるのは当たり前なんですね。
それを用意してくれた人々への感謝もあるというのはあくまでも後付けで、本来は両方とも自然への感謝なのです。


輸入食品が増え、飽食も増えた現代こそ、この言葉を歌をもう一度見直し唱えるべきではありませんか?



それぞれ、一拝一拍手して歌い、その後で食前は「いただきます」、食後は「ごちそうさま」となります。いきなり外食では難しいでしょうが、家でのお食事の際にいかがでしょうか。




参照:「美のさきはひ」中澤伸弘著