休日のお昼すぎのことです。
私は、
近所のショッピングモールを、
なんとなく、
ぶらぶらと歩いていました。
せっかくのお休みだから、
どこかのお店で、
新しい発見でもないかなと思っていました。
こういうのって、
やっぱり楽しいですよね。
目的もなく歩いていると、
ふと、
あるお店の前で足が止まりました。
そこは、
生活雑貨を扱っているお店でした。
店内には、
おしゃれな便利グッズや、
見ているだけで楽しくなるような商品が、
きれいに並べられていました。
その中で、
私の目を引いたものがありました。
それは、
ずっと気になっていた、
ある『便利アイテム』でした。
テレビや雑誌で紹介されていて、
ずっと、
頭の片隅に残っていたのです。
「これは、一体どんなものなのだろう?」
そう思って、
手に取ってみました。
パッケージには、
いかにも使いやすそうな写真が載っていました。
「これさえあれば、毎日の家事がラクになるかもしれません。」
そう考えて、
私はすっかりその気になってしまいました。
価格も、
それほど高くありませんでした。
「せっかくだし、買ってみようかな。」
そう思って、
レジへ持って行きました。
お会計を済ませて、
なんだか少し誇らしい気持ちになりながら、
家路につきました。
「早く使ってみたいな。」
そんなふうに、
ワクワクしながら帰宅しました。
ここで、
問題のアイテムについて、
少し説明しておきます。
それは、
野菜をあっという間にみじん切りにできる、
小さな手動の調理器具でした。
ハンドルを引っ張るだけで、
中の刃がくるくると回転して、
一瞬で野菜が細かくなるという仕組みです。
包丁を使う手間が省けて、
涙も出ない。
そんな触れ込みでした。
「これは、便利に違いありません。」
私はそう確信していました。
家に着くと、
さっそく使ってみることにしました。
夕食の準備を始める時間でした。
メニューは、
ひき肉と野菜をたっぷり使った、
ハンバーグにすることにしました。
玉ねぎをみじん切りにする必要があります。
「まさに、出番です。」
私は、
ワクワクしながら、
そのアイテムを箱から取り出しました。
ピンク色の、
コロンとした可愛い形をしていました。
キッチンのカウンターの上に置いて、
なんだか、
プロの料理人になったような気分でした。
「では、さっそく、やってみましょう。」
私は、
玉ねぎの皮をむいて、
適当な大きさに切り分けました。
それを、
容器の中にポイッと入れました。
「これくらいで、いいのかな?」
そして、
フタをしっかりと閉めました。
「準備は、万全です。」
問題は、
ここからです。
私は、
フタについている紐を、
勢いよく引っ張ることにしました。
「せーのっ。」
私は、
力いっぱい、
紐を引っ張りました。
ブィンッ!
小気味よい音がして、
中の刃が勢いよく回りました。
「おおっ、すごい!」
私は、
思わず声を出してしまいました。
予想以上の手応えでした。
面白くなってきて、
私はもう一度、
勢いよく引っ張りました。
ブィンッ!ブィンッ!
中の玉ねぎが、
みるみるうちに細かくなっていくのが、
透明な容器を通して見えました。
「これは、快感です。」
包丁でトントンと切る手間が、
嘘のようです。
現代の科学技術の進歩は、
すごいものだなと思いました。
私は、
すっかり調子に乗ってしまいました。
「もっと細かくしたら、もっと美味しくなるかもしれない。」
そう思って、
さらに何度も、
勢いよく紐を引っ張り続けました。
ブィンッ!ブィンッ!ブィンッ!
