「それも秘密なの?」
「うん」
花は言う。
「花は秘密が多いね」
「いけない?」
「いや、いけなくはないよ。でも、僕はできれば、その花の秘密を知りないな」
洞窟の中はとても静かだ。
闇の中にいるというよりは、まるで『夜の中』にいるようだと花は感じた。(星が見えないのは残念だけどね)
「女の子にはね、秘密がたくさんあるのよ」
花は冗談っぽく歩にそう言った。
「そうだね」
歩はすぐにそう答える。
「その秘密を知りたいだなんて、すごく勇気のいる発言なのよ?」
「そうなの?」
歩は頭の位置を少しだけ変える。もしかしたら花のポニーテールがくすぐったいのかもしれない。
「そうよ。歩が責任を取ってくれるっていうのなら、教えてあげてもいいけどね」
「え?いや、それは、どうかな?」
歩が返事を濁したので花はトン、とさっきよりもちょっと強めに自分の頭を歩の頭にくっつけた。(ぶつけた?)
「花、痛いよ」
「あら?私だって痛いわ」
「いや、まあ、そうだろうけどさ」
納得できなそうな歩の声。
「歩、青猫、どうしてる?」
花は話題を青猫に移した。
「大人しくしてるよ。怪我のせいもあると思うけど、こんなにこいつがおとなしいのも珍しいね。いつもこうしてくれていれば、僕も安心できるんだけどね」
「でも、動き回らない、聞き分けのいい青猫なんて、青猫じゃないでしょ?」
「うん。それは僕もそう思う」
歩の言葉のあとで青猫が『ミャー』と一回鳴いた。多分、歩が青猫の頭でも撫でたのだろう。
なので花も自分の頭も歩に撫でてもらいたいと思った。
「ねえ歩。頭撫でてくれない?少し痛いところがあるのよ」
花は歩にそうお願いする。
「いやだよ。だってそれ、花のせいじゃないか」
「別にいいじゃない。ねえ、お願い。頭撫でてよ。もし、撫でてくれれば私の秘密を一つだけ歩に教えてあげるわ」
「秘密?その本のこと?」
歩は花に聞く。
「違う。私の『お母様』のことよ」
そう言って花はぎゅっと腕と体を縮めて、小さく体育座りをした。