空木美雨 8 | amesekaiのブログ

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「お、見えてきたよ美雨。あそこがデートの目的地、美雨に見せたかった場所だよ」

「うそ、、。すごい」

そこは緑色の世界だった。灰色しかないはずの街の中に突如として現れた緑色。空を塗りつぶしている青色と混ざり合って、なんかとても神秘的な光景に見える。

「びっくりしたでしょ。ここに初めて来る奴はみんなびっくりするんだよ」

そりゃびっくりするだろう。知識としては知っていたけど自然の緑色ってこんなに綺麗なんだ。人工で作られた緑色は見たことあるけど、本物を見てしまうとあれが偽物なんだってことがよく分かった。

『本物』と『偽物』

こんなにも違うものなんだ。

「これはね、希の願った風景なんだよ。希は緑を街の中に求めたんだ。まだ完璧じゃないんけどさ」

「これで完璧じゃないの?」

「もちろん。希は街を全て緑色で覆うつもりらしいからね」

緑色の中を進んでいくと、小さな小屋が建っていた。街の中とは違う優しい色をした建物。おそらく手作りなんだろう。どこか不格好で、それでいてとてもあったかい印象を受ける建物だった。

「ようこそ美雨。ここが私たちの家、『真夜中の不可思議亭』だよ」

小屋の横には大きな木が一本立っている。そこにブランコだろうか?手作りの木で作られたブランコが枝に紐でくくりつけられていた。

「これ、木で出来てるんだよね?」

「うん、私たちで一から全部作ったんだよ。苦労したけどすごく楽しかった」

私もやってみたい。素直にそう思った。倫瑠が羨ましい。何て素敵な経験なんだろう。

「これも希さんがやりたいっていいだしたの?」

「まあ大体全部希のわがままだよ。私たち真夜中は希のわがままを形にすることが主な目的だからね」

「わがままを形にする」

「ようは遊びってこと。希は遊びの天才だからね、一緒にいてすっごく楽しいんだ」

希さんの話をするときの倫瑠はとても楽しそうだった。まるで自分の自慢をするかのように希さんのことを誇らしげに話している。

倫瑠から聞いた希さんの話。

雨森希、16歳。女性。彼女は生まれた時からずっと天才だった。多分これからもずっと天才のままなのだろう。これだけでもすごいのだが、彼女の凄さはそれだけにとどまらない。

ランクSを最初の試験で獲得して以来常に成績はトップ。管理者からの評価も高く、本人の生み出した新技術のようなものもたくさんあるらしい。この緑色の大地を見るだけでも彼女の才能の片鱗を垣間見ることは可能だ。

気取ったところもなく、子供がそのまま大きくなったような性格。無邪気でわがままで自由奔放。やりたいことはなんでもやる。夢中になると周りが見えなくなる。疲れて作業中に寝てしまうこともあるし、そもそもどんな環境でも眠れる。私生活は壊滅的。運動神経抜群。行動派。いつも笑顔。

太陽のような女性。

同じランクSでもお兄ちゃんとは大違いだ。天才ってみんな個性的なんだな。

「美雨なにしてんの?ほら、あがって、あがって。今なにか飲み物でもだすからさ」

「あ、うん。おじゃまします」

木のいい香りがする。ちゃんと生きているんだ、この家。街と違って建物が死んでいない。この場所だけが命の輝きを放っている。ちゃんと生きている。

「その辺適当に座って。どうせ誰もいないし、帰ってもこないからさ」

そりゃ試験中だもんね。

倫瑠の家。二人っきり。初めてのデート、、。

うーん。ちょっとどうなんだろう。軽い女だと思われているかもしれない。でも倫瑠も倫瑠だ。駅で偶然出会った女性をいきなり自分の家に招待するだろうか?いや、普通はしない。

「いまさらなんだけどさ倫瑠」

「なに、トイレ?」

「違うよ。お友達のこと」

「ああ、別に大丈夫だよ。みんな気まぐれなんだ」

「気まぐれ?」

「束縛しないってこと。やりたようにやる。生きたいように生きるっていいよね」

それが真夜中ってことなのかな?簡単に言ってるけど実際にそう生きることは難しい。倫瑠もそうだけど真夜中のメンバーってきっとみんな才能があるんだ。

自由に生きる才能がある。自由に生きるのにも才能がいる。だから惹かれるんだ。だからこうして集まっている。

天才の側に、自然と引き寄せられてしまうんだ。