「花、僕の話聞いてる?」
花は青猫から歩の顔に視線を向けた。
「き、聞いてる、聞いてる。森はとても素敵な場所なんだって話だよね」花は取り繕うように不自然な笑顔をしながら歩に答えた。
「もう。質問してきたのは花でしょ?」
「ご、ごめんさない」
花は歩に謝った。(話を聞いていなかったわけではないのだ。でも、どうしても視界が青猫に向いてしまうだけなのだ)歩は森に敵はいないと話していたが、花にとって猫は天敵と呼べる存在だった。
「も、森の門番って楽しいの?」
花は強引に会話を進めた。でも、適当にこの質問をしたわけではなく、この質問は花が歩に聞いてみたいとずっと考えていた質問の一つだった。(だからこそ、とっさにこの質問が頭に浮かんだのだ)
「うーん、他の仕事をしたことがないから比べられないんだけど、仕事自体はとても楽しいよ」
「門番てどんなことするの?」
「どんなことって、門の番をするんだよ。門を勝手に通って森の中に入る人がいないように注意するのが僕の仕事さ」
確かに歩は花が門に触れようとしたとき、それはダメだよ、と声をかけてきた。(思えばあれが花と歩の初めての出会いだった。ついさっきの出来事なのに、なんだが妙に懐かしい)
『あんまりそういうこと聞くの、感心しないな。歩に嫌われちゃうかもよ』
魚が花に忠告をする。おそらくこの辺でプライベートな内容に触れる会話は切り上げろと言いたのだろう。しかし、花は魚の忠告を無視した。これくらい別にいいじゃないと花は心の中で思っている。