ピピは、そのいちじくのお尻を
「ふりふりふりふり」
と、揺らして歩きました。
それはまるで、フリルがたくさんついた下着みたいです。
フリルパンツのピピとわたしは、やっぱり毎日散歩に出かけました。
雲のない天空。
端から端まで、ずうっと青いいろが、わたしたちの上にひろがっています。
それでも、台風が近づくのでしょうか、海の草原の防波堤では、風が
「びゅーびゅーびゅー、びゅーびゅーびゅー」
と吹きとびました。
その風の中で、ピピは
「ぴゅいっ」
と、防波堤にとびのりました。
防波堤には、茅(かや)の長い茎がおおいかぶさるように茂っています。
ピピはその茅の下、防波堤の上の狭いすきまを
「するする」
と抜け、わたしが行けないどんどん先の、先のほうまで歩いていくのでした。
こんな、ピピとの夏の散歩は、ほとんど日が落ち、地面の熱がさめる時をえらびました。
その時間、草原は長く伸びた草の影でいっぱいです。
草は高く、たかく、ぎっしりと育ち、あちこちになぜか円を描き、その円の中を埋めて集まっていました。
まるで、巨人たちが今夜の大宴会のために、いくつもの丸テーブルを並べているみたいです。
少し離れた場所では、おおきな鷺(さぎ)の子が、逆光の中ですっくりと頭をもたげて厳かに、それでもとても謙虚な様子で、静かに立っていました。
その姿は、ちょっと首長恐竜みたいです。
この夏の草原では、わたしたちはとても、とてもちいさく見えるのでした。