陽の光がとても綺麗だった。
暖かくて、優しくて、なんだか涙が出そうになる。
「どうかしたんですか?」
空から視線を戻すと、雫が心配そうな顔をしながら、私の顔をじっと覗き込んでいた。雫は口一杯にサンドイッチを詰めている。
なぜこんな状態で言葉を話すことができるのか、私はとても不思議に思った。
膨らんだほっぺたを突っついたら、雫は怒るだろうか?
怒るかもしれない。
でも、やってみたい。
その衝動を我慢するのに、私は結構エネルギーを消費した。
「なんでもない」
そう、なんでもない。
こんなこと、本当になんでもないことなのだ。
「もう部屋に戻りますか?」
「大丈夫」
「本当に?」
「うん」
雫は私の体調をいつも心配していた。
嬉しかったけど、あの冷たい部屋の中には、できる戻りたくはなかった。部屋の中に入って、鍵の閉まる音を聞くと、私はもう一生ここから出ることができなんじゃないかって、そんな恐怖に襲われた。
怖かった。
ただ、ひたすら怖かった。
部屋に戻っても、どうせ私はベットの上で小さく、そして丸くなって、世界を遮断することしかできないんだ。
そんな時間よりも、この場所は何倍も楽しい。
外に出たことのない私にとって、ただひたすら、この世界は眩しかったのだ。
「まだ、外で遊んでいたい」
「うーん、じゃあ、どうしましょうか?何して遊びますか?」
「かくれんぼ」
「そんなのつまんないですよ。もっと面白い遊びがしたいです」
「普段は、どんな事して遊んでいるの?」
「僕ですか?僕は本読んだりしてますね。体はあまり動かしちゃいけないって、お医者さん言われてるんですよ」
「私も同じ」
「つまんないですよね。何か楽しいことがあればいいんですけどね」
かくれんぼは楽しいことじゃないのかな?
雫が隠れている私を見つけてくれたら、私はすっごくうれしいのに。
「はい。あーんしてください」
私が振り向くと、空中にサンドイッチが浮かんでいた。
雫が私にこれを食べろと催促しているのだ。