ヴィデオドローム | 記憶のための映画メモ

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こんにちは!
大好きな映画も数日で忘れてしまう我が記憶力。
ユルユルの脳味噌に喝を入れるための映画ブログです。

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ヴィデオドローム


1982年/カナダ/87分
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジェームズ・ウッズ、デボラ・ハリー、ソーニャ・スミッツ、ジャック・クレリー、レイ・カールソン、ピーター・ドゥヴォルスキー、他
おすすめ度(5点中) → 4.1


――― あらすじ ―――――――
カナダのトロント。地方テレビ局の社長マックスは奇妙なビデオテープを発見する。一般の放送では考えられないようなハードな映像に、彼は次第に虜となっていくのだが……。


―――  感想  ―――――――

気持ち悪いの~。でも好きだぞ~。

クローネンバーグの変態描写は時に無邪気すぎて怖いっすね。


地方テレビ局の社長マックス。彼の局ではポルノと暴力を売り物にした番組を放送していた。


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▲常に刺激的な番組を探しているマックス。

冒頭で、シャツ姿&時計をしながら寝ているところから、かなりのワーカホリックぶりがうかがえる。


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▲ある時、マックスの会社の技師であるハーランが、怪しげな放送をキャッチする。


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▲そこには、激しい暴力があった!


その映像=ヴィデオドロームに魅せられたマックスは次第にその世界に侵されていくようになる。


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▲そんなマックスは、ある番組で対談したパーソナリティのニッキーと仲良くなるようになる。


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▲クローネンバーグの映像は肉体が気持ち悪い。ただの性交シーンのはずなのに、このクネクネ感が生々しい!性交シーンというのは、どちらかというと自分視点で考えがちなので、この客観的な視線がすごく新鮮ですね。あっ僕らって気持ち悪いんだ(`∀´)っていう。。。


マックスの相手のニッキーって女は被虐嗜好があり、体にナイフの切り傷があるうえに、マックスに針で自分を刺させたりとかなりのキワモノ。「なんか刺激はないかな~」って日々くすぶっているマックスを解放するにはうってつけのキャラクターなんですね~。


そして、ヴィデオドロームのカギを握るのが、メディアの教祖と言われるオブリビアンと知ったマックスは彼のもとを訪ねるのだが……。


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▲オブリビアン。彼はテレビの中にしか存在しない。

“テレビは心の網膜である”と語る彼は、「見る」という行為を「肉体に影響のある体験」と考えている。


そんなオブリビアンから、ヴィデオドロームを受け取ったマックス。

その映像を見ているうちに彼の現実は崩壊し始める。


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▲彼の腹には女陰に似た裂け目ができる!そして、そこに銃を突っ込むマックス。

あーこれはアダルトビデオじゃないか!しかもその銃はそのまま腹にのまれて一旦なくなってしまう。

ちなみにそれまでのマックスは、お腹のあたりを手でかいてたりするんだけど、

その下ごしらえ演出にウットリしますな。


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▲テレビ自体も脈打つようにグニャグニャと。そんなテレビを優しく触るマックス。

最終的には、マックス自体が男根になったかのように、ブラウン管に顔を突っ込みます!
このへんの描き方がね、クローネンバーグって無邪気だな~って思うんですよね。


今作では、ヴィデオドロームを見た人間には腫瘍ができてしまい、それが脳に影響を及ぼして幻覚を見せるってことになっていますが、つまりは「見る」という行為の延長線の一端を描いているってことですよね。

ってことはですよ、今作「ヴィデオドローム」という映画自体がヴィデオドロームじゃないか!ってことにもなり、アワワワ、現実の僕にも腫瘍ができてしまうんじゃないか∑(゚Д゚)って、このメタ構造を楽しんでしまえるんですよね~。そういう無謀な作風も好きなんです(笑)。


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▲そして、現実と幻覚の境目が分からなくなったマックスに、バリーという男が現れる。

彼はヴィデオドロームを研究しているというのだ。そしてマックスのことを救えるとも。


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▲その研究のために実験を行うマックス。これは幻覚を録画する機械。見た目が好きなので貼ってみました。


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▲やがて、自分が見たヴィデオドロームの舞台に、自ら立つことになるマックス。

最初は躊躇しながら鞭を振り下ろす彼が、次第に楽しくてタマラナイって表情になっていく様が素敵。

っていうか、ジェームズ・ウッズ最高だっ!!


しかし、そんなバリーは、マックスのテレビ局を自分のものにしようと企んでいた。

そして奪い取ったその局でヴィデオドロームを流し、アメリカ国民の洗脳を画策していたのだ。


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▲ヴィデオドロームにすっかり囚われてしまったマックス。

彼の右手には以前自分の腹に飲み込まれた銃がセットされる。


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▲バリーの飼い犬になんかなるもんかっ。マックスの怒りの銃口がバリーをやっつける!

いや~凄まじい描写だ。


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▲「永遠なれ」の台詞のもとに自分の人生を閉じるマックス。

現実での命を絶ったものの、彼はヴィデオドロームの世界に引っ越ししただけなんですね。


余談ですが、昔、シュールレアリズムに興味を持ったことがありまして、

シュールレアリズムとは?みたいな本を読んだことがあるんですね。

そこにはこのように書かれていました(古い記憶なんで曖昧ですが)。


 シュールレアリズムとは、絵画や文学などを手段として

 シュールな世界を現実のものとする試みのことである。


僕らが楽しんでいる作品は手段でしかないのか!と読んだときは衝撃を受けましたよ。


今作のヴィデオドロームの世界も、まさしくそんな内容でしたね。興味深いな~。