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『それでね、つまりぼくはこの世界に完全性を求めるべきではないと思うんだよ』
『うん』
『なぜかというとね、結局完全、もしくは完璧っていうものは人の作り出した幻想でしかないからなんだ。世界にはそんなものどこを見たって存在していないからね』
『うん』
『でも人にはそれが見えてしまう。いや、不完全だからこそ、それがあるように見えてしまう。そして、それがそうであるかのように見えるからこそ、そうでなければならないと思い込んでしまうんだよ』
『うん』
『なんていうか、すごく悲しいよね』
『うん』
そこまで会話が進んだとき、少年が不意にぼくの方を振り返った。
『君、ちゃんとぼくの話聞いてる?』
『うん』
ぼくは少年に繰り返しの空返事をする。
その返事を聞いて少年は軽いため息をついた。どうやらぼくが話を聞いていないと判断したようだ。
その判断は半分だけあっている。
ぼくは少年の話を半分くらいしかちゃんと聞いていなかった。
その理由は、ぼくの耳とぼくの口は確かに少年の方に向けられていたのだけれど、ぼくの目とぼくの意識はそうではなくてずっと上を見続けていたからだ。
『空が近いね』
ぼくは少年にそう尋ねる。
『ああ、そうだね。大分近づいた。もうすぐ水面に手が届きそうだね』
『花はどうしてるの?』
ぼくは少年に花のことを質問する。
『そんなのぼくにわかるわけないじゃないか。それこそ君の仕事だろう。だって花さんは君のパートナーなんだからさ』
それはそうだ、とぼくは思う。