腕が少し疲れてきましたが、
楽しさが勝っていました。
「よし、そろそろいい頃合いでしょう。」
私は、
満足感に浸りながら、
フタを開けました。
中を覗き込みました。
その瞬間、
私は我が目を疑いました。
「えっ・・?」
そこにあったのは、
みじん切りされた玉ねぎではありませんでした。
ようするに、
『玉ねぎのスープ』のような状態になっていたのです。
完全に、
すりおろされて、
いや、
ドロドロの液体状になっていました。
形は影も形もありません。
ただの、
白い泡立つ液体が、
容器の底に溜まっていました。
「これは、一体どういうことでしょうか?」
私は、
しばらくその場で固まってしまいました。
あんなにシャキシャキしていた玉ねぎが、
ものの数秒で、
原型をとどめないほどのドロドロになってしまったのです。
信じられない光景でした。
私の頭の中は、
疑問符でいっぱいになりました。
「やりすぎてしまった・・。」
そう気づいた時には、
すでに遅かったのです。
ハンバーグのタネに混ぜようとしたのに、
これでは水分が多すぎて、
お肉がまとまらなくなってしまいます。
「まさか、こんなことになるとは。」
私は、
すっかり途方に暮れてしまいました。
便利な道具というものは、
使い方を間違えると、
とんでもない凶器になるのだということを、
身をもって知りました。
人間、
油断してはいけないのです。
「便利なものには、それなりの落とし穴があるのかもしれません。」
そう思いながら、
私はドロドロになった玉ねぎを眺めました。
さて、
ここからどうしたものか。
捨てるわけにはいきません。
もったいないので、
そのままハンバーグのタネに混ぜ込んでみることにしました。
結果として、
お肉はビチャビチャになりました。
形を整えるのも、
一苦労でした。
フライパンで焼いているときも、
なんだかいつもと違う香りがしていました。
焼き上がったハンバーグは、
ふっくらジューシーというよりも、
なんだか、
ふわふわしすぎていて、
お箸で掴むと崩れてしまうような代物でした。
実際に食べてみると、
味は普通のハンバーグでしたが、
食感がいつものお肉とは違っていました。
家族に出したところ、
「今日のハンバーグ、なんだか柔らかいね」
と言われました。
私は、
「うん、ちょっと新しい調理法を試してみたんだよ」
と、
愛想笑いを浮かべてごまかしました。
本当は、
大失敗だったなんて、
口が裂けても言えませんでした。
こういう失敗って、
みなさんはありませんか?
新しいものを買ったとき、
嬉しくなって、
ついついやりすぎてしまうこと。
私だけでしょうか?
でも、
失敗はしたけれど、
これはこれで、
いい経験になったのかなと思います。
次回使うときは、
引っ張る回数を、
もう少し控えめにしようと心に誓いました。
控えめに、
優しく、
数回だけ引っ張る。
それが、
このアイテムの正しい使い方なのだと、
身をもって学びました。
失敗は成功の母と言いますが、
まさにその通りですね。
次は、
もっと上手に、
美味しいみじん切りを作ってみたいと思います。
今度こそ、
シャキシャキの玉ねぎが入った、
完璧なハンバーグを作りたいです。
そう考えると、
料理というのも、
なかなか奥が深いものだなと感じます。
毎日の何気ない日常の中にも、
ちょっとした事件や、
小さな気づきが転がっているものです。
そういう日常を、
これからも大切にしていきたいなと思いました。
みなさんの休日は、
どんな感じだったでしょうか。
たまには、
こういうドタバタした一日も、
悪くないかもしれませんね。
さて、
明日は何を作ろうかな。
もちろん、
今度こそは、
気をつけて料理をしたいと思います。
それでは、
今回はこの辺で。
また、
日々のちょっとした出来事を、
お話しできればいいなと思っています。
少し、話しは変わりますが、
実は、最近になって、
新しいお皿を一枚、買い足しました。
場所は、
駅の近くにある、
こぢんまりとした雑貨屋さんです。
ふらっと立ち寄っただけなのですが、
そのお皿を見つけた瞬間、
なんだか目が離せなくなってしまいました。
白磁(はくじ)というのでしょうか。
少し青みを帯びたような、
とても綺麗な白色のお皿です。
表面には、
うっすらと小さなヒビのような模様が入っています。
店員さんに聞いてみたところ、
『貫入(かんにゅう)』という技法なのだそうです。
陶器が焼き上がって冷める時に、
土と釉薬(ゆうやく)の縮み方の違いで、
自然に入るものなのだとか。
つまり、
同じ模様は二つとない、
世界にひとつだけのお皿ということになります。
こういう話を聞くと、
なんだか急に愛着が湧いてきてしまうのは、
私だけでしょうか。
せっかくなので、
そのお皿を連れて帰ることにしました。
お値段も、
すごく高かったわけではありません。
でも、
私にとっては、
なんだか特別な宝物のような気分です。
では、いったい、
そのお皿に何を盛り付けようか。
帰り道を歩きながら、
そんなことばかり考えていました。
ハンバーグにするには、
ちょっと小さすぎる気がします。
かといって、
サラダをドカンとのせるのも、
なんだかもったいないような。
こういうのって、
けっこう悩ましいですよね。
でも、
その悩んでいる時間すら、
楽しかったりします。
結局、
その日の晩ごはんは、
ちょっとだけ奮発して買った、
お惣菜のコロッケをのせることにしました。
いつものスーパーのコロッケです。
いつもなら、
パックのまま食卓に出してしまうところですが、
今回は違います。
お気に入りの新しいお皿に、
そっと盛り付けてみました。
千切りキャベツも、
いつもより丁寧に添えてみます。
ソースの小皿も、
なんとなく形を合わせてみました。
たったそれだけのことなのに、
食卓の雰囲気が、
ガラリと変わったのです。
これは、
ちょっと嬉しかったです。
いつものお惣菜が、
まるで、
どこかの定食屋さんのメニューのようになりました。
食べる前から、
「美味しそうだな」と思える。
こういう気持ちって、
日々の暮らしの中では、
案外、大切なことなのかもしれません。
忙しい毎日を送っていると、
どうしても、
効率ばかりを考えてしまいます。
ちゃちゃっとご飯を作って、
ちゃちゃっと食べて、
パパッと片付けてしまう。
それも、
毎日の生活を回していく上では、
とても大事なことです。
でも、たまには、
こういう遠回りというか、
無駄な時間も必要なのかなと思いました。
お皿一枚変えるだけで、
いつものご飯が、
ちょっと特別なものになる。
自分の気持ち一つで、
日常の景色が、
パッと明るくなる。
そう考えると、
私たちの生活というのは、
自分次第で、
いくらでも楽しくできるということなのかなと思います。
もちろん、
毎日そんなふうに丁寧な暮らしができるわけではありません。
疲れている日は、
平気で紙皿を使ってしまうこともあります。
洗い物をサボって、
シンクに食器を溜めてしまうこともあります。
人間だもの、
そんな日だってありますよね。
だからこそ、
たまにこういうお気に入りの時間があると、
「また明日から頑張ろう」という気持ちになれるのです。
小さな幸せを見つける名人になりたいなと、
最近は、そんなふうに思っています。
大きな旅行に行かなくてもいい。
高いブランド物を買わなくてもいい。
身近なところにある、
小さな美しさや、
ささやかな心地よさに気づける自分でいたい。
そういえば、
この間、近所の公園を歩いていた時も、
似たようなことを感じました。
いつも何気なく通り過ぎている銀杏(いちょう)の木が、
いつの間にか、
綺麗な黄色に色づいていたのです。
「あぁ、もう秋なんだな」って、
なんだか胸が温かくなりました。
季節は、
私たちが気づかないうちに、
ちゃんと移り変わっているのですね。
忙しさを理由に、
そういう季節の移り変わりを見落としたくないなと思いました。
立ち止まって、
空を見上げる余裕。
そういう余裕を、
心のどこかに持っていたいものです。
みなさんは、
最近、どんな小さな秋を見つけたでしょうか。
もしかしたら、
私の知らない素敵な景色を、
すでに楽しまれているかもしれませんね。
今度、
お茶でも飲みながら、
そんなお話を聞かせてもらえたら嬉しいです。
さて、
そろそろ夕飯の支度を始めないといけません。
今日のメニューは、
何にしようかな。
冷蔵庫をのぞいてみたら、
豚肉とキャベツが残っていました。
ということは、
野菜炒めあたりがちょうど良さそうです。
もちろん、
あの新しいお皿を使おうと企んでいます。
今度は、
何をお皿にのせようか。
そんなことを考えながら、
エプロンをキュッと結びました。
それでは、
また近いうちに。
みなさんも、
素敵な休日を過ごせますように。