世界が赤い。
まるで燃えているみたいだ。
「えい」
私は雫の服の中から、赤い世界の中に飛び出した。
「照子、何やってるの?危ないよ」
「大丈夫ですよ」
少女は私の姿を目に留めて、その動きを止めた。少女の瞳は、じっと私の姿を凝視している。
「では、雫。少しあの子と話をしてきます」
「え?」
「しばらくの間、あの子の事、守ってあげてくださいね」
「ちょっと、照子?何言ってるの?」
私は空中で軽く一回転して、体の調子を確かめる。
大丈夫。
少しきついけど、お昼の太陽に比べれば、夕焼けはそれほど負担にならない。
これならきっと成功する。
私は少女の瞳を見つめる。
濁った色。
様々な色が混ざり合うように、拒絶するように蠢き、虹色の渦を作り出している。
「行きます」
私の体は加速する。
少女の瞳の中に向かって、思いっきり加速する。
少女は動かない。
「照子!」
背後で雫の声が聞こえた。
私はその声を無視して、少女の瞳の中に飛び込んだ。
少女の体が弾け飛ぶ。
私は少女の内側から赤い空を見つめていた。
雫がどうやっても動かせなかった少女の体が、ゆっくりと宙を舞って線路の上に倒れこむ。
意識が混ざり合う。
私の意識。
少女の意識。
赤い空がやがて虹色に変わる。
私の全ては虹色の渦の中に飲み込まれ、私の全ては少女の中に溶け込んで消えていく。
あなたは、どこにいるの?
私は、あなたを助けにきたんだよ。
あなたをこの混ざり合った色の渦の中から、救い出しにきたんだよ。
私を導いて。
私を、あなたの元に導いて。
ぐるぐると世界が回っている。
私はその回転に逆らわないで、身を任せる。
やがて、渦の中心がうっすらと見えてきた。
ここが、この世界の底。
そして、この世界の中心部分。
そこには一人の少女がいた。
うずくまって、少女は一人ぼっちで泣いていた。
少女が私の存在に気がついて、そっとその顔を私に向ける。
綺麗。
それが本当のあなたの顔。
それが本当のあなたの色なんだね。
少女の瞳は青色に輝いている。
それは空の色よりも蒼く、海の色よりも碧い青色。
「あなたは、誰?」
少女が私に問いかける。
「私は照子。雨森照子」
私は少女に自分の名前を答える。
少女は私を見つめながら目をパチパチと動かし、不思議そうな表情で首を傾ける。
それは、とても子供らしくて、とても可愛らしい仕草だった。
「あなたは誰?」
私は少女に同じ質問を返した。
「私?」
「そう、あなた。あなたの名前を教えてくれる?」
私は少女に名前を聞いた。
「私、、私の名前は、、」
少女は少し悩んでから自分の名前を私に教えてくれた。
「青猫」
青猫はそう言って、彼女の元に流れ着いた私の体を両手で優しく受け止めてくれた。