何はともあれ、冬の夜。
父と母が出かけた後、わたしとピピは、ストーブが燃えるあたたかい居間で楽しく遊びました。
まずわたしが、床にあぐらをかいて座ります。
するとピピが、わたしの前に、背中を向けて座ります。
「こぷちゃん、かたがこらない?」
わたしはそう言って、ピピのちいさな肩をつまみます。
犬は、とても撫で肩です。
撫で肩というのは、肩の先がふつうより下がっている肩のことです。
わたしは、よく思うのです。
犬は、とても、とても撫で肩だと。
こんなにひどい撫で肩で、そして、いつも人間を見あげていて、犬はとても肩がこることでしょう。
というわけで、わたしはピピのちいさな肩を、指先でちびちびともみはじめます。
ピピは頭を垂れ、じっとしています。
この肩もみが終わると、わたしは両手をピピの前にまわし、腕をとって、そうっと持ち上げます。
それで、ピピは座ったまま「おちんちん」みたいなかっこうになります。
今、ピピのうしろ頭は、わたしの顔の前にあります。
やわらかい、みじかい毛のあたたかさが、わたしの鼻さきに伝わってきます。
そこで、わたしは静かにつぶやくのです・・
「ふー・・」
そしてとつぜん大きく
「いっちゅぴー!!!!」
のかけ声と同時に、わたしはピピもろとも、仰向けにひっくりかえりました!!
船のようになったわたしのお腹の上で、ピピは口を開け、じたばた暴れます。
おおきなくろい目が、わたしの顔の間近で、キラキラひかります。