ぼくを探しに | 記憶のための映画メモ

記憶のための映画メモ

こんにちは!
大好きな映画も数日で忘れてしまう我が記憶力。
ユルユルの脳味噌に喝を入れるための映画ブログです。


ぼくを探しに


2013年/フランス/106分
監督:シルヴァン・ショメ
出演:ギョーム・グイ、アンヌ・ル・ニ、ベルナデット・ラフォン、エレーヌ・ヴァンサン、ルイス・レゴ、ファニー・トゥーロン、他
おすすめ度(5点中) → 4.2


――― あらすじ ―――――――
幼い頃に両親を亡くし、その時のショックから言葉を話せないまま大人になったポール。彼はダンス教室を営む風変わりな伯母姉妹アニー&アンナに育てられた。姉妹はポールを世界一のピアニストにしようと必死で、ポールはそんな姉妹のもとでダンス教室を手伝い、ピアノの練習に明け暮れる静かな日々を送っていた。そんなある日、彼は同じアパルトマンに住む謎めいた女性マダム・プルーストと出会う。彼女が勧める不思議なハーブティーを飲んだポールは、赤ん坊の頃の幸せな記憶を呼び覚ます。以来、マダム・プルーストのハーブティーを飲んでは、封印されていた過去の記憶を取り戻すことに夢中になっていくポールだったが…。(allcinemaより)


―――  感想  ―――――――

よぅ分からんけど、とても心揺さぶられました。


幼い頃に両親をなくしたポールは、そのショックから言葉を失い大人になった。彼は伯母姉妹に引き取られ生活をともにしており、さらに姉妹の経営するダンス教室でピアノの伴奏をしていた。姉妹はポールをピアニストとして育て上げようと必死になっていた。


▲ポールと伯母姉妹。


この伯母姉妹、いわゆる上流階級出身なんだけど差別思想が強くて。ポールの母が父と結婚する際にも、「結婚相手として相応しくない」みたいなことを言ってて、物語中盤でも中国人の養子をとった知人を小馬鹿にする様が描かれる。それでも完全に憎たらしい存在にしないバランスは見事だなー。


ポールはある日、同じアパートに住むマダム・プリーストと知り合う。マダムはハーブティー療法をやっており、ポールは彼女から施術を受けることになる。


▲マダム・プリースト(左)の家で、ハーブティーを飲むポール。


このハーブティー療法なんだけど、飲むと気を失い、自分の記憶の奥底へと旅に出ることができる。いつの間にか書き換えられたものや、奥の奥にしまっておいたもの。そういう記憶を“釣り上げる”のが狙い。


▲こーしてポールは幼いころの記憶を徐々に取り戻していきます。

美しい母アニタ、ちょっと乱暴に見える父マルセル、若き日の伯母姉妹、マルセルの兄弟など。やがて物語が進むとともに、隠されていた両親の死因についても明らかになる。


僕は、マダム・プリーストって人物は完全にメンターな存在かと思っていたんですが、話が進むにつれてマダムにまつわる話運びが非常にビターなものであることにかなり魅せられました。


んで、記憶を回復していくとともに、自閉気味だったポールが徐々に行動的になっていく様はとても良い。特に、終盤のハイライトでもある“演奏会”のシーンはポールが完全に吹っ切れる瞬間=ピアニストとして覚醒する瞬間でもあり、ちょっとファンタスティックな映像と相まって、僕は号泣モードでした。


しかし、この映画はそこから記憶を回復したポールが“痛み”を経て、第二の人生を歩んでいく姿までさらに描いていきます。ポールが最後に発する言葉もオープニングの映像との対比になっていて、非常に好感が持てました。


全編通してあらゆる小技が伏線として回収されていく様にも唸りました。

観た人にしか分かりませんが、大木から落ちる水滴がウクレレを奏でるシーンも素晴らしかったです。


個人的にはかなり好きな作品となりました。

同じ監督作で未見の「イリュージョニスト」がやたら気になってきました♪