「お久しぶりです、マジルさん!」
思わず大きな声が出てしまった。
「うん、久しぶり。美雨ちゃんは変わってないね」
「どういう意味ですか、それ!」
私は嬉しくてたまらない。マジルさんに会うのなんて何年ぶりだろう。
「あの、マジルさん」
「何?」
「もしかして、マジルさん、お兄ちゃんに会いに来てくれたんですか?」
「、、まあ、そうなるかな」
すごい。お兄ちゃんに会いに来てくれる人がアリスさん以外にいるなんて、、。
感激だ。さずがマジルさんだ。
それなのにお兄ちゃんは一体何をやっているんだか、、。全くもう!
「あ、えっとですね。実は今、ちょっとまずいことになってまして、、」
嬉しいけど、さすがに今はお兄ちゃんの部屋にマジルさんを向かわせる訳にはいかない。
「それは知っているよ。だから僕が呼ばれたんだからね」
マジルさんは妙に真剣な表情でそう言った。
「え、それって、どういう事ですか?」
私はこの時になって初めて、マジルさんの纏ってる雰囲気の異様さに気がついた。この人は私の知っているマジルさんじゃない。優しくて、笑顔の素敵なマジルお兄ちゃんじゃない、、。
姿形は勿論、子供の頃の面影がある。なのに、なんだろう、この違和感は、、。
「、、マジルさん?、、あの、あなた、夜凪マジルさんですよね?」
「そうだよ、美雨ちゃん。僕は夜凪マジルだ」
「子供の頃に一緒に遊んだ、マジルお兄ちゃん、、ですよね?」
「ああ、そうだよ。懐かしいね。アリスは今も、夜雨と一緒につるんでるの?」
私とアリスさんとお兄ちゃん。最初は3人でずっと遊んでいた。しばらくして、そこにマジルお兄ちゃんが加わった。私たちはいつも4人で遊ぶようになったんだ。
でも、お兄ちゃんはいつの間にか外に出る事を止めてしまった。
そして、マジルさんも、いつの間にか、私たちの中からいなくなってしまった。
私はアリスさんと2人だけになって、それで、、。
それで、2人で一緒に泣くようになったんだ。
「、、ええ、まあ」
マジルさんからすごく嫌な感じを受ける。
何があったの?
マジルさん。こんなのマジルさんらしくないよ。
「どうかしたの?」
私は返事をせずに、ドアを急いで締めようとした。しかし、マジルさんの手がそれよりも早くドアに伸びた。ドアは私が力を入れてもビクともしなくなってしまった。
「急にどうしたの?」
「、、すみません。今、ちょっと急用を思い出して、少しだけ、外で待ってもらえませんか、、」
「残念だけど、それは出来ないな」
「、、どうしてですか?」
「僕を必要としている人が、この家の中にいるからだよ」
私はドアから手を離すと、ゆっくりと後ろに下がっていく。
「ありがとう。僕もあんまり手荒な事はしたくないからね」
マジルさんは私と一定の距離を保ちながら、家の中に入ってきた。心臓の鼓動が速い。私の足が小さく震えている、、。
「夜雨はどこかな?まだ自分の部屋の中に閉じこもっているのかい?」
マジルさんはさっきと同じように2階を見上げる。
お兄ちゃんの部屋を見ている。
私は思いっきり息を吸いこむ。
「おい、何をしようとしている?」
そして、ありったけの力を込めて思いっきり大きな悲鳴を上げた。
「な、お前!なんのつもりだ!」
マジルさんはすぐに私の口を手で塞ぎ、私の悲鳴を無理やり押さえつけた。
くそ、手に噛み付いてやろうか?
「暴れるな。僕は君の敵じゃない」
「うー、うー!!」
どうしよう?お兄ちゃん、私、どうすればいいの?