空木夜雨 12 | amesekaiのブログ

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「なんであんたがあたしの名前知ってんだよ?照子から聞いたのか?」

さわらは俺のすぐ目の前までやってくると、その場にしゃがみこんで俺の顔を覗き込む。

「うーん、やっぱりへっぽこだな」

「な、なにがだよ」

「何がってあんたのことだよ。こんな奴のどこがいいんだろうね。あたしには理解できないよ」

さわらの体からにじみ出る雰囲気は尋常ではなかった。身体中から強烈な暴力の匂いを発している。その顔は恍惚な笑顔に溢れ、その体は常に躍動しているかのように、全身に汗をかいていた。

塔を破壊したのはこいつだ。

直感のようなものだが、間違いない。

こんなこと出来るやつは他にいないだろう。

夢の中であった時よりも異常だ。

本物の赤家さわらは、紛れもない怪物だった。

「どうしたんだい。もしかして、びびって声も出せないのかい?」

「、、俺に何の用だよ」

ふふ、とさわらは笑う。多分、俺の声が震えていたからだろう。

「なに笑ってんだよ」

「別に深い意味はないよ。それよりもあんたさ、もうちょっと大きな声でしゃべってくれないかな?周りがうるさくてさ、そんな声じゃ何も聞こえないよ」

さわらは顔を俺の顔に近づけてきた。

「、、塔を燃やしたのは、お前か?」

「そうだよ」

「どうしてそんなことしたんだよ」

「理由なんてないよ。まあ、あえて考えるなら『邪魔だった』からかな?」

管理者の塔は街の中枢だ。塔が崩れれば、街は壊滅してしまう。たくさんの人が死んでしまうかもしれないんだぞ。

「お前、自分がなにやってんのか分かってんのかよ?」

「なんであたしがあんたに説教させなきゃならないんだよ?あんたさ、自分の立場理解してる?あんまり調子こいてるとさ、あんたここで死ぬことになるよ」

さわらの声には本気の殺意がこもっていた。

それもとびっきり強烈なやつ。

そのおかげで俺は初めて、殺意というものを直に感じ取ることができた。

俺は照子と10年間、夢の中で一緒に暮らしてきた。だんだん大きくなっていく照子の存在に怯えたことも、恐怖したこともある。でも、照子は俺に殺意を向けたことは一度もなかった。

当たり前だ。照子は俺を救おうとしてくれていたんだから。

死の恐怖は知っていた。でも、人の殺意が実際にどういうものかを俺は知らなかった。

それを初めて感じることができた。

そしてこいつは、その殺意を照子に向けようとしているのだ。

「照子は、どうした?」

「あん?」

そしてさわらの胸ぐらを掴むと、さわらの耳元で大声で叫んだ。

「照子はどうしたって聞いてんだよ!!」

さわらは俺の額に自分の額をくっつけて、激しいメンチを切ってくる。

「知らねえよ!あたしが聞きたいくらいだよ!!」

「なら、どけよ。俺はお前に付き合ってる暇なんてないんだよ」

さわらは顔を遠ざけると、改めて俺の顔をまじまじと見つめる。

「あんた本当に状況が理解できてないみたいだね」

言い終わるのと同時に、さわらの拳が俺の顔面を打ち抜いた。

一瞬、何がなんだか、分からなくなった。

大量の鼻血が地面に溢れ、強烈な痛みが遅れて俺の全身を襲った。声を上げることすら出来なかった。