ヒメアノ~ル | 記憶のための映画メモ

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こんにちは!
大好きな映画も数日で忘れてしまう我が記憶力。
ユルユルの脳味噌に喝を入れるための映画ブログです。


ヒメアノ~ル


2016年/日本/99分
監督:吉田恵輔
出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、駒木根隆介、山田真歩、大竹まこと、他
おすすめ度(5点中) → 4.3


――― あらすじ ―――――――

ビル清掃会社でパートタイマーとして働くお人好しの青年・岡田は、夢も希望もない退屈で孤独な毎日を送っていた。ある日、職場の風変わりな先輩・安藤にキューピット役を頼まれ、彼が思いを寄せるユカが働くカフェに向かう。するとそこで高校時代の同級生・森田正一と出会う。かつて酷いイジメに遭っていた森田だったが、すっかり別人の雰囲気になっていた。そんな中ユカから、森田が店に現われるようになってから、彼女の周りで妙な出来事が起こるようになったと聞かされる岡田だったが…。(allcinemaより)


――― 感想 ―――――――

心が痛い…。抉られる…。観終わってからも引きずっています。


ビル清掃会社で働く岡田は、夢とか希望がない生活を送っていた。そんな彼はある日、職場の先輩である安藤に恋のキューピット役を頼まれることに。



▲岡田(右)は、安藤にキューピット役を頼まれる。


2人は安藤が恋をしている女性・ユカが働くカフェに行くのだが、岡田はそこで高校の同級生である森田と出会うのだった。


岡田は安藤のためにユカと接触するのだが(本当は後をつけていただけなのに、バレてしまったのです)、彼女は森田にストーキングされているという嫌な事実を告げてくる。


事の真相を確かめようと、岡田は森田と会って話をするも、そんな事実はないと言われる。

(が、この時の会話の微妙にかみ合わない感じ、不穏な雰囲気は素晴らしい)


そんなこんなで、安藤のキューピット役をやったり、森田ストーキング問題を調査するうち、何とユカは岡田に一目ぼれしていると告白してくるのだった。


戸惑いながらも、結局、安藤に内緒でユカと付き合うことにする岡田。

意外と男性経験豊富なユカにショックを受けつつも、岡田は幸せの絶頂に入っていくのでした…。



▲付き合うことになった2人。



▲すぐにベッドインも済ませてしまうというね。ユカちゃんはちょっと軽めなのです。


が!この一連のシークエンスを眺めている者が。

森田ですよ。森田。


▲森田がこのラブコメ前半を見ていたという、超嫌なつながりから入るタイトルシーンが最高でした。


って感じの導入です。導入っていってもこれだけで半分ぐらいまで来ていますからね。

前半と後半では、まったく違うノリの映画になっています。

後半は森田が人をたくさん殺す恐ろしい展開になります。


森田は実は高校のころにすげー酷いイジメにあっていたらしく。最初の被害者になるのは彼の高校の同級生である和草という人物とその婚約者。


和草は森田に金をゆすられているんですね。

というのも、森田と和草は高校のころに一緒にイジメられていたんです。しかしある日、森田がいじめっ子を捕まえて、殺してしまうんです。和草はその殺しにちょっと加担してしまっていたんですよ。

この殺人以来、森田はおかしくなっていたのだと和草は婚約者に語るのですね。


和草と婚約者は、「森田を殺してしまおう!」と意気投合するものの、肝心の現場で婚約者が足を引っ張り、2人は返り討ちにあってしまうのです。ちなみにこの返り討ち殺人シーンは、岡田&ユカがエッチをしているシーンと交互に描写されるすごく嫌な演出がされています。なかでもバットで体を殴打されている和草の婚約者はズボンからダラダラと失禁している様が見てとれるんですけど、そのころユカちゃんは別の意味で股間を濡らしているんですよね。あぁ~この演出はすごく好きだなって思いました(問題発言とも受け取らかねない、けど好きなんだもん)。で、二人は撲殺されたのち、森田が住んでいたアパートごと焼かれてしまいます。


この行動から、森田は後先考えずに行動する人物であることが分かります。すげー怖いです。


切ないシーンがありまして。森田はパチンコで勝つんですけど、そのあとカツアゲにあってしまうんですね。このとき、イジメっこ然とした輩に敵わないのが救いがなくて、、、森田は殺人鬼だけど同情してしまいました。で、カツアゲ野郎は男2人組なんですけど。こーいうクソ野郎はなぜ単独じゃないのか。森田が高校時代にあっていたイジメも、主犯格はいるもののグループで行っているわけで、本当に群れて悪いことするのがムカつきます。


話は戻して、森田はその後も殺人を続けます。

駅でたまたま目があっただけの女性の家に押し入り、ごうかんしようとするも生理中だと分かると、次のシーンでは殺人があったのだろう的なマンションにブルーシートがかけられている映像が入ったり、ある金持ちの家にお邪魔しておそらく奥さんをごうかんして殺した後にカレーを食べながら、主人が帰ってきたらその主人も包丁で刺しまくって殺し、そのあと庭に埋めたり。で、聞き込みに来た警察も殺して銃を奪った森田が、ユカちゃんの隣人をうっちゃったり、岡田の会社の先輩である安藤をうっちゃったり、、、。マジで止まらない。


そして、やっぱり標的は岡田なわけですよ。実はここで明かされる岡田の秘話。実は岡田は森田と高校のころ初めて仲良くなった友達だったのです。でも、森田が虐められてから距離をとって、あげく不登校になった森田を学校に呼び寄せる役までやっていたという懺悔が。あぁ、とっても痛い。だって岡田は森田をカフェで見たときに、たいして面識がないと安藤に言っていたのに。


という岡田の過去がわかったのち、クライマックスですよ。森田は岡田の家に来て、ユカちゃんを強姦しようとするも、かけつけた岡田と争って二人とも窓から転落→駆けつけた警察に距離をとりながら森田は岡田を人質に車で逃走→散歩中の犬をよけて激突→森田は記憶がよみがえり「あぁ岡田くん、ゲーム返さなきゃ。お母さん麦茶ふたつ!」というような在りし日の会話を再現(泣)。かけつけた警官が森田を確保すると、彼は片足を事故で潰していました。おそらくもう二度と犯罪を犯すこともないんだろうなという雰囲気も匂わせつつ、過去の映像(森田と岡田が田舎の家でゲームをして遊んでいる。あぁ二人は一瞬だけど親友だったのかもしれない。その庭には犬がいて…)が流れます。森田が犬をよけた時点で、彼が犬に対して何か思い出があるのは予感していたんですが、そうですか、、、昔飼っていたんですか。


激しいイジメで人格が崩壊してしまう前の森田は純朴だったのになぁ。なんか本当に辛い映画でした。


僕はイジメとは無縁の学生生活をおくっていました。イジメのない学校だった気がするんです。これってけっこう珍しいことらしいですね。もしかしたら、気づいていないだけでイジメはあったのかもしれないですが、、、。


この映画を観ながら、仲良かったのに離れてしまった人たちのことを思い出して、ものすごく切なくなりました。少なくとも一瞬でもあんなに分かりあえる瞬間があったのに、なんで今は近くにいないんだろう。何を思って連絡先を消去したのだろうか。友達をやり直したい人が僕には少しばかりいます。この映画のせいでそんな気持ちが再燃してきました。


あと自分が気づいていないだけで、誰かを無自覚に残酷に遠ざけていたことがあるのかもしれない可能性を考えて悩んでしまいました。


僕はアメブロで「もんそん」と名乗っていますが、なんだかこういうペンネーム的なものを鎧に好きなことを垂れ流している行為もなんだかなぁという気が一瞬してしまいました。

こんな僕ですが、学生時代は「まえそん」というあだ名がありました。富山生まれのまえそんです。

かつての友達よ。まえそんはここに元気におりますぞ。


。。。


なぜかそんなことまで喋ってしまう映画でした。素晴らしい作品です。