ーーーーーー
「あざり、そっちの足じゃない」
涙にそう言われて、あざりは急いで左足を前に出す。
「ほら、今度はこっち。ちゃんとリードして」
「う、うん、わかった」
あざりはくるくると涙に操られるように回転する。
チラッと舞台の上を見ると、曲を奏でていた学院生の姿が目にはいった。
「よそ見しない」
しかし、すぐに視線を涙の顔に戻される。
「これ、まだ終わらないの?」
「もうすぐよ。だから、ちゃんと我慢して」
涙の言った通り、その後、演奏はすぐに終わり、ダンスを踊っていたパートナーたちはお互いに礼をしながら、会場に用意されている料理の乗ったテーブルの側に戻っていった。
盛大な拍手が演奏者に贈られ、パーティーはしばしの休息の時を迎える。
「ありがとうございました」
涙がぼくに頭を下げる。
「こちらこそ」
ぼくも同じように涙に頭を下げてそう言った。
「疲れた」
空いている席に座ってぼくはそう呟く。
「そう?わたしはすごく楽しかったけどな」
涙は手に二つのグラスを持っている。その一つをぼくに差し出しながら、ぼくに向かってそう言った。
「ありがとう」
グラスを受け取り、ぼくはすぐに口をつける。
口の中に変な味が一瞬だけ広がって、そのあとすぐに勢いのある炭酸がぼくの喉を刺激する。
どうやらグラスの中身はジンジャーエールのようだった。