『そんなことより、ほら、何ゆっくりとくつろいでいるのさ。早くここから脱出するよ。余裕は全くないんだからね』
魚は花の手をとって座り込んでいる花を引っ張って動かそうとする。
ちょっと、痛いよ魚。何そんなに焦っているの?まずは説明をしてよ?
そう言いながらも、花は少女を抱っこするようにして立ち上がって移動の準備を整える。
『それは走りながら説明するよ。とにかく今は一刻も早くここから移動しないといけないんだ』
魚はそう言って今にも走り出しそうにその場でバタバタと両足を上下運動させている。
もう。わかったわ。とりあえず、あなたについていけばいいのね?
『そうだよ。じゃあ、出口はこっちだから、ついてきて』
魚はそう言って自分がやってきた方向に向かってゆっくりと走り出した。
よっと。
花は勢いをついて少女をおんぶの状態から背負う状態に移動させる。それに成功すると、花はゆっくりと(毎朝の日課であるジョギングをするような感じで)魚のあとについて走り出した。
『あれ?その子も一緒に連れて行くの?』
後ろを振り返った魚がそう花に尋ねた。
当たり前でしょ?こんな暗い場所にこの子一人置いていけるわけないじゃない。
花の返事を聞いて魚は呆れたようにため息をついた。
『君さ。一体誰のせいでこんなことになったと思ってるの?』
それはそれ。これはこれよ。
魚は今でも不愉快そうな顔をしているが、花は全く取り合わない。
『ま、いいよ。どうせその子を運ぶのはぼくじゃなくて君なんだからね』
魚は前を向いて走りだす。
後ろから見ると、やっぱり魚のランニングフォームはどこかおかしくて歪んでいた。
その後、しばらく二人は無言で闇の中を走り続けた。(魚のポニーテールが揺れているのが可愛い)
しかし、徐々に魚のペースが落ちていき、やがて魚は歩くのと変わらない速度で走るようになった。
ほら、しっかりして。何へばってんのよ?
花が後ろから魚を急かす。
『ちょ、ちょっと待って。少しだけ、休ませて』
そう言って魚はついに歩き出して(立ち止まらないだけ偉い、のかな?)しまった。しょうがないので花は魚の隣に移動して、魚と同じペースで歩き出す。
魚は、はぁ、はぁと肩で息をしている。
それを見て、今度機会があったら魚に走り方をきちんと教えてあげようと花は思った。