三月の海の草原は、まだ冬のいろでした。
そこはいちめん、黄味がかった茶いろに満ちていました。
でも、ひかりは変わったのです。
熱を持たず、強いあかるさだけのひかりが、五つの四角い草原を白いほどに照らしていました。
そして、これら五つの草原では、そこに住まう無言の住人たちが、それぞれのやり方で、他とはお互いに違う豪華な領土をつくりあげていたのです。
ではまず、北西のちいさな草原をご紹介いたしましょう。
だってここは、ちいさなピピがわたしのいぬになって、その初めての日に歩いた場所ですからね。
この草原を囲むフェンスは、とても高く、そして水いろに塗ってあります。
フェンスにはつる植物が這いのぼり、そのつるの先っぽを、ぴゅいぴゅいと風にそよがせています。
フェンスがとぎれている入り口を入ったら、すぐに硬くまっすぐな草が伸びて、まるで玄関の板の間にあるようなついたてをつくっています。
そのついたてから、さらに中へ入りますよ。
すると突然フェンス沿いに、おおきなおおきなツツジの株が四つ、皆なぜか傾いて、でもどっかりと、真ん丸なからだで座っています。
その四ツツジの前を通り、奥へ進むと、そこは静かな、しずかな草地です。
もうすこし春が進めば、ここに、妖精の国ができあがります。
いちめんに生えた草は、ほそく、やわらかい、ながい針のよう。
その針のひとつひとつのてっぺんに、そよそよと紫いろのちいさな花が立ちあがります。
いちめんのあかるい紫と、薄緑いろ。
その草のみずうみを、わたしとピピはそうっと、ボートをすべらせるように進んでいったのです。
