いた。さっき私が見たのはあれだ。
その何かを見て花が最初に連想したのは黄色い服を着た幽霊だった。それがじっと森の木の影からこちらを見つめている。
しかし、よく見ていると、それが『黄色いレインコートを着ている子供』であることがわかった。フードを深く被っており、顔は見えない。でも、明らかにこっちを見ている。それがわかる。確かにあの子はこちらに何かしらの強い意志を向けている。
「ねえ!あなた誰なの!どうして私を見ているの!」
花はそこから大声で叫ぶ。すると黄色いレインコートの子供は花に向けてとても強い意志を放つことで返事を返してきた。
『出て行け』
強い風と雨。そして言葉と意志が花の体を突き抜ける。花は思わず目をつぶった。すると、それと同時に世界が歪んだ。まるで、意識が溶けるように世界が溶け出し、花はぽっかりと空いた『世界の穴』の中に落ちてしまいそうになる。
『この森から、出て行け』
追放される!
花の全身から血の気が引いた。まずい。この風は、やばい。このままだと、私、テーブルとか部屋の壁どころじゃない。きっと『狭間の闇』まで吹き飛ばされる。
小夜に会えなくなっちゃう。
花の意識はそう思った瞬間吹き飛んだ。が、花が目を開けるとそこはさっきまで花が立っていた場所。つまり歩の家の窓際だった。
花は何故か無事だった。
その理由はすぐに判明する。花の視界の先、開いた窓の上(家と外の境界)の空間に一匹の黒い魚が浮かんでいたからだ。
魚は緑色の光をまとい、とても強い眼差しで黄色いレインコートを着た子供を睨みつけている。
「魚、あなたが私を守ってくれたのね」
花はホッとした様子で胸を撫で下ろしている。
『君が狭間の闇まで飛ばされると、ぼくも一緒に飛ばされちゃうからね。ただそれだけだよ』
魚は素っ気いない口調で花にそう答えた。