こんにちは!
4月から京都に移住するということは何度か書きました。
そのことがきっかけとなって、生まれて初めてとも言えるような経験をしていることをお話ししたいと思います。
あまり大きな声では言えませんが、僕は鹿児島で何が嫌いって「灰が降ること」が一番嫌いなのです。
鹿児島を愛するみなさんは鹿児島を愛するのと同じように鹿児島のアイコンである桜島のことを愛しています。
そして、愛する桜島が元気に噴火する姿を見てときめいているようですし、当然のように噴火で吐き出された灰に関しても許容しているというよりはどちらかと言えば愛していらっしゃるようなのです。
僕も住んでいるうちにその境地に達するんだろうと思っていました。
無理でした。
足掛け8年鹿児島に住みましたが、僕には灰を愛することはできませんでした。
愛し方がわからなかった。
せいぜい「必要悪として認める」あるいは「見て見ぬ振りをする」に留まっていました。
灰を愛する鹿児島県民の皆様、本当にごめんなさいね。
何より、灰が降るとクルマが傷だらけになるんですよ。
灰とクルマを天秤にかけたら、僕はそりゃもうクルマです。
その一点だけでも無理があった訳です。
鹿児島県を一歩出ると、走っているクルマはどれもピカピカなんです。それが当たり前なんです。
しかし、鹿児島県を走るのは降灰によってクリア層が剥げたクルマが多いと来ている。(もちろん綺麗にしているクルマも中にはいますよ)
うむ。こんなことを書きたいわけではなかった。
これが今までの感情、心持だった(過去形)としましょう。
それがですね、いざ鹿児島を離れて京都に行くと決まってからというもの、鹿児島の良さがビンビン沁みてくるんです。
灰なんかどうでも良いっていうレベルで。
具体的に書けばきりがないんですが、とにかく鹿児島をさる日が刻々と迫れば迫るほど「鹿児島を去りたく無い」という気持ちが募ってきて困るのです。
それでも、僕は鹿児島を、去ります。
タイムリミットはあと半月です。
せいぜい嫌いだった鹿児島を愛そうと思います。
では、本日の一台に参りましょう!
今日は、これ!
ランチア・テージス 3.2ですね。
https://www.carsensor.net/usedcar/detail/CU3197928290/index.html?TRCD=300001
「テーシス」っていう表記もありますね。どっちだろう。
ググってきました。
「ググったね!父さんにもググられたことがないのに!」というギャグを思いついちゃいました。
関係ないけど言いたくなるのがオヤジギャグです。すまんね。
「Thesis」という表記ですね。「S」だから「シス」と読むという忖度が働いたんでしょうけれど、ここは「ジス」でしょうね。
「テージス」と発音させていただくことにしましょう。
デザインはてっきりエンリコ・フミア当たりが担当したんだろうと思っていたら、ランチアの社内デザインによるものでした。
インハウスでこの案を通すというのは天晴れ見上げた精神だと思います。
しかし、頑張った結果のこういうアヴァンガードなデザインを纏ったクルマの営業成績が不振となると「やっぱり社内デザインは・・・」とか「だから一流デザイナーに外注しておけば・・・」などとなると思うので、ここはこの最高のデザインセンスを賞賛するような記事にしたいと考えます。
売れようが売れまいが良いモノは良いんだってんだコンチクショウメ!
だいたい世の中の連中なんてものは9割くらい節穴のような目ん玉しか持っていやがらねえんですからね。
おっと、かくいう僕もその9割に属して入るとは思うんですがね。
ちょっとデザインを齧ったってぇ事で語ってみようと思いますよ。
ギリギリの線で鈍重になることを免れている肉厚のボディです。
重厚でありながら鈍重でない。凡庸なプロデュースでは出来そうで出来ない演出です。
このクルマのトピックはどう考えてもこのファニーフェイスです。
社内でこのデザインが通りますでしょうか。
日本国内では例えばプログレですとかブレビスですとかのような「ちょっと変だけども何処かで見たことがあるような無いような」というデザインにまとめてしまいますが、テージスのこの顔は見たことがない。どう見ても変だ。
しかし、これはランチアの歴史に紐づけられたデザインなのです。
近代ランチアの実質デビュー作であり代表作である「アウレリア」のデザインを祖とする歴史的なバックボーンがあってこそ形成されたこのフェイスデザインであり、ベースとなったアウレリアは今だにイタリア国内では尊敬される自動車として認知があるという全てをひっくるめてのデザインなんですね。
そんな訳ですから、アウレリアを知らない日本人がこのテージスのデザインを見せられても「陸に打ちげられた深海魚」くらいにしか思えないという訳なのです。
つまり、ただ単に奇をてらった訳ではなく、非常に高尚な志を持った過去の意匠に敬意を払ったデザインである訳なのです。
非常にコンベンショナルなデザインに見えるのですが、ある意味セダンパッケージングの完成形とも言えるバランスで構成されています。
テールランプの意匠も非常に凝っていて特徴的です。
アウレリアです。画像から皆さんも色々考えて見てください。
イタリアはデザインの国と言われます。ただ単にレトロ調なデザインを良しとはしないのです。
(ヌォーバ・チンクェチェントはどーなんだ?というお話はまた別の機会に)
日本車でやってもただ奇を衒ったようにしか見えないデザインですが、そこはかとない上品さが漂います。
撫で回したいお尻ですね。
何の変哲も無いアルミホイールです。グリルのデザインを連続的に型抜きしているだけなんですが、上質です。
お邪魔いたします。
ポルトローナ・フラウが貼り巡らされた室内です。革の芳香で悶死です。
後部にもお邪魔。後部はブルーのプライバシーガラスですね。上質。
使用感のないレザーシート。スリスリしたい。
助手席も!
助手席後ろも!レザーがぷっくり浮いて来ちゃうのはイタリアンクォリティ。良し!
この目つきです。正解!
ランチアお家芸のエンジン。官能的です。
リモコンがたくさんありますね。
このクルマは世紀末に開発されました。
アンゴルモアの大王が降臨してくるかもしれない恐怖に打ち勝ってここまで漕ぎ着けたんですね。
そう考えると感慨深いものがあります。
テージスはイラストを描くのに一番苦労したかもしれません。
いざ描き始めてみるとフロント周りの形状が頭で認識していたのとちょっと違うんですよね。
その違いをリアルがねじ伏せていく感じがカーイラストの面白いところです。
みんなも描こうね。カーイラスト。
僕はテージスは買わないけれど、もう20年以上前に開発されたにしては最新型のクルマよりもよっぽどアバンガードで遊び心と高級感を持ち合わせた非常に稀有な存在の車だと思いますので、レクサスとかを買うよりも断然こっちですって。
では、また!