検問 | amesekaiのブログ

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駅の改札を抜け、気持ちを切り替えることに成功した俺が電車の中で考えていたことは学校のことでも花のことでもなくお金のことだった。俺が国から受け取っている金額では花を養うことは到底できない。このままでは一ヶ月もしないうちに俺は破産することになるだろう。さて、どうしたものか、、。

やっぱり、両親の遺産を使うしかないかな。

両親は俺にかなりの額の遺産を残してくれた。貯金もしれくれていたみたいだし、仕事が忙しくて自分たちでお金を使う暇もなかったのだろう。それに国からもお金が貰えた。それは国のために働いていた両親に対する報酬だ。それらは全て銀行に預けたまま手付かずになっている。俺は両親の遺産を自分のために使うつもりは全くなかった。まあ、そうは言っても俺が今暮らしていけるのは国から支給される援助金と奨学金のおかげで、それらの支給も両親のおかげで許可されたようなものだから親の遺産で暮らしていることには変わらないんだけど、それでも俺は両親の遺産を使う気にはなれなかったのだ。

このまま大学に進学して、就職し自分の稼いだお金で暮らしていくつもりだった。

けど、これは花のためだ。俺よりも小さい女の子のため。小さな命を守るために使うお金なんだ。それなら、使ってしまっても構わないだろう。俺はそう考えた。

偽善だな。でも、それ以外に俺たちが生きていく方法はなかった。

電車が緩やかに停車し、俺はいつものようにホームに降りた。見慣れた駅の構内を抜け改札の前にたどり着く。何事もなければそのまま通過するだけの場所だが、今日は少し雰囲気がおかしかった。やけに混雑して、改札の前に列ができていた。少し背伸びをして前を確認すると、どうやら何か検問のようなことを数人の警察官と駅員さんがやっているようだ。検問自体は帝都では珍しい光景ではない。朝の通勤時間だろうが御構い無しだ。並んでいる人たちも内心は苛立っていはいるのだろうが、もう慣れてしまったような諦めの風貌をして大人しく自分の順番が来るのを待っていた。

俺はその列には並ばずに少し改札前から距離を置き、人で埋め尽くされている駅の構内を軽く見渡してみた。

検問を掻い潜ることなんて子供の頃からやってきたことで、別に何てことはない。ちゃんと列に並んでいればすんなりと改札を抜けることは可能だろう。問題は検問をしている理由だ。スパイの目撃情報があったのか、それとも秘密裏にテロの予告があったのかもしれない。帝都ではどんな事件が起こっても不思議ではない。ここは世界でも最大と言っていいほど規模の大きな都市であらゆるイデオロギーを持った人たちが偽りの共存をしている場所なのだから。

俺自身、力の存在を確認されれば、ただでは済まない。あっという間に警察官が俺を抑え込み、俺はどこか遠い世界に連れて行かれてしまうだろう。全く嫌な世界だ。

俺が最初に考えた検問の理由とは、この人たちは花を探しているのかもしれないというものだ。可能性は低くはない。十分あり得る話だ。もしそうならこれはかなりまずい状態だと言わざるおえない。この場ですぐに捕まることはないが、捜索の手が広がることは芳しくない。花が俺に黙って単独行動する可能性は低くないからだ。

そして、俺はそれと同時にもう一つの可能性を頭の中に浮かばせていた。花の方がどちらかというと特殊な事例で、もう一つの可能性の方が俺にとってはとても普遍的で当たり前といった感覚があるものだ。

俺が思い出していたこと。それは今朝見た夢の記憶だった。

多分、この辺りにいるはずだ。

あまり長い間ここで突っ立っているわけにはいかない。なるべく自然に目立たないように周囲の様子を観察する。なにかおかしな人物がいるはずだ。この検問を突破することのできない人物。どこにいる?どこで俺はそいつと出会うことになるんだ?そいつはきっと顔を隠している。それはそうだ。素顔でこんなに人の大き場所を歩けるはずがない。そいつが素顔でこんな場所を歩いたらすぐにパニックになってしまうだろう。検問など関係無しに、そいつは素顔で外を歩くことはできないはずだ。

、、、、いた。あそこだ。