「でも、それが秘密ってことはそれを隠しているってことだよね?何でそんなことするの?」
「いろいろ事情があるのさ。でも、それを話す前に確認しておきたいことがある」
ぼくの問いに真冬が答える。
「それって、つまり秘密を共有したければ、ぼくたちの仲間になれってこと?」
「話が早いね。あざりが言った通りだよ」
涙がぼくの太ももをポンポンと叩いたので、ぼくは涙を見る。
「そうしようよあざり。わたしたち、もう友達だよね?」
涙が少し不安そうな顔でぼくにそう聞いた。
「あざりはもうぼくと涙の夜の顔を知ってしまったんだから、嫌とは言わせないよ。ぼくたちはもう友達だ。それでいいんじゃないかな」
ぼくは返事をしなかった。
それは友達になることが嫌とか、そういうことではなくて、こういうとき、どうすればいいのか、本当にわからなかったからだ。
なぜならぼくは生まれてから今まで『友達』と呼べる友人に出会ったことがなかったからだ。
ぼくの友達はずっと『本』だけだった。
これからもずっと、そうだと思い込んでいた。
「あざり、嫌なの?」
涙はなぜか泣きそうだった。
だからぼくはとりあえず笑うことにした。
「ううん。嫌じゃないよ」
「本当?」
「本当だよ」
その言葉を聞いて涙の顔はぱあっと明るくなる。
「やった!ありがとう、あざり。あざりなら絶対そう言ってくれるって、私信じてた!」
「わ、ちょっと、涙!?」
涙に抱きつかれて、ぼくは危なく後ろに倒れそうになった。
そんなぼくたちの姿を真冬は笑いながら嬉しそうに見つめている。
「真冬、見てないで助けてよ」
「ダメだよ。それも儀式のうち、みたいなものだからね」
ぼくには真冬の言っている意味が理解できなかった。
抱きついてきた涙は容赦がなく、ぼくはついに涙と一緒に床の上に倒れんでしまう。
涙はそれでもぼくから離れず、ぼくの胸の上でとても嬉しそうに笑っていた。
そんな涙の顔は、学院で見るあの『無表情でクールな』感じとは真逆だったので、ここでもぼくはとても驚いた。
まあ、涙だけでなく大抵誰もが『仮面』をかぶって暮らしているものだけど、それでもやっぱり人の『素顔』を見るのはどことなく照れくさく、恥ずかしいものだった。