ある、静かな夜のことです。
わたしとピピは、この新しい台地の坂道を、もうすぐ上がりきる場所にいました。
足元のアスファルト道路は、敷かれたばかりで汚れがなく、ふかく、くろい色に澄んでいます。
わたしは、吸いこまれるようにその道の真ん中に、あおむけに寝ころびました。
冬の夜空が、目の前にどっと広がります。
その夜空いろの世界の角では、桜の木の鋭い枝先と、竹林のりんかくが、真っ黒にぎざぎざと揺れています。
そらには、風がいっぱいに満ちています。
おおきな、おおきな冬の夜。
その時、わたしは、ふと思ったのです。
(また来年の冬も、わたしはこうして、ここでピピと歩いているのだろうか)
(その次の年も、その次も。これから、何年も?)
それは、しあわせなことでした。
ピピと、うつくしい冬の夜。
これから、何年も。
・・でも・・・・
それが、いつまでも自分自身で立てず、ここにいる「しかない」のだとしたら?
そう思うと、わたしはどうしようもなく悲しかったのです。