今は高校2年。1年の時はピアノを弾いても、音楽を聞いても何も思わなかった。

嫌いな音楽。約束の為だけにしている音楽なんだ、って感じられる。

しかし、高校2年になってピアノを始めた。

それは奈那が原因だ。高校2年の初日に奈那は私に挑戦してきた。

「来年、お互いにピアノコンサートに出よう。」

そう言ってきたのだ。私はしたくなかった。

当たり前。嫌いな音楽をしよう、と言われてする訳ない。

だけど、始めてしまった。理由は私自身の叫び。

心の奥から聞こえてくる私の叫び。

音楽をもう一度、始めたい。そんな叫びが聞こえた気がしたから。



この高校には第一音楽室と第二音楽室がある。

第一音楽室は奈那が使っていたから、第二音楽室を使うことにした。

第二音楽室に入ると、きれいなピアノが置いてあった。

まぁ、音楽室だから当たり前なのだろうが。

私が、こうやってピアノを授業以外で見るのは久しぶりだった。

ピアノの輝きを久しぶりに感じたのだ。

思い立った曲を弾いてみる。

私の力は前より劣っているはずだ。

でも、それでも良かった。私はピアノに触れている事だけで良かったのだ。



「ピアノの音、綺麗。やっぱり玲音だね。」

私は集中していた。その為に、音楽室の入り口に立っていた人に気付かなかった。

「流咲はバイオリン?私、帰ろうか?」

私は手を止め、流咲にそう言った。

そこにいたのは、流咲というバイオリン奏者。

奈那を通じてできた音楽関係の友だちだ。

しかし、今の奈那と流咲は友だちではない。

奈那と流咲に何があったのかは、よく分からない。

ただ、2人の間に何かがあったのは分かる。

「帰らなくていいよ。あっちはあいつがいるから……、一緒にしていい?」

それから流咲は「あいつ」と奈那を呼ぶようになった。

深くは聞かない方が良さそうで、私は普通に接するようにしていた。

「私、久しぶりで音が変だよ?」

私は音が変な事が問題じゃなかった。

音楽が嫌いな人で良いのか不安だったのだ。

「大丈夫、聞いた限り綺麗だった。」

流咲がそう笑って答えてくれたことが嬉しかった。

音楽の力は劣っている。

でも、奈那の挑戦を受けるにはもっと力が必要だ。

「じゃあ、弾くから適当に合わせてよ。」

私がそう言うと、流咲はバイオリンを出した。

自分のバイオリン。それを見ると、私は心が傷んだ。

「了解!」

笑顔の流咲の前では、無理にでも笑ってピアノを弾いた。

あの日から、私の運命が変わった